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ネガティブエミッションとは?技術や課題、事例について解説

ネガティブエミッションとは?技術や課題、事例について解説

ネガティブエミッションは、大気中のCO2を積極的に回収・削減することで、CO2の総量をマイナスにする取り組みです。代表的な技術であるCCS(二酸化炭素回収・貯留)を中心に、世界中で研究開発と実用化が進められており、回収したCO2を新たな資源として活用する可能性も広がっています。

すでに一部の企業では実証実験から実用段階へと移行しており、建設業界をはじめとするさまざまな産業での導入が期待されています。本記事では、ネガティブエミッション技術の仕組みや最新の導入事例などを詳しく解説していきます。

ネガティブエミッションの基礎知識

ここでは、ネガティブエミッションとネガティブエミッション技術の基礎的な知識について解説します。

ネガティブエミッションとは?

ネガティブエミッション

引用:ネガティブエミッション技術について|経済産業省(2022年2月)

ネガティブエミッションとは、大気中の温室効果ガスを回収・除去してマイナスにすることです。この取り組みに使用される技術をネガティブエミッション技術といいます。既に大気中に存在しているCO2量を減らしてマイナス、つまりネガティブにすることから、この呼び名がつけられています。

ネガティブエミッションの技術例としては、バイオマス燃料とCCSを組み合わせる回収貯留付きバイオマス発電(BECCS)や、フィルターなどで大気中から直接除去する直接空気回収(DAC)などがあり、様々な方法を用いて大気に存在する CO2や燃焼により排出されるCO2回収することが可能となっています。

「ネガティブ」というネーミングですが、取り組み自体はネガティブではない点がポイントです。

ネガティブエミッションの必要性

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、世界の気温上昇を1.5℃以内に抑えるために、CO2の排出削減だけでなく、大気中のCO2を積極的に除去する「ネガティブエミッション」が必要不可欠だと指摘しています。

その理由としては製鉄やセメント製造、航空機の運航など、現在の技術では完全なCO2排出ゼロが難しい産業が存在するためです。これらの排出を相殺し、さらに削減を進めるには、大気中からCO2を直接除去する技術が求められます。

このため、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、各国がネガティブエミッション技術の開発と実用化を急いでいます。回収したCO2は新たな資源としても活用できる可能性があり、その重要性はますます高まっています。

ネガティブエミッション技術の全体像と分類

ネガティブエミッション技術の全体像と分類として、ネガティブエミッションの定義や各技術の成熟度、日本のポテンシャルなどを解説します。

ネガティブエミッション技術の分類と定義

ネガティブエミッション技術は、吸収・回収・固定の3プロセスに分類されます。また、自然利用型か、工学的アプローチかもそれぞれの技術によって異なります。

各技術の分類は次の通りです。

技術 プロセス アプローチ
植林・再生林 吸収 自然プロセスの人為的加速
土壌炭素貯留 固定 自然プロセスの人為的加速
バイオ炭 固定 自然プロセスの人為的加速
BECCS 回収 工学的プロセス
DACCS 回収 工学的プロセス
風化促進 吸収 自然プロセスの人為的加速
ブルーカーボン 吸収・固定 自然プロセスから工学的プロセス全体にわたる
海洋アルカリ化 吸収 自然プロセスの人為的加速

ネガティブエミッションは自然ベースの森林再生や土壌炭素貯留、生物工学ベースのバイオ炭やBECCS、化学工学ベースのDACCSなどが含まれます。いずれも自然のCO2吸収・固定化過程に人為的工程を加えることで、吸収速度や効率を加速させることを目的としています。

各技術の成熟度とコストの違い

ネガティブエミッション技術の、技術ごとの成熟度とコストには大きな差があります。DACやBECCSは技術的に革新的ですが、技術的には成熟していない分コストが高く、大規模展開に課題を抱えているのが現状です。

DACは現在、CO2回収1トンあたり数百ドルのコストがかかり、BECCSも設備投資や運用に多額の資金を要します。一方、ブルーカーボンや植林などの自然ベースの解決策は植林技術などが成熟しているため相対的に低コストで実施しやすく、既に広く実践されていることが特徴です。

ネガティブエミッションの技術評価には包括的なLCA(ライフサイクルアセスメント)の要素が欠かせません。CO2吸収に関わるLCAは、評価の透明性を確保したうえで、原材料調達から廃棄までの全工程を含む境界条件の範囲、評価対象期間、必要な装置や土地の面積などの機能単位を明確にする必要があります。

