エネルギー商社として、環境対応型エネルギーのコアビジネス化を経営上の成長戦略の一つとして位置づけている富士興産。環境関連事業の柱のひとつが、バイオディーゼル燃料(以下、BDF)の製造・販売であり、BDF製造を手がける背景、BDF普及に向けた課題、CO2削減に向けた次世代エネルギー事業の展望などについて、次世代エネルギー部長の恩田靖氏と次世代エネルギーグループマネージャーの松下一仁氏にお話をお聞きしました。
環境対応型エネルギー事業を推進
富士興産は『環境のグリーン化対応とエネルギーの供給を通して社会に貢献するエネルギー商社であり続ける』を長期ビジョンに掲げ、燃料油・アスファルト・潤滑油などの石油製品に加え、BDF・再生重油・カーボンオフセット燃料、太陽光発電といった環境対応型エネルギーにも着手し、供給・販売体制の構築を進めています。
「我々はエネルギー専業の商社という立ち位置で、2004年以降、石油製品販売が主業となっていましたが、今後のエネルギーの低炭素化・循環型社会の到来を見据えて、我々が扱う液体燃料で社会に貢献できる形として、現在はメーカーとしてBDF事業に注力しています。2025年10月には、持株会社として富士ユナイトホールディングスが設立され、現業の産業エネルギーを扱うエネルギー事業、次世代のエネルギー・リサイクル領域を扱うグリーン事業と建機リースによるインフラ事業にグループのポートフォリオを再編しています」(恩田氏)

執行役員 販売本部 次世代エネルギー部長 恩田 靖 氏
高性能ブレンダーを自社開発
富士興産では、BDF(バイオディーゼル燃料)主原料を廃食油としたFAME(脂肪酸メチルエステル)を取り扱っており、軽油と混和して供給しております。BDFのメリットについて、恩田氏は「CO2削減効果があり、既存の軽油を使用する設備との互換性がある点が強み。特にB5軽油は品確法上軽油であるため、使用者の取り回しも軽油と同様でよく、機材の保証等も継続できるメリットがあります」と説明します。
同社製造のBDF混和軽油の特長は、その高い品質にあります。品質を支えているのが、独自に開発した濃度可変型高性能ブレンダーと、長年エネルギー商社として培った品質管理のノウハウです。恩田氏は「基本的にはB5軽油は品格法で規格が定められていますが、さらに高濃度のものに関しては規格がないのが現状です。その中でも、建設現場等のオフロードは高濃度なBDFの需要もあり、そこに対応するためには濃度コントロールをしっかりと行い、一定の範囲内に収めるという部分が重要になってきます。新たに稼働いたしました姫路製造所では、濃度変更が可能な高性能ブレンダーを基本設計から自社で開発しており、混和精度の高さ、混和製造速度等の設備的な優位性で他社との差別化を図っています」と話します。
さらに品質管理の面では「石油製品販売業としてさまざまな規格品を扱ってきた経験がありますので、我々のノウハウを生かした品質管理体制により、バイオディーゼル燃料をお客様の求める品質で提供してまいります」とエネルギー商社ならではの強みを強調します。
▼姫路製造所

▼野田製造所

▼岸和田製造所

出典:バイオディーゼル燃料 | 取扱商品・サービス | 富士興産株式会社
鴻池組と共同でBDF使用の実証実験
富士興産のBDFは、主に建設業、物流業、製造業などで採用されています。特に、非公道(オフロード)での高濃度FAMEの利用が進んでいるといいます。
富士興産は2023年5月から24年11月までの1年6カ月にわたって、鴻池組などと共同で、B30燃料を大型造成現場の建設機械の燃料として使用する実証実験を行いました。京都府の造成現場でB30燃料を油圧ショベルに使用し、CO2排出量を約27.13t削減、油圧ショベルへの機材影響、燃費、実際の排ガス性状に問題はなく、軽油と同等に稼働することを確認しました。
「BDFの機材に対しての影響、その効果測定に加え、外部に排出される排ガスからどのような成分が排出されるかというデータ取得などの検証ができたのも非常に大きな成果となりました。実証結果を踏まえ、GX-ETSフェーズ2に向けたCO2削減ニーズの高まりに対応し、柔軟なソリューション提案を進める方針です」(恩田氏)
▼実証実験現場での遠隔監視システムを用いたB30供給スキーム

