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SBT×CDP Aリストが示す“脱炭素を競争力にする方法” ――「脱炭素×事業成長」インフロニアHDに学ぶ実装プロセス

SBT×CDP Aリストが示す“脱炭素を競争力にする方法” ――「脱炭素×事業成長」インフロニアHDに学ぶ実装プロセス

インフロニア・ホールディングス(以下、インフロニアHD)は、気候変動対策を経営戦略の中核に据え、SBT(Science Based Targets)認定の取得やCDP「気候変動」分野でのAリスト選定を通じて、脱炭素の取り組みを外部評価につなげてきた。2024年12月にはSBT認定を取得し、CDPでもAリストに2年連続で選定されています。

建設業界では、調達・施工を含むサプライチェーン全体(Scope3)の排出量把握が難しく、特に材工一式発注の比率が高い場合、データの集計範囲(バウンダリー)や原単位の揃え方がボトルネックになりやすい。本稿では、インフロニアHDが掲げる中期ビジョン「INFRONEER Medium-term Vision 2027」を手がかりに、評価獲得を目的化せず“実装”として脱炭素を進めるための考え方と、建設企業が参照できるポイントを伺います。

SBT認定は何に効いたか:脱炭素を“事業競争力の中核”に据える理由

インフロニアHDは、従前から再エネ活用や低炭素製品・技術開発に取り組んでおり、同社が掲げる「総合インフラサービス企業」の推進において、脱炭素を事業競争力の中核と捉え、経営戦略に組み込みました。林氏は、こうした背景のもと「気候変動対策への対応を深化させるためにも、グループ全体として統一された目標を社内外に示す必要がありました。さらに、社会的認知度の高い手法で、当社のサステナビリティの取り組みを発信することが、企業価値向上に貢献すると考えました」と、SBT認定取得を目指したきっかけを説明します。

出典:脱炭素経営を実現する国際認定イニシアチブSBT(Science Based Targets)」

建設業の壁:Scope 3と材工一式発注で、どうデータを揃えたか

SBT取得までのプロセスで、特に苦労したのは、事業会社ごとのデータ収集だったといいます。林氏は「子会社を含むフォーマット統一、バウンダリー整合、過去データ収集に大きな労力がかかりました」と振り返ります。

背景には、建設業界特有のサプライチェーンの複雑さもありました。「例えば製造業の方から見ると、建設業はサプライチェーンがこんなに複雑なのかと驚かれるようです。具体的に言うと、Scope3のカテゴリー1やカテゴリー11のデータ集計、CO2削減策を含めて苦労しました。特に建設業では材工一式発注という発注を行う場合もあり、その場合材料のデータ取得(数量他)が難しいという点があります」(林氏)

インフロニアHD(前田建設工業)では、材料メーカーに直接働きかけることで、材工一式発注に伴うデータ取得の困難さに取り組んでいるといいます。「材工一式発注の場合、メーカーと直接お取り引きがあるわけではないので、どこまでお願いできるかが難しいところではあったのですが、直接メーカーとお話しさせていただいて、データを出してくださいというお願いをしました。そこは工夫の余地というか、直接お話をするというのが重要だったと思います」(林氏)

グループ社内に対しても、サステナビリティ推進室が中心となり、丁寧なコミュニケーションで協力を求めました。「机上の計画で終わらせないためにも、事業・現場・管理で、代替材採用の評価やデータ入力負荷の低減、検証可能性の確保など、目標と実務を整合させることを優先し、グループ各社とは一緒に考え相談するという態勢で進めました」(林氏)

経営戦略部 サステナビリティ推進室 林 氏

評価が変える社内実装:CDP AリストがKPI設計を動かす

SBT取得やCDP「Aリスト入り」にはどのようなインパクトがあったのでしょうか。林氏は「低炭素製品や再生エネルギーの導入など、具体的な施策の推進力が向上しましたし、CO2排出量削減目標に対して全社的に意識を再共有するきっかけにもなったと思います」と話します。また、基準年と達成年に対する削減率が明確になったことで、具体的な削減施策の検討や対応の優先付けへとつながったことも大きな収穫となりました。

