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ネットゼロとは?カーボンニュートラルとの違いや実現に向けた取り組みを解説

ネットゼロとは?カーボンニュートラルとの違いや実現に向けた取り組みを解説

脱炭素に関する調査や取り組みの中で、「ネットゼロ」という言葉に触れることもあるでしょう。しかし、ネットゼロの定義やカーボンニュートラルとの違いが分からないという人もいますよね。

建設業界においても「ネットゼロ」は重要な概念です。本記事では「ネットゼロ」と「カーボンニュートラル」の違いや、脱炭素を実現するための具体的な取り組みを分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。

ネットゼロとは?

ネットゼロとは、温室効果ガスの排出量を正味ゼロにすることです。「ネット」には、全体や総計という意味があり、排出と吸収のバランスを取ることで温室効果ガスの排出量を相殺し実質ゼロにすることを意味します。

たとえば、企業が削減しきれなかったCO2排出がある場合、過剰分に相当する他社の植林活動や再生可能エネルギー技術開発などに投資を行うことでネットゼロの実現が可能です。CO2削減のための活動に投資をすることにより、自社のCO2排出量を相殺して実質ゼロとみなすことができます。

現在、エネルギーの多くを化石燃料に依存している日本では、温室効果ガスの排出量をゼロにすることは困難です。しかし、温室効果ガスの排出量削減活動への投資により排出量を埋め合わせるカーボンオフセットや、植林活動などにより大気中のCO2吸収量を増やすことでネットゼロの達成に近づけるでしょう。

ネットゼロとカーボンニュートラルの違い

ネットゼロの類義語として「カーボンニュートラル」があります。ニュートラルとは「中立」という意味で、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて全体としてゼロにすることです。

カーボンニュートラルとネットゼロは、対象となる項目や目標として掲げられている内容にいくつかの違いがあります。

【ネットゼロとカーボンニュートラルの違い】

ネットゼロ カーボンニュートラル
対象 Scope1
Scope2
Scope3
Scope1
Scope2
目標 ・地球の気温上昇を、産業革命以前と比べ1.5℃以内に抑える ・2030年度の温室効果ガス46% 削減(2013年度比)
・2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする
主な手法 ・大気中から温室効果ガスを除去し、永続的に貯蔵する ・温室効果ガスの排出量削減と吸収量の増加を目指す

 

脱炭素には、温室効果ガスの排出段階ごとにScope1~3として分類するサプライチェーン排出量の考え方があります。カーボンニュートラルの場合、自社以外での間接排出に当たるScope3は対象外ですが、ネットゼロではScope3も対象です。

Scope1〜3についてはこちらをご確認ください。

引用:SBT(Science Based Targets)について|環境省

また、カーボンニュートラルは温室効果ガスの削減に重点を置いています。一方で、ネットゼロでは大気中の温室効果ガスを除去することにより、地球の気温上昇を抑えることを主な目標として掲げています。

ただし、経済産業省ではカーボンニュートラルを「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること」と説明しており、排出量から吸収量を差し引いた合計がゼロとなるネットゼロと同義としています。

ネットゼロが重要視される理由

ネットゼロが重要視される理由

ネットゼロが国内だけでなく世界規模で重要視されている理由は、パリ協定にてCO2​​​​​などの温室効果ガス削減に関する取り決めがあったからです。

パリ協定とは、地球温暖化や気候変動などの環境問題に関する国際条約で、日本も加盟しています。パリ協定では、加盟国すべてが温室効果ガス削減などの目標を達成しなければいけません。

国際条約として長期的な目標が設定されているため、加盟国の日本も目標達成のために実践する義務があるのです。

関連記事:脱炭素社会とは?日本における取り組み状況や事例を解説

ネットゼロの実現に向けて企業ができる取り組み

脱炭素に向けた企業のさまざまな取り組みが、ネットゼロの実現につながります。

【ネットゼロの実現に向けた企業の取り組み】
・再生可能エネルギーの導入
・省エネ対策の実施
・緑化事業への取り組み
・脱炭素経営への転換

脱炭素が注目される中で企業が積極的にネットゼロの実現に取り組むことは、エネルギーコストの削減だけでなく、他社との差別化による企業価値の向上などのビジネスチャンスの創出にもつながるでしょう。

再生可能エネルギーの導入

ネットゼロを実現するために、再生可能エネルギー設備を導入する方法があります。温室効果ガスが発生する主な原因は化石燃料由来のエネルギーであるため、化石燃料に頼らない再生可能エネルギー設備を導入することで、温室効果ガスの排出量を削減できるからです。

たとえば、オフィスに太陽光パネルを設置することにより、太陽光発電でオフィス内の電力を賄うことができるため、温室効果ガスの削減につながります。

また、設置場所や容量などの条件が合う場合は、企業の所有する敷地を貸し出して再生可能エネルギー設備を設置するPPAモデルを利用する方法もあります。売電収入を得ることはできませんが、電気料金を安く抑えることができるほか、初期費用やメンテナンスも不要です。

ネットゼロを目指すためには、温室効果ガスをできる限り排出しないことが重要となります。自社のエネルギーを再生可能エネルギーに転換することで、企業全体の温室効果ガス排出量を大幅に削減できるでしょう。