出典:富士興産株式会社
今後BDFがさらに普及していくための鍵のひとつとして、恩田氏は安定した供給体制の確立を挙げます。恩田氏は「我々が扱っているBDFは、地域循環型エネルギーです。BDFメーカーという立ち位置に加え、産業用エネルギー販売事業者として培った全国での安定供給の知見が、環境対応型エネルギーのバリューチェーンにおける安定供給・物流・品質管理体制を構築する上で強みとなっていると感じています」と話します。
富士興産は、岸和田、野田、佐野、姫路の各地域に製造拠点を持ち、専用の貯留設備・岸和田では配送ローリーを整備しています。さらに品質管理部門を設け、製造・供給・品質管理・安定操業を一貫して担うことで、安定供給体制を構築しています。
恩田氏は、現状のBDFの流通においてボトルネックになるのが「ラストワンマイル配送」だと指摘します。
「どうしても導入初期の段階なので、軽油と比べて現場で使用する量は小規模になりがちです。そうすると1回あたりの配送にかかるコストが上がってしまう傾向があります。例えば、機械1台から使ってみたいという需要が、建設業含め多いので、供給量と流通にかかるコストのバランスの問題が生じています」(松下氏)
「流通面では配送ローリーの問題もあります。例えば、同じ現場で軽油とB5両方を使うとなった場合、それぞれ別のローリーが必要になってきます。製品を出荷するためのタンクや貯蔵施設をどう確保するかという課題もあります」(恩田氏)
タンク残量の遠隔監視で供給を効率化
こうした流通における課題への一つの取り組みとして、前述の実証実験の現場で行ったのが、BDFタンクの遠隔監視システムの導入です。
「実証実験の現場は遠隔地なのでどう安定的に現場に供給するかという課題もありました。なるべく現場に負担をかけず、従来の軽油と同様にシームレスに使っていただける環境を目指しました」(恩田氏)
あらかじめタンク内残量を示す油面計をカメラで撮影する監視システムを設置。タンク内残量が一定量を下回ると遠隔で通知が受け取れるシステムを導入しました。
「従来シームレスに燃料を供給するためには、タンクの残量にかかわらず決まった頻度で現場を訪れる必要がありました。今回の遠隔監視システムでは、1日3回カメラで残量を把握して、一定量を下回るとアラートが飛んでくるので、ほぼほぼタンクが空の状態のときに供給に行ける。配送頻度を減らすことで、かなりの効率化に繋がったと思います」(松下氏)
現場からも軽油と変わらぬ供給体制に対して好意的な評価が得られたといいます。

販売本部 次世代エネルギー部
次世代エネルギーグループマネージャー 松下 一仁 氏
恩田氏は、今後の次世代エネルギー事業について「BDFは既存燃料との互換性を活かし、設備投資を伴わない即時的なCO2対策が可能です。加えて、当社の場合、BDFに加え、自社で取り扱っている再生重油やカーボンオフセット燃料を組み合わせることで、顧客の削減目標に合わせた柔軟な提案も推進していきたいと考えています」と話します。
「2026年4月からはGX-ETSのフェーズ2移行に伴い、排出権取引やクレジットでの償却に加えバイオディーゼル燃料や再生重油でのCO2削減ニーズが高まると想定されます。当社はサステナブル燃料の供給・販売事業者として、フィジカルなCO2削減手法であるバイオディーゼル燃料・再生重油の製造・供給体制を強化し、全国のニーズに応じた柔軟なCO2削減ソリューションを提案することで、社会に貢献するエネルギー商社を目指していきたいと考えています」(恩田氏)

【写真左】執行役員 販売本部 次世代エネルギー部長 恩田 靖 氏
【写真右】販売本部 次世代エネルギー部 次世代エネルギーグループマネージャー 松下 一仁 氏
※組織名・役職などの情報は取材当時(2025年10月)のものです。

この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。








