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再エネ特措法とは?制度の特徴や改正による変更点を解説

再エネ特措法とは?制度の特徴や改正による変更点を解説

再生エネルギーを地域に根付かせ、積極的な活用を目指す「再エネ特措法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)」の浸透が進んでいます。再生エネルギーの有効活用は、脱炭素社会を目指すうえで欠かせないものになります。再エネ特措法はそのための施策として、重要なものなり得るでしょう。

本記事では、再エネ特措法の基本や特徴、改正による具体的な変更点などを解説します。

再エネ特措法とは何か?

再エネ特措法とは

再エネ特措法を理解するには、その制度が持つ特徴を正確に把握することが重要です。以下では、再エネ特措法の基本について解説します。

再生可能エネルギーでつくった電力を電力会社が買い取る制度

再エネ特措法とは、正式名称を「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」と言います。地域と共生した再生可能エネルギーの導入と、その利用拡大を目指すための施策であり、2011年に制定されて翌年の2012年から運用が始まっています。

10年以上続いている実績があるため、現在に至っても再生エネルギーを活用するための重要な施策として認識されています。再エネ特措法は何度か改正が行われ、時代や状況に合わせたかたちになっています。2024年4月にも改正された内容が実施予定となっており、今後の成果にも期待が集まっています。

そもそも再生可能エネルギーとは?

再エネ特措法では、再生可能エネルギーの地域活用および有効な利用方法の考案が進められています。そもそも再生可能エネルギーとは、従来の化石燃料などと異なり、持続可能な性質を持つエネルギー源を指します。

環境への負担が軽減できるほか、地球温暖化など気候変動問題への対処や化石燃料の将来的な枯渇に対する備えなど、再生可能エネルギーへの移行にはさまざまなメリットがあります。日本国内はもちろん、世界中で再生可能エネルギーへの移行が進んでいます。

再生可能エネルギーの対象となるエネルギーの種類には、具体的に以下のものがあります。

  • 太陽光
  • 風力
  • 水力
  • 地熱
  • 太陽熱
  • バイオマス
  • その他の自然界に存在する熱

これらのエネルギーは基本的に枯渇しないため、継続した利用が可能です。また、CO2の削減につながったり、エネルギー自給率の向上を進めたりといった、さまざまなメリットを生み出せることも特徴です。

FIT制度・FIP制度とは?

再エネ特措法は「FIT制度」とも呼ばれます。FIT制度とは、再生可能エネルギーを使って発電した電気を、国が固定の価格で買い取る制度を意味します。FIT制度も制度全体の改正に伴って内容が変化し、より使いやすいかたちに変化しています。

FIT制度により設備投資に使用された資金回収が容易になり、再生可能エネルギーの普及を進めることが期待されています。FIT制度の財源は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を新設することでまかなっています。

この再生可能エネルギー発電促進賦課金は、通常の電気料金に上乗せして、月々の電力会社への支払いと合わせて、消費者が負担するかたちになっています。再生可能エネルギー発電促進賦課金の金額は、全国で一律になるよう経済産業大臣が年度ごとに調整します。そうして集めた資金を活用してFIT制度を維持しています。

一方の「FIP制度」とは、令和4年の改正によって導入された制度です。買取価格が一定のFIT制度とは異なり、FIP制度の買取価格は市場価格に連動するので、電力の需要が高いときを狙って売却する方が、利益が大きくなります。

そのため、普段は蓄電池などに電気を貯めておき、電気の供給量が減少しているときにまとめて売却するといった方法が考えられます。この結果電力不足に陥る地域を減らし、インフラの維持がしやすくなるメリットがあります。FIP制度はFIT制度と並行して、今後も利用されることが計画されています。

2024年4月から改正再エネ特措法が施行

再エネ特措法は2022年の改正後、さらに2024年から改正再エネ特措法の施行が決まっています。さまざまな要素が改善され、より最適化された内容の施策となっています。そのため、これから再生可能エネルギーを有効活用する際には、2024年4月から始まる改正再エネ特措法を理解することが重要です。

再エネ特措法が制定された背景・目的

再エネ特措法_背景

再エネ特措法が制定された背景には、さまざまな目的があります。具体的にどんな目的があるのかを理解できれば、制度を有効活用しやすくなるでしょう。以下では、再エネ特措法が注目される背景や目的を解説します。

