バイオディーゼル燃料(以下、BDF)を“現場で使える品質”で回すには、製造プロセスと品質管理、そして機器側の実証が鍵となります。
1935年創業の千田清掃(千田環境HD)は、宮城県大崎市に本社を置き、地元密着の環境事業会社として、原料回収→前処理→製造→分析→自社機材での運用検証までを自社内で完結。自治体・ゼネコン案件での運用実績を重ね、東北エリアでのB100、B50、B5供給を展開しています。
本稿では、代表取締役の千田信良氏に、同社BDF事業の品質担保の実務や地域循環のプロセス、今後の展望などについてお話を伺いました。
BDF参入の背景と地域循環モデル
千田清掃がBDF事業に参入したのは2005年。きっかけは社員からの一言でした。
千田氏は「若手の社員から『社長、環境にやさしい燃料があることをご存知ですか』という問いかけがありました。それをきっかけに、バキュームカーで一般家庭を訪問し作業を行うなかで、住民が洗濯物を干したり子供たちが遊んだりする場所で、黒煙を吐きながら作業して良いのだろうかという疑問に至り、県内の同業者が採用しているダイキアクシス社製のBDFプラント(乾式200L/8h)を導入しました」と振り返ります。
2008年には大崎市バイオマスタウン構想と連携。2011年には農林水産省のバイオ燃料(BDF)地域利用モデル実証事業に採択され、現在の製造プラントの骨格が完成しました。2014年には経済産業省のバイオディーゼル燃料流通システム実証事業に採択され、原料の前処理・貯蔵、完成BDFの貯蔵・配送車両の拡充を実施。さらに、2016年にはBDFの高品質化を目的として、ものづくり補助金に採択され、BDF蒸留設備を導入しました。
同社が製造するBDFの主な原料は、飲食店や家庭から排出される使用済み食用油です。特に小規模事業所に焦点を当て、一軒一軒訪問して回収をお願いしてきました。「小さな飲食店でも20リットルのペール缶一つから回収しています。回収の際には5円玉を『ご縁に感謝』の封筒に入れてお客様に渡し、商売繁盛を祈願しています。現在では1,100店舗ほどと長期的な関係を築いています」
回収した油はその都度状態を確認し、良質なものだけを製造ラインに回しています。千田氏は「真っ黒だったり、固まっていたり、目視で悪いと判断されたりしたものは除いています。製造工程も全自動運転ではなく、職員が一つ一つの状態を分析・確認し、真心を込めて丁寧に製造しています」と話します。
▼廃食油回収の際に顧客に渡す5円玉

“高品質”を作る、高純度化と品質管理へのこだわり
同社がBDFを製造する上でこだわっているのが、高純度化と品質管理です。千田氏は「全自動運転の装置を導入しましたが、当初はうまく機能しなかったため、社員が丁寧に一つ一つの工程を確認しながら手作業で製造しています。回収した油は場所によって品質が異なるため、それらを混合して均一化し、遠心分離でゴミを除去するなど、原料の前処理を徹底しています」と説明します。
徹底した品質管理の背景には、製造業者間の競争がありました。「平成17年当時、宮城県内には20数社のBDF製造業者がありましたが、明確なルールがない状態でスタートしました。当初は知識不足から車両トラブルもありましたが、メンテナンスを徹底することで解決しました」と振り返ります。平成23年に農林水産省のBDFモデル事業に採択され、B5燃料の製造および一般販売に取り組むため、石油販売業の許可を取得。分析装置を整備してスタッフが1バッチごとに分析を行うことで品質を確保しています。自社の車両でB100やB5を運用し、知見を深めることで、自信を持って販売できる体制を整えました。
品質分析においては、地方税法上の軽油規格に適合したB50燃料の開発と実証に日本で初めて成功。B30燃料については、資源エネルギー庁の認可を受け、公道を走行するトヨタ、マツダ、いすゞの車両で1年間の走行実証を行いました。
▼徹底した品質管理で高品質なBDFを製造

自社所有の建設機械で品質を実証
製造したBDFの品質をアピールするため、千田清掃は自社で建設機械を所有しています。「建設機械はゼネコン自体ではなく、協力会社やレンタル会社が保有しているため、彼らの理解を得ることが課題でした。そこで自ら建設機械を所有し、実績を示すことで信頼を獲得する戦略をとりました。多くの建設機械メーカーにアプローチしましたが、ほとんど断られる中、キャタピラー社が協力してくれました。また、鹿島建設や西松建設での導入実績により、メーカー立ち会いのもとでBDFの安全性を証明できました。レンタル会社はメーカーの意見を重視するため、自社で実証して安全性を示すことが重要でした」と千田氏は語ります。
千田清掃の建設業界との関係は、2011年に発生した東日本大震災まで遡り、当時はBDF用の地下タンクに10キロリットルを備蓄し自家発電で電力を確保していたとのこと。そこで地元自治体に申し出て、復旧車両や建設機械への給油を行い、その後、災害がれき処理のための大型処理プラントが沿岸部に建設され、宮城県南部の亘理ブロックでは大林組のJVに、気仙沼ブロックでは大成建設に、それぞれBDFを供給してきたという実績があります。特に大成建設とは深い縁ができ、現在も取引が続いているようです。
福島県の除染作業では、東北大学と連携して菜の花による除染プロジェクトを実施。収穫した種から油を絞ってBDFを製造し、清水建設が使用する農機具の燃料として供給しました。
建設業界におけるBDF利用の価値はどこにあるのでしょうか。千田氏は第一として、社員の環境意識の向上を挙げます。「BDFの導入は、入札において国土交通省をはじめとする行政機関や自治体から高く評価されています。また、取引先様にとっても良い営業活動となり、新人採用においても会社のイメージ向上につながります。弊社はもともとバキュームカーの会社でしたが、BDFを導入してから人手不足に悩むことはなくなりました。さらに、ISOの評価ポイントにも認められています」
地元・東北で広がるBDF利用
千田清掃の取り組みは、地元である東北でも評価されています。「エコマーク認定や宮城グリーン製品、みやぎ優れMONOにも選ばれました。その後、出光興産から声をかけていただき、東北地方において出光バイオディーゼル5(B5軽油)として販売を開始いたしました。また、今年から、楽天野球団からご指名をいただき、球場の飲食ブースから排出される使用済み食用油を原料としたB5燃料を用いて、球場の遊具を動かすディーゼル発電機の燃料供給を開始しました。JR東日本の関連企業からも使用済み食用油の回収も行っています」
今後は、大手商社の豊田通商や富士興産、NX商事との連携により、B5軽油の販路拡大を模索しています。さらにBDFで走るディーゼル機関車(陸羽東線)を地元で走らせたいと考え、市役所と連携して提案しています。
千田氏は「20年前は、こんなことをしてどうするのかと言われたこともありましたが、社員一同、自信を持って皆様に提供できるBDFを製造・提供できるまでになりました。できるところから、入りやすいところから、ぜひ千田清掃のバイオディーゼル燃料をご利用ください。今後とも千田清掃は、『世のため・人のため・地球のため』に尽力してまいります」と今後の意気込みを示していました。

株式会社千田環境ホールディングス/有限会社千田清掃
代表取締役 千田 信良(ちだ のぶよし) 氏 (写真中)
専務執行役員 鈴木 昌好(すずき まさよし)氏 (写真左)
執行役員 営業統括本部長 野々村 隆一(ののむら りゅういち)氏 (写真右)
※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年11月)のものです。

この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。








