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ZEBに使える3つの補助金制度の比較と事例紹介

ZEBに使える3つの補助金制度の比較と事例紹介

ZEBの実現を検討しているものの、設備導入などの初期費用が懸念事項となっている事業者もいるのではないでしょうか。また、補助金や助成金などの活用を検討している場合もあると思います。

建設業界において、ゼロエネルギービルディング(ZEB)の実現は環境への貢献だけでなく、エネルギーコストの削減にも繋がりますが、初期投資の負担が大きいと感じる事業者も少なくありません。補助金や助成金を活用することで、その負担を軽減し、持続可能な建物の構築が可能になります。

本記事ではZEBの実現に活用できる補助金の制度について詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。

ZEBとは?

ZEBとは?

ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)からなる略称です。ZEBは省エネにより消費エネルギーを減らしつつ、創エネにより使用するエネルギーを作ることで、消費する年間の1次エネルギーの収支をゼロ・もしくはマイナスにすることを目指した建造物のことを指します

現在の日本では、温室効果ガスの排出をゼロにする脱炭素社会を目指しており、企業においても温室効果ガスの排出をなくす取り組みが推進されています。特に建物はエネルギー消費が大きいため、大幅なエネルギー削減が可能なZEBには、環境省や経済産業省が補助金としての支援を行っているのが現状です。

ZEBの種類

ZEBの種類(ランク)には4種類あり、建造物に対する消費エネルギーの削減割合からランク付けされます。

引用:ZEBの定義|環境省

それぞれ解説します。

  • ZEB
  • Nearly ZEB
  • ZEB Read
  • ZEB Oriented

ZEB

ZEBは、年間の1次エネルギー消費量がゼロかマイナスの建造物です。定量的な基準として、下記の2つを満たした建築物を指します。

  • 基準1次消費量から再生可能エネルギーを除いた50%以上の削減
  • 基準1次エネルギーから再生可能エネルギーを含む100%以上の削減

Nearly ZEB

Nearly ZEBは、ZEBに限りなく近い建造物で、再生可能エネルギーによって年間の1次エネルギー消費量をゼロに近づけた建造物のことです。定量的な基準は下記の2つを満たすものとなります。

  • 基準1次消費量から再生可能エネルギーを除いた50%以上の削減
  • 基準1次エネルギーから再生可能エネルギーを含む75%以上100%未満の削減

ZEB Ready

ZEB Readyは、効率的な省エネルギー設備を備えており、ZEBを目指している建築物となります。

定量的な基準は下記の通りです。

  • 再生可能エネルギー以外の基準1次エネルギー消費量から50%以上の1次エネルギー消費量を削減した建築物

ZEB Oriented

ZEB Orientedは、効果のある省エネルギー設備だけでなく、さらなる省エネルギーの措置を講じた建造物です。将来的にはZEB Readyも見据えています。定量的な基準としては下記2つを満たすものです。

  • 用途ごとの再生可能エネルギーを除いた1次エネルギー消費量の削減
  1. 事務所、学校、工場などは40%以上のエネルギー消費量削減
  2. ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所などは30%以上のエネルギー削減
  • 「更なる省エネルギーの実現に向けた措置」として、未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)を導入すること

関連記事:ZEB Readyとは? 省エネ率100%を達成できなくても取得できる!4段階のZEB評価

ZEB実現に活用できる、3つの補助金制度

それぞれの補助金制度は、補助対象となる建築物の種類や補助対象設備などが異なるため、建築物の種類や導入設備などによって補助金制度の選択が必要です。

新築建築物のZEB化支援事業への補助金

「新築建築物のZEB化支援事業」は、新築する建築物のZEB実現に寄与する設備等の導入を支援する制度です。

【支援事業概要】

事業内容 ①レジリエンス強化型の新築建築物ZEB化実証事業

② 新築建築物のZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業

対象者
  • 地方公共団体(延床面積制限なし)
  • 民間団体(延床面積10,000㎡未満)
対象設備 ZEB実現に寄与する設備
「空調」「換気」「給湯」「BEMS装置」
補助金額上限 5億円 ※延床面積2,000㎡未満は3億円

【補助率と補助対象範囲】

延べ面積 ①レジリエンス強化型の新築建築物ZEB化実証事業の補助率 ②新築建築物のZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業の補助率
2,000m2未満 『ZEB』2/3

Nearly ZEB 3/5

ZEB Ready 1/2

『ZEB』3/5
Nearly ZEB 1/2
ZEB Ready 補助対象外
2,000m2~ 10,000m2 『ZEB』 3/5
Nearly ZEB 1/2
ZEB Ready 1/3
10,000m2以上
※地方公共団体のみ対象
『ZEB』 3/5
Nearly ZEB 1/2
ZEB Ready 1/3
ZEB Oriented 1/3

参照:建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業|環境省

対象となる設備で挙げられている「BEMS装置」とは、ビルエネルギー管理システムのことです。BEMS装置は、ビルで使用しているエネルギーの見える化や使用状況にあわせて設備の稼働制御などを行います。