さらに、サプライチェーン全体や波及効果を考慮したライフサイクル思考に基づく評価も求められます。

日本の地理的・技術的ポテンシャル

日本のネガティブエミッション技術における地理的・技術的ポテンシャルとして、国土の多くを森林が占める日本では、森林バイオマスの活用が有望視されていることが挙げられます。間伐材や林地残材を利用したバイオ炭製造やBECCSは、国内資源の有効活用と炭素隔離を同時に実現できる技術です。

高い技術力を活かしたDAC技術の開発も進められており、限られた国土での効率的なCO2削減に貢献する可能性があります。CCSに関しては、海に囲まれた地理的特性を活かした海底下地層へのCO2貯留も注目されている技術の一つです。

また、製鉄所や発電所などの大規模排出源が沿岸部に集中している産業構造は、CO2回収・輸送・貯留の一貫したシステム構築に有利です。このように、山が多い地形や排出源が沿岸部に集中していることなど日本特有の条件を考慮した戦略設計が欠かせません。

ネガティブエミッションの主要技術とその役割

ネガティブエミッションの主要技術とその役割

ネガティブエミッション技術には、主に以下の方法があります。

  1. CCSとCCUS
  2. DACとDACCS
  3. BECCS
  4. 植林・再生林
  5. バイオ炭
  6. ブルーカーボン

それぞれの技術を詳しく紹介していきます。

①CCSとCCUS

CCS (Carbon Capture and Storage)とは 地上設備により分離回収されたCO2を陸域に圧入し、そのまま貯留する方法です。

CCSは主に火力プラントなどの高濃度なCO2を発生させる設備から排出されるCO2を回収しており、効率よくCO2を集められています。なお、回収した後のCO2の貯蔵先は陸域となっていますが、その注入場所である貯留槽は地下800mよりも深い必要があり、CO2が漏れないよう遮蔽層がある地層を選定しなければなりません。

また、地中に圧入されたCO2については、どのような挙動を見せているか詳細にモニタリングする必要も出てきます。

一方で、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)は、回収したCO2の一部を有効活用する技術です。地球大気中のCO2を適正レベルまで低下させることができるようになるうえ、枯渇した資源を効率的に補填可能です。

②DACとDACCS

DAC(直接空気回収技術)は、大気中に含まれるCO2を直接分離回収する技術です。大気中に含まれるCO2の濃度は0.04%程度です。濃度としては400ppm程度の希薄なため、大気中のCO2の回収には多くの熱や電気を消費します。このため、回収効率の上昇やコスト削減が必須となっています。

DACCSは大気中のCO2を直接回収して貯留する技術で、EU各国やアメリカで導入が進んでいます。2021年時点では、稼働中のDACCS設備の合計は1.7万tCO2/年であり、今後も施設を増設する計画が見込まれています。日本ではまだ実証段階であり、導入には多くのコストがかかるため、実装ハードルは比較的高い技術です。

③BECCS

BECCSとは、バイオマス発電とCCSを組み合わせた技術です。大気中に存在するCO2をバイオマス資源として固定することで、 エネルギーとして再利用できるようになります。このバイオマスを燃焼させることで発電しますが、燃焼後に排出されるCO2を回収して貯蔵します。日本では一般的ではない分野の技術である上に、バイオマス資源として森林を育てる必要があるため必要面積が広大になってしまうというデメリットもあります。

アメリカで特に導入が進んでいる技術で、バイオマス発電や分離回収、CCSの点においてほぼ完成された技術です。持続可能なエネルギー共有が可能で、ネガティブエミッションとも両立が可能となっており、削減効果の検証が容易であるため、広い土地を有する北米での導入が盛んです。

④植林・再生林

植林や再生林の導入は、従来から多く取り入れられている方法です。特に新規エリアにおいては、森林化や森林再生などの技術開発が進められています。1年間に人が排出するCO2排出量と杉のCO2吸収量は次の通りです。

1世帯から1年間に排出される二酸化炭素の量は、2021年の場合、約3,700キログラム注4でした。 これは、36~40年生のスギ約12本が蓄えている炭素量に由来する二酸化炭素量と同程度です。

また、この排出量を、36~40年生のスギが1年間で吸収する量に換算した場合、スギ420本分の吸収量と同じぐらいということになります 。

注4 出典:温室効果ガスインベントリオフィスウェブページ(2021年公開値)

引用:森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?|林野庁

つまり、1世帯につき1年分の排出量を吸収するためには約420本の成長した杉が必要となる計算であるため、植林や再生林によりCO2を吸収する場合には広大な面積が必要になることが分かります。