岡田氏は「相対的に自分たちの取り組みの立ち位置を把握することができるため、社内のモチベーション向上に繋がっています。自社を相対的に見るための指標、物差しというのは、自社の事業活動の中ではなかなか得られる情報ではないので、社内だけでなく、社外に対しても、当社グループの価値を示していく上で有効だと思います」と述べました。

CDP Aリスト選定を契機に、インフロニアグループでは、GHG排出量集計システムの導入を開始し、排出量の可視化をスタート。四半期等でのKPIモニタリング、財務・非財務の統合レビューに向けて取り組みを加速させています。炭素原単位やLCA視点が調達・運営判断の標準項目になりつつあるなか、2024年にはインターナルカーボンプライシング制度も導入しました。

「次はAリストの維持が当部門のKPIになってきます。Aリスト入りのために何が必要かは、リスト入りしてみないと正直わからなかった部分もあるので、必要なデータの標準化という点にもこれから取り組んでいく予定です」(林氏)

出典:2年連続でCDP「Aリスト」入り

次の勝ち筋:『Vision 2027』とHD体制で、競争戦略と両立する

インフロニアHDは『INFRONEER Medium-term Vision 2027』(2025年3月開示、11月に改訂版)において、目指すべき姿として「総合インフラサービス企業の実現」を掲げ、実現するための3本柱として「インフロニアのビジネスモデルに基づく収益基盤の確立」「付加価値の最大化」「体質強化・改善」を示しています。

『Vision 2027』において、サステナビリティ戦略はどのように位置付けられ、どのような貢献をしていくのでしょうか。

サステナビリティ部門の活動は事業収益に直接結びつくことが少ないため、経営戦略に基づいた事業活動とは切り離されたテーマとして扱われる傾向があります。ともすれば、数値を集計したり対外的に発信をすることが目的化してしまいがちですが、総合インフラサービス事業を展開する中で、事業戦略にサステナビリティの考えを織り込み、競争力を生み出す武器にしていくことが、当部門にとって次のミッションになると思います。インフロニアグループがインフラ運営を行うことで、持続的な社会をつくっていく。まさにサステナビリティというキーワードの先にある未来について、メンバーでアイデア出しをしながら構想を練っています」(岡田氏)

経営戦略部長 兼 サステナビリティ推進室長 岡田 氏

出典:インフロニアグループが目指すビジネスモデル

https://www.infroneer.com/pdf/ir/INFRONEERMediumtermVision_2027.pdf

ホールディングス体制を取り、多くの事業会社と連携できる点もインフロニアHDの強みのひとつだ。岡田氏は「ホールディングス体制の中の事業会社は、グループの子会社というよりも、横並びの兄弟のような関係です。ホールディングスが立てた戦略の下、各社が協働していくという思想をサステナビリティに関しても生かしていきたいと思います」と強調する。

林氏も「総合インフラサービスを提供していくという意味では、地元企業はパートナー的存在です。共にインフラサービスを提供していく仲間という視点で、脱炭素に関してリソース不足という課題があるのであれば、我々として負荷低減策の提案など実質的なサポートを提供していきたいですし、必要であれば教育や伴走、支援等も検討・推進していきたいと思います。インフラサービスはバリューチェーンが幅広く、ステークホルダーも多種多様。前例のない取り組みを実践していく中でルールが伴っていないものも多いため、社会課題解決に必要なものはルールチェンジも含め検討していく必要があります。グループにとどまらず、協力会社も含めて、いろいろなパートナーと共に一緒に広めていければいいと考えています」と話していました。

(了)

インフロニア・ホールディングス 株式会社

経営戦略部長 兼 サステナビリティ推進室長 岡田 直仁 氏
経営戦略部 サステナビリティ推進室 林 昌明 氏
経営戦略部 サステナビリティ推進室 加藤 慈子 氏

 

※組織名・役職などの情報は取材当時(2026年2月)のものです。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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