なお、ZEBの補助金は、建築物が目指すZEBの種類に応じて補助金の補助率などが変わります。そのため、ZEBの補助金を利用する場合は、ZEBの種類の把握が必要です。

ZEBについて詳しく知りたい人は、「ZEBとは? ZEBの種類と定義・基準などの基礎知識を解説」を確認してみてください。

既存建築物のZEB化支援事業への補助金

「既存建築物のZEB化支援事業」は、既存の建築物がZEB実現に寄与する設備等を導入する場合に活用できる制度です。

【補助制度の概要】

事業内容 ①レジリエンス強化型の既存建築物ZEB化実証事業

② 既存建築物のZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業

対象者
  • 地方公共団体(延床面積制限なし)
  • 民間団体(延床面積10,000㎡未満)
対象設備 ZEB実現に寄与する設備
「空調」「換気」「給湯」「BEMS装置」
補助金額上限  5億円
補助率 2/3

参照:既存建築物のZEB化支援事業|環境省

「レジリエンス強化型の既存建築物ZEB化実証事業」は、災害発生時に活動拠点となる業務用の施設が停電時なども電力供給が可能になる取り組みを支援する事業です。また、「既存建築物のZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」は既築のZEBに資するシステム・設備機器等の導入を支援する事業です。

なお、いずれもZEBの種類によって補助対象が変わります。とくに民間団体の場合は制限があるため、補助金の活用を検討している場合には事前に検討しているZEBの種類と建築物の延床面積を確認してみてください。

住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業への補助金

住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業は、安定的で適切なエネルギー需給構造の構築を目的に経済産業省が補助を行う制度です。新築と既存の建築物どちらも対象に含まれます。

【経済産業省補助事業の概要】

事業内容 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業
対象者 新築民間建築物:延べ面積 10,000㎡以上
既存民間建築物:延べ面積 2,000㎡以上
対象設備 設計費・設備費・工事費
補助上限額 5億円/年 ・10億円/事業
補助率 2/3

参照:令和5年度経済産業省によるZEB実証事業について|一般社団法人 環境共創イニシアチブ

補助対象になる経費は、ZEB実現のための「設計費」「設備費」「工事費」です。設備費として認められる具体的な設備には、断熱材や高性能窓、空調設備やBEMSなどがあります。

補助事業へ申請する場合、ZEBリーディング・オーナーへの登録が必須です。ZEBリーディング・オーナーとは、ZEB導入計画やZEBの導入実績を一般に公表することでZEBの普及率を上げることを目的とした制度です。

ZEBリーディング・オーナーについて詳しく知りたい場合は、環境省「ゼブ・ポータル[ゼブ・ポータル]」を確認してみてください。

関連記事:建設業に助成金・補助金はある?申請方法や必要書類も解説

ZEBの実現に補助金を活用した事例

ZEB化に補助金を活用した事例を紹介します。

松野町新庁舎及び防災拠点施設

ZEBの実現に補助金を活用した事例1つ目は、愛媛県北宇和郡松野町にある「松野町新庁舎及び防災拠点施設」です。愛媛県松野町は豊かな自然に囲まれた地域で、庁舎建て替えでは「地域住民に愛される施設づくり」を目指しました。この事例では、具体的に下記のような環境実現のため、ZEBの補助金が申請されました。

  • 新庁舎のZEB化
  • 地域の木材を活用した環境共生に取り組む庁舎の実現
  • 災害時における電力確保
  • 災害に強い庁舎づくり

ZEBの補助金により、松野産の杉材を活用した木構造やヒノキ材を活用した内装木質化を実現し、結果的に「森の国まつの」を象徴する施設づくりに成功しました。また環境面においても、1次エネルギー使用量を81%削減という低炭素庁舎を実現しており、庁舎トップクラスの環境性能となっています。

松野町新庁舎では今後ZEB化を導入する方に向けて、下記のようなアドバイスを残しています。

  • 補助事業活用を含めた事業工程・事業費の検証、費用対効果の高い環境配慮がポイント
  • また導入前には建設コスト管理や補助事業活用のノウハウを持つ、多くの実績があるZEBプランナーに相談するのがおすすめ

今後ZEBの補助金の活用を検討される方は、ぜひご参考ください。

参照:「松野町新庁舎及び防災拠点施設」のご案内

介護老人保健施設 グリーンピア社会福祉法人 清幸会

ZEBの実現に補助金を活用した事例2つ目は、社会福祉法人 清幸会の「介護老人保健施設 グリーンピア」です。グリーンピアでは下記のような環境改善のために、ZEB化の補助金を依頼しました。

  • 省エネ設備導入による、社会福祉法人ならではの優しい環境づくり
  • 断熱性能の向上による、空調環境の快適化やLED照明導入による明るい室内環境の構築
  • 光熱費削減で得たコストで、サービス向上や人材育成を行う