大規模な伐採のあった場所に植林をした場合、植えた苗木が成長してその土地の炭素収支がプラスに転じるまでには、数年から数十年かかると言われています。また、木が育つまでにも多くの時間がかかるため、長期的な管理と運用が必要です。

加えて、長い間人の手が入っていない場所には、すでに独自の生態系が形成されていることもあるため、植林によって負の影響を与える可能性がないかも、慎重に判断しなければなりません。このように植林や再生林には非常に広大な土地や長期的な管理が必要なため、日本国内での取り組みの現実性は低い分野となってきます。

⑤バイオ炭

バイオ炭は、土地改良剤として炭を農地に撒くという方法です。日本の農家では、古くから粉状になった炭を農地に撒き、土壌改良剤として農作物の生育や連作障害防止に利用してきました。

バイオ炭は植物が光合成で貯めた炭素や他の生物が蓄えた炭素を炭の状態でそのまま 地中に埋めます。これにより、大気中のCO2の濃度を下げる役割を持ちます。木炭とは異なり、木材や竹、家畜の糞尿、もみ殻、下水汚泥など、様々な生物由来の生産物を原料として有効活用することが可能です。

バイオ炭を土壌に混ぜ込んで肥料として使用するだけなので、気軽に行えると共に、エコブランドの一環として組み込めます。このバイオ炭を用いた環境価値の取り組みとしては、J-クレジットが挙げられます。J-クレジットは、バイオ炭などの生成を行うクレジット創出者が、創出したクレジットをCO2排出量を削減したい企業へ売却を行うシステムです。

購入者側である企業にとっては、カーボンオフセットを達成できるほか、ブランドイメージの向上につながるといったメリットを得ることも可能となります。

⑥ブルーカーボン

ブルーカーボンは、大気中に排出されたCO2を海洋中に存在する海洋生態系であるブルーカーボン生態系が吸収し、死後に堆積することで炭素の長期固定化を図る取り組みです。大気中のCO2を補足して吸収するため、ネガティブエミッション技術の一つと考えられています。本記事で紹介する方法の中でも、自然に炭素を地中へ貯留できる方法で、比較的容易に検討できる方法です。

 

一方で、近年はブルーカーボンの生態系が急速に減少しているため、大気中のCO2は取り込まれにくい状況です。ブルーカーボンとして取られる施策には、海藻などを人工的に植える方法や、海藻を食い荒らすウニなどを取り除く取り組みが挙げられます。

また、海洋大国である日本においては、ブルーカーボンの生態系の回復やクレジット化に向けて、J-ブルークレジットという形でVCCの取り組みが行われています。VCCとはVoluntary carbon creditの略で、カーボンクレジット創出は民間主体で行われます。

排他的経済水域の広さは世界6位、海岸線の長さも非常に長く、海藻養殖技術を保有している日本にとっては、ブルーカーボンによるネガティブエミッションは非常に実施のハードルが低い方法です。加えて、コストあたりのCO2排出量の削減も他の技術より比較的高いです。

しかしながら、CO2貯留や環境影響などの面における評価方法は未確立となっており、検証が必要な状態です。今後、いかにして評価方法を確立していくか、適切なクレジット化が行われていくかが焦点となります。

ネガティブエミッションの課題

ネガティブエミッションの課題

ネガティブエミッション技術の多くは、誕生してから間もない技術であることもあり、社会の支援体制や経済的な枠組みが未完成の状態です。一方で、国はネガティブエミッション技術へ積極的に予算を組んでおり、参画企業も増加傾向にあるため、今後の動向に注目が集っています

ここからは、ネガティブエミッション技術の具体的な課題について解説していきます。

社会や行政との連携

ネガティブエミッションを効率よく進めていくためには、社会や行政、企業の連携のみならず周辺住民の協力も不可欠です。

経済産業省では、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、CCS事業の本格展開のために「先進的CCS事業」を開始しました。これには、2030年までの事業開始、事業の大規模化、圧倒的コスト削減を目標とし、2030年までにCO2の年間貯留量を約1,300万トン確保することを目指しています。

先進的CCS事業は個別企業に留まるものではありません。さらに推進していくためにも国からの公的支援制度や国が前面に立ちCSSの意義や必要性について広く国民に理解をしてもらうことが大切です。

また、植林については森林所有者の高齢化が進んでいるため、民有林の所有者が不明なところが多くなっています。行政とともに森林の情報を見える化し、情報を共有できる仕組みを整える必要があります。