効果的な再生可能エネルギーの導入を促す必要がある

再エネ特措法は、政府が効果的な再生可能エネルギーの導入を促す必要があると判断し、立法された背景があります。再生可能エネルギーの必要性および需要は高まっていますが、活用するには事業環境を大きく変える必要があり、その分負担がかかります。

そこで再エネ特措法を導入し、再生可能エネルギーの導入しやすさを改善し、より身近にすることが1つの目的となっています。

再生可能エネルギーの発電率の低さを改善する

2020年の段階で、日本の再生可能エネルギーによる発電率は19.8%となっています。これは世界と比較して低い水準にあり、今後の改善点として挙げられています。それでもFIT制度などによって、再生可能エネルギーの普及率は2011年度の10.4%から、19.8%まで増加しています。

そのため、再生可能エネルギーの普及率は、再エネ特措法によって今後も伸びていくと考えられます。日本は2030年時点で、電源構成の再生可能エネルギーの比率を36~38%まで上げると宣言しています。この目標を達成するために、今後も再エネ特措法以外にもさまざまな施策の導入が求められるでしょう。

再生可能エネルギーの認知度・重要性をさらに高める

再エネ特措法は、純粋に再生可能エネルギーの認知度や重要性をさらに高める施策としても期待されています。再生可能エネルギーの存在や必要性を知っていても、どこか他人事に感じている人もいるでしょう。しかし、環境問題やエネルギー問題の解決のためには、一人ひとりが再生可能エネルギーについて考える必要があります。

再エネ特措法は、個人や企業が再生可能エネルギーについて深く考えるきっかけとして作用することも期待されています。

改正再エネ特措法によって変わること

再エネ特措法は、2024年4月に改正されます。この改正によって、さまざまな内容が変更されます。以下では、改正再エネ特措法によって変更される主な内容を解説します。

関係許認可取得に係る認定手続の厳格化

再エネ特措法によって、「関係許認可取得に係る認定手続の厳格化」が進められます。具体的には、災害の危険性に直接影響を及ぼす可能性のある土地開発に関わる許認可について、FITとFIP認定の申請要件化が進んでいます。災害の危険性に直接影響を及ぼす可能性のある土地開発には、以下の内容が想定されています。

  • 森林法の林地開発許可
  • 宅地造成及び特定盛土等規制法の許可
  • 砂防三法(砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地法)の許可

改正再エネ特措法によりこれらの許認可手続きはより厳格化されます。

説明会などのFIT/FIP認定要件化

「説明会などのFIT/FIP認定要件化」も、改正再エネ特措法における変更点です。具体的には、以下の内容が変わることが決まっています。

  • 説明会などを実施すべき再エネ発電事業の範囲の変更
  • 説明会での説明事項の変更
  • 説明会の議事の変更
  • 「周辺地域の住民」の範囲の変更
  • 説明会の開催時期の変更
  • そのほかの説明会実施要領の変更

各変更点の詳細は、経済産業省の「改正再エネ特措法の施行に向けて」で確認可能です。

認定事業者の責任明確化

「認定事業者の責任明確化」も、改正による変更点の1つです。発電事業は、保守管理などの業務を外部の事業者に委託するのは一般的です。監督義務に関する変更点であり、委託先も認定基準・認定計画を遵守するように、認定事業者に委託先に対する監督義務を課すことが求められます。監督義務の対象となるのは、再エネ発電事業の実施に必要な行為に該当する委託業務です。

また、認定事業者と委託先との間で、書面の契約書を締結する必要もあります。契約書には「委託先も認定基準・認定計画に従うべき」点を明確化し、認定事業者への報告体制や再委託時の認定事業者の事前同意などの事項を含めることが求められます。また、報告体制の改善も要件となっています。

具体的には委託先から認定事業者に対して、認定基準・認定計画の遵守状況など
を報告する必要があります。また、認定事業者は国に対して、委託契約の概要などについて年に1回の定期報告をすることも求められています。

違反状況の未然防止・早期解消の措置

制度における違反状況の未然防止と早期解消の措置についても、改善が進められました。例えば、行政処分・罰則の対象となる違反が明らかになり、書面による指導など客観的な措置が実施された段階で、交付金の一時停止が可能となっています。