グリーンピアは、ZEB化推進のための補助金を活かし、「Low-E複層ガラスを使用した内窓による断熱」「電気式高効率空調」「全照明のLED化及び人感・照度センサーによるLED照明の制御」など環境構築を実現しました。

またZEB化を進めた結果、省エネ化だけでなく、入居者がより生活しやすい環境の構築にも成功しています。

なおZEB化の補助金導入に成功したグリーンピアは、これからZEB化する方へ下記のようなアドバイスを残しています。

  • ZEB化は補助金を活用することで、初期費用を抑えられる。
  • 補助金の活用+ランニングコスト削減で、経済的にも大きなメリットが得られる

今後ZEBの補助金の活用を検討される方は、ぜひご参考ください。

参照:ZEB PORTAL|環境省

ZEBの補助金にはBELS評価も関係する

ZEB実現に利用できる補助金制度は、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の取得が必要になる場合があります。

BELSは、設計時点での建築物の省エネルギー性能を第三者認証が評価する制度です。BELSは、性能の評価をZEBと同じBEI(Building Energy Index)という指標で評価しており、BEIの値によって星の数で5段階の評価が行われます。

たとえば、「ZEB実証事業」の補助金交付の要件には、補助事業完了までに対象となる建築物の省エネルギー性能についてBELS等の省エネルギー性能表示の取得があります。補助金交付の前提となるZEBの取得にはBELSの5つ星が必要です。

ZEB補助金を申請する流れ

ZEB補助金を申請する流れ

実際に令和6年度に行われたZEB補助金を申請する流れをご紹介します。※公募要件の詳細について詳しくは、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(以下「SII」という。)のホームページに記載されています。

参照:令和6年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業

ZEB補助金を申請する流れは下記の通りです。

  1. 公募要領の確認
  2. 様式のダウンロード
  3. GビズIDプライムでのアカウント登録
  4. 交付申請様式の作成及び添付書類の用意
  5. jGrantsへのログイン
  6. jGrantsでの申請

それぞれの流れについて詳しく解説していきます。

1.公募要領の確認

まずZEB実証事業の公募要領をよく確認しましょう。またSIIホームページの「よくある質問」や本手引を確認することも大切です。

2.様式のダウンロード

SIIホームページ内の「補助事業」ページから、申請に必要な様式をダウンロードします。

3.GビズIDプライムでのアカウント登録

GビズIDのWEBサイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)にてGビズIDプライムアカウントを登録しましょう。

※なおアカウント取得には2週間程度の時間を要する場合があるため、早めの対応が必要です。

4.交付申請様式の作成及び添付書類の用意

交付書類様式に必要な情報を入力後、補助事業名がわかるファイル名で保存します。保存が完了したら、添付書類を用意しましょう。

5.jGrantsへのログイン

GビズIDプライムアカウント(又は当該アカウントに紐づくメンバーアカウント)を用いてjGrants(https://www.jgrants-portal.go.jp/) にログインします。

6.jGrantsでの申請

jGrantsへ必要事項をすべて入力したうえで、申請書類(Excel様式)や添付書類(PDF)の電子データをjGrantsにアップロードすると申請できます。

脱炭素化を支援する補助事業もある

ZEB化を補助する制度以外にも、再生エネルギーに関する設備の導入や脱炭素化に向けた先進的な取り組みを支援する補助事業もあります。CO2排出量を減らす取り組みや再生エネルギーの活用を支援するものです。

参照:令和5年度予算(案)及び 令和4年度補正予算 脱炭素化事業一覧|環境省

たとえば、「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」は、自家消費型の太陽光発電設備や蓄電池の導入に対する補助金制度です。蓄電池の導入による経済的な実現や、再生エネルギーの導入および価格低減の促進などを目的としています。

また、「地域脱炭素の推進のための交付金」は民間との共同による地域の脱炭素化を促進することを目的とした制度です。少なくとも100か所の地域における再生エネルギー導入や住宅の省エネ性能の向上などの重点対策として支援します。

なお、脱炭素化や再エネルギー設備の導入を補助する制度は、各都道府県や地方自治体でも公募されている場合があります。太陽光発電や電気自動車などの導入を検討している事業者は、管轄の都道府県が募集している制度も確認してみてください。

まとめ

ZEBの実現に活用できる補助金は複数の種類があります。補助金は、新築だけでなく既存の建築物を対象としたものや、ZEB実現にかかる「設計費」「設備費」「工事費」を対象としたものがあります。一般社団法人 環境共創イニシアチブ「ZEBリーディング・オーナー一覧」では、補助金を活用した新築や既存の建築物またはZEB化予定の建築物の事例が検索できます。建物の用途や地域ごとにも検索が可能なため、ZEBを目指す建築物の使用や設備を参考にしたい場合は検索してみてください。

また、建設業界でのゼロエネルギービルディング(ZEB)の実現には、補助金が大きな支援となります。これには新築はもちろんのこと、既存建築物の改修も含まれ、設計費、設備費、工事費をカバーする補助金が利用可能です。本記事を参考に、ぜひ活用できる補助金を探してください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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