経済的な問題

現状、ネガティブエミッションに対するクレジット制度や対策費、維持費の確保といった仕組みの確立はまだまだ発展途上す。

技術の導入には一定のコストがかかるため、国の補助金や関連団体の支援金などを考慮したプラン策定が重要す。

バイオ炭については、農地での炭素固定量をあげるために取り組みが検討されています。しかし、農業従事者側はバイオ炭による土壌の質の変化などを懸念しており、同意が得られにくい状況です。

農業従事者の協力を得るためにも、農業従事者へのコスト面や技術面の両方で支援がある体制づくりが求められています。特に経済的な損失がある場合には、Jクレジットを活用するなどさまざまな解決策を提示することが重要です。

例えば、米国では、各州に大学があり、農学部に所属している研究者と農家が双方で話す時間を必ず取らなくてはなりません。このため、米国の農業関係者のサイエンスに対する知見は明るいですが、日本ではそういった仕組みが設けられていないため、大学側と農業関係者との関係や連携が希薄になる傾向があります。

米国やEU、英国においては、CDR(大気中のCO2を除去すること)の必要性と今後の取り組み方針を相次いで公表しています。実証に向けた政策支援や削減効果の確認方法の確立、導入拡大に向けた支援策等の方針を示しました。支援策等の方針を示したことにより、CCSやDACなどの取り組みが、経済的な観点から見てより一層容易になりました。

日本においてもこの流れは同様です。CCSなどの技術要素を含むCDRの分野における代表的なプロジェクト支援として、GI基金やムーンショット型研究開発事業などが挙げられます。

CCSなどの技術要素を含むCDRの分野の支援や予算案に着目し、積極的にCCSなどのネガティブエミッション技術の導入を進めていく必要があります。

対策費や維持費などの点でも農林水産業関係者がネガティブエミッションの施策を率先して導入する可能性は低いので、導入した際のメリットやインセンティブなどをきちんと説明して理解してもらうことが重要です。

ネガティブエミッションの現状と動向

ネガティブエミッションの現状と動向

ここからはネガティブエミッションに関連する施策の現状について 国内と海外に分けて解説します。

国内の現状と動向について

国内では、DACCSなどの技術が導入された設備がわずかではありますが稼働しています。ここでは、DAC技術に本格参入している会社について13社リストアップします。

  • 株式会社日立製作所
  • 三井物産株式会社
  • 三菱重工業株式会社
  • 九州電力株式会社
  • 双日株式会社
  • 株式会社IHI
  • 川崎重工業株式会社
  • 日本碍子株式会社
  • 三菱瓦斯化学株式会社
  • 株式会社ダイセル
  • 東邦瓦斯株式会社
  • 日揮ホールディングス株式会社
  • SyncMOF株式会社

また、様々なカテゴリで存在するネガティブエミッションの施策においては国から多くの予算が充てられています。ここでは、環境省や経済産業省、農林水産省が実施しているプロジェクト支援について見ていきます。

カテゴリ 国家プロジェクト支援金額
DACCS 30.7億円(9件)
BECCS 29.8億円(1件)
土壌炭素貯留 1.5億円(1件)
バイオ炭 0.4億円(1件)
植林・再生林 2.3億円(1件)
風化促進 0億円(0件)
海洋アルカリ化 0億円(0件)

参照:NETs(ネガティブエミッションテクノロジーズ)の政策・技術動向|国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構

このリストより、国としての支援プロジェクトが充実している分野はDACCSとBECCSということが分かります。

特にDACCSでは巨額な支援を行っており、大気中からの効果的なCO2分離回収・炭素循環技術の研究が精力的に行われています。DACCSに関連し、内閣府は新たに「ムーンショット目標4」と呼ばれる国家戦略を打ち出しました。近い将来、より実用的な技術として恩恵を受けられるようになることが見込まれます。

なお、日本の農地における基本計画や戦略には以下の様なものがあります。こちらについても併せて確認するようにしてください。

年月 プロジェクト名
2008年7月改定 農林水産省地球温暖化対策総合戦略
2012年~2020年 生物多様性国家戦略
2020年1月 革新的環境イノベーション戦略
2020年3月 食料・農業・農村基本計画
2020年10月 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
2021年5月 みどりの食料システム戦略
2021年10月改定 農林水産省気候変動適応計画
2021年10月改定 農林水産省地球温暖化対策計画

上記計画には、ネガティブエミッションを含む環境保護対策に関するアイデアが詳細にまとめられています。これらの計画中のネガティブエミッションに関連する項目に着目し、自社の新たな戦略として取り入れることもおすすめです。