FIT/FIP交付金が一時停止された場合、違反状態の早期解消を求めるために、インセンティブとして「違反の解消」もしくは「事業の廃止と適正な廃棄など」が確認されれば、一時停止された交付金を取り戻せるように制度が変更されています。

太陽光パネルの増設・更新に伴う適正な廃棄の確保

「太陽光パネルの増設・更新に伴う適正な廃棄の確保」についても、要件が変更されています。具体的には「廃棄等積立制度」で積み立てられた積立金を充てることではなく、個別に適正な廃棄を実施することが求められます。

また、更新による変更認定申請を行う際には、廃棄を依頼する契約書などの提出を解体・撤去業者に求める必要があります。そのほか、事後的に実際に適切な廃棄が実施されたことの報告も必要です。

再エネ特措法のメリットとは?

再エネ特措法_メリット

再エネ特措法の実施には、個人や企業に多くのメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのかを知ることで、制度への興味や再生可能エネルギーを使う意識が高まるでしょう。以下では、再エネ特措法の具体的なメリットを解説します。

個人でも導入計画が立てやすくなる

再エネ特措法は、個人でも再生可能エネルギーの導入および売却計画を立てやすいというメリットがあります。個人にも固定価格買取制度が適用されるので、例えば太陽光発電のシステムを住宅に導入した際に、余剰電力を計画的に売却できます。

再生可能エネルギーで発電した電気は、電力会社が一定価格と期間で買い取るため、収支の見積もりがしやすく、どの程度で導入費用をまかなえるのかスムーズに計算できるでしょう。

参照:固定価格買取制度再生可能エネルギーガイドブック2018年度版

設備への投資金額を素早く回収できる

再エネ特措法によって、再生可能エネルギーを活用するための設備投資金額を、素早く回収できる点もメリットです。FIP制度によって需要が高いときに電力を提供すると、市場価格に連動した高値で売却できます。そのため、工夫次第で電力の売却利益を高めて、設備へかけた投資金額の早期回収を目指せます。

再生可能エネルギーに関する知識を得るきっかけになる

再エネ特措法の存在は、多くの個人や企業が再生可能エネルギーを知るきっかけになる点もメリットです。より生活に密着した制度であるため、日常的に再生可能エネルギーを使用することを検討できます。これからの時代、脱炭素社会の実現に向けて、個人・企業単位でもさまざまな対応が求められます。

再エネ特措法はそういった現代において、個人・企業と再生可能エネルギーを結びつけるきっかけとなる可能性が見込まれます。

再エネ特措法の事例

再エネ特措法は、10年以上続く施策です。そのため、これまでに多くの個人や企業が、制度のメリットを活用しています。以下では、再エネ特措法の現状を解説します。

具体的な事例はまだ公開されていない

再エネ特措法そのものに関する事例は、特別に公開されていないようです。そのため、再エネ特措法が具体的にどんな効果を出しているのかを事例から知るには、まだ時間がかかると予想されます。改正をきっかけに再エネ特措法の認知度と利用率が高まることで、事例として紹介できるものが増える可能性が期待されます。

地元理解の促進に向けた自治体の事例を公開する連絡会の設置などが進んでいる

再エネ特措法では、地元理解に向けた自治体の事例を公開する連絡会の設置などが進んでいます。地域と共生した再生可能エネルギーの導入および利用拡大を目指す施策であるため、地域の事例は重要な参考資料になります。そのため、連絡会を通して情報共有と公開が進む可能性があるでしょう。

個人や企業による積極的な情報発信も重要になる

再エネ特措法を活用した個人や企業による積極的な情報発信も、今後は重要になると考えられます。実際に再エネ特措法によって得られたメリットの紹介や、利用時の難しさや難点を正直に公開する個人・企業が増えれば、知名度が高まって再エネ特措法に興味を持つ人も増えるでしょう。

まとめ

2024年の4月に改正された 再エネ特措法は、再生可能エネルギーの普及と地域との共生を目指す重要な施策です。その注目度は高まっています。この機会に再エネ特措法の基本やメリットを確認し、有効活用する方法を考えてみるのもおすすめです。

建設業も再エネ特措法を使った設備投資が有効になるため、積極的な情報収集を進めてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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