特に2008年の農林水産省地球温暖化対策総合戦略においては、2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すことが表明されました。具体的な対策には、節電などの省エネ対策やクリーンエネルギー導入の他、ゼロエミッションの実現も挙げられます。

この他、経済産業省では2023年より、ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会を度々実施しています。

海外の現状と動向について

米国やヨーロッパなどの海外では、ネガティブエミッション技術が導入された施設の運用や市場形成が盛んです。

米国では、2021年に成立した超党派インフラ投資雇用法(BIL)におけるDACの支援で、4地域おけるDACハブにおいて35億ドルの補助金制度を展開中です。DACの導入促進が積極的に行われており、年間100万トン以上を貯留・利用する能力を有しています。この他米国では、DACCS/BECCS/海藻類炭素固定を国のプロジェクトとして推進しています。基金の合計金額は日本円で48.4億円(4,400万ドル)で、多額の交付がなされている状況です。

また、欧州においても、英国ビジネスエネルギー・産業戦略相による英国の気候変動目標達成と6万件の雇用創出に向けた約260億円(1億6,600万ポンド)の大規模な助成金プログラムを打ち出しています。プロジェクトの数は24にもおよび、土地の特製に合わせた効果的なDACCSを促進しています。

ネガティブエミッションの取り組み事例

ネガティブエミッションの取り組み事例

ここからは、ネガティブエミッションの具体的な取り組み事例について、ご紹介いたします。

鹿島建設株式会社

 鹿島(社長:天野裕正)と川崎重工(社長:橋本康彦)は、川崎重工が保有するDAC(Direct Air Capture)を、鹿島らが開発したカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM」(シーオーツースイコム)の製造に利用するための共同研究を開始しました。

 川崎重工が開発したDACは、大気中からCO2を直接回収する技術です。CO2の吸収に最適な多孔質材料とアミン化合物から成る固体吸収材によって、大気中のCO2を分離・回収します。

 一方、鹿島らが開発した「CO2-SUICOM」は、コンクリートの製造時にCO2を吸収・固定することでCO2排出量を実質ゼロ以下にできる技術です。プレキャストコンクリート製品工場にて炭酸化養生※1を行うことで、CO2を吸収・固定させます。炭酸化養生で用いるCO2は現状、外部から購入しており、「CO2-SUICOM」の普及展開にあたっては、CO2の調達手段が大きな課題となっています。そこで、鹿島は必要なCO2を必要な場所でタイムリーに調達できるDACに着目し、数十年にわたり開発を進めている川崎重工と共同研究を開始することとしました。

※1 CO2を封入した槽内でコンクリートを養生し、安定した環境でCO2を吸収・固定させる方法

引用:大気中のCO2をコンクリートに吸収・固定する共同研究を開始|2024年7月26日| 鹿島建設株式会社

清水建設株式会社

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することで大気中のCO2を除去するネガティブエミッション技術の普及拡大が進められています。Carbon Xtractが保有するネガティブエミッション技術である、ガス分離膜を用いて大気中からCO2を直接回収するm-DAC®(membrane-based Direct Air Capture)技術(※)は、大規模な設備を必要とせずに装置を小型化して分散して設置できることが特徴で、今後、都市部のさまざまな場所に設置してCO2の回収に役立てられると期待されています。3社は、本事業を通じて、小型・分散型のCO2回収システムを用いたネガティブエミッション技術を都市実装するとともに、回収したCO2を利活用することで炭素の循環利用が可能な都市づくりを目指します。

(※)m-DAC®技術
分離ナノ膜技術によって大気中の二酸化炭素(CO2)を直接分離・回収する技術です。Carbon Xtractと国立大学法人九州大学が、従来のCO2分離膜と比べて極めて高いCO2透過性を有する分離膜の開発を進めています。「m-DAC®」は国立大学法人九州大学の登録商標です。

引用:大気から二酸化炭素を直接回収・利活用するm-DAC®技術の都市実装を開始|2024年10月17日|清水建設株式会社

まとめ

ここまでネガティブエミッションとは何かや関連技術の概要、実際の導入事例について詳しく解説しました。ネガティブエミッション技術は誕生してから間もない技術であることもあり、多くの国や企業が今後の動向について注目している状態です。2020年代に入ってからは多くの企業が実証実験を開始しており、今後さらに広い層での技術導入が見込まれています。

建設業界で、環境に配慮した企業であることが認められれば、環境対策に貢献している企業という名声を得られるなど、より多くの社会的アドバンテージが得られるでしょうネガティブエミッション技術今後の動向について、是非注目してみてください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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