なお、再生可能エネルギー設備の導入が難しい企業は、グリーン電力証書を購入することによって再生可能エネルギーを使用しているとみなすことができる制度もあります。グリーン電力証書について知りたい方は、一般社団法人 日本品質保証機構のホームページ「グリーンエネルギー認証」を確認してみてください。

関連記事:グリーン電力証書とは?活用のメリットや購入方法を解説

省エネ対策の実施

省エネへの対策を行うことも、ネットゼロの実現につながります。温室効果ガスの排出量を完全にゼロにできなくても、省エネによって削減ができれば埋め合わせが必要な量が少なくなり、ネットゼロを達成に貢献できるためです。

たとえば、オフィスでの節電も省エネ対策のひとつです。部分消灯やPCの節電設定、エアコンの設定温度の調整などにより電力使用が抑制され、CO2排出量を削減できます。また、省エネ性能の高い空調装置や電気製品を導入することにより、同じ使用量でも消費電力を抑えることが可能です。

省エネ対策は新たな設備を導入しなくても対応が可能であり、企業が取り組みやすい手法です。環境への配慮だけでなくエネルギーコストの削減にもつながるため、オフィスの部分消灯やPCの省エネモードへの切り替えなど、身近なところから省エネ対策を取り入れてみましょう。

緑化事業への取り組み

緑化事業への取り組みも、ネットゼロの達成に有効な手段です。樹木にはCO2を吸収する作用があるほか、建物に緑を取り入れて直射日光を避けることにより、ヒートショックの防止やエアコンの使用を抑えることにもつながるためです。

近年注目されているのが、オフィスや施設を植物で覆い、建物の表面温度の上昇を防ぐ屋上緑化や壁面緑化です。日本でも、すでに複数の商業施設や保育施設、企業のオフィスビルなどで緑化事業が導入されています。

また、他の企業や団体が行う植林活動などへの投資によって、カーボンオフセットとして埋め合わせることも可能です。植林や森林保護活動などによって樹木を守ることは、CO2の吸収量を増やすことにつながります。

植物を取り入れて建物全体のエネルギー使用を抑えることや、植林によってCO2の吸収量を増やすことも、ネットゼロの実現に向けた取り組みです。東京や京都、大阪などでは、一定規模以上建物の建築に際して屋上や壁面の緑化を義務付けている自治体もあり、緑化事業は地球温暖化対策として期待されています。

脱炭素経営への転換

ネットゼロの達成に積極的に取り組みたいと考えている企業は、脱炭素経営への転換も検討しましょう。脱炭素経営とは、企業活動の一環としてではなく、気候変動対策を目標とした事業方針を定めて全社を挙げて脱炭素に取り組むことです。

脱炭素経営を導入する場合は、以下の手順で行うことが推奨されています。

【脱炭素経営に取り組む手順】

手順 概要
1. 知る ・脱炭素についての情報収集を行う
・現状の経営方針を踏まえ、脱炭素経営の方向性を検討する
2. 測る ・自社のCO2排出量を算定する
・算定結果をもとに、削減できる部分を特定する
3. 減らす ・削減ターゲットの分析を行い、削減計画を立てる
・計画に沿って削減対策を実行する
・必要に応じて計画の見直しを行う

脱炭素経営は企業全体での取り組みであり、組織体制の調整や設備導入など手間や初期費用が発生する場合がありますが、長期的に見た場合のエネルギーコスト削減や企業価値の向上など複数のメリットがあります。

さらに、脱炭素が注目される中で、環境問題に積極的に取り組む企業への投資を行うESG投資なども広まっています。脱炭素経営は企業のイメージアップや他社との差別化につながり、資金調達においても有利となるでしょう。

関連記事:建設業界で注目のESG投資とは?過去の勉強会から学ぶ

日本のネットゼロの取り組み

日本のネットゼロの取り組み

日本が行なっているネットゼロの取り組みは、どのような内容なのでしょうか。取り組みの具体的な内容を紹介します。

地球温暖化対策推進法の改正

2021年5月​、地球温暖化対策推進法の改正が行われ、それ以降ネットゼロに関する情報が公表されるようになりました。環境省が2024年5月に公表した「2050年ネットゼロ実現に向けた国内・国際動向」によると、以下のような情報が記載されています。

2030年度目標及び2050年ネットゼロに対する進捗

引用:2050年ネットゼロ実現に向けた国内・国際動向|環境省

上記のグラフによると温室効果ガス排出は年々減少しており、順調にネットゼロへ近づいています。

ZEB

環境に配慮してエネルギー消費を削減しつつ快適な居住空間を提供する建物が、ZEBです。ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)​​」の略称であり、文字通りネットゼロ実現のために構築された建物です。ZER認証を受けた建物が増加すれば、ネットゼロ実現が近づいている証明になります。

グリーン成長戦略

経済産業省が中心となり関係省庁と連携して策定されたのが「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。カーボンニュートラル・ネットゼロを実現するためには、さまざまな分野で新たな取り組みを導入しなくてはいけません。

そのため、3つの業界・14分野にて実行計画を策定し目標達成を目指してもらうのが、この戦略です。

ネットゼロの企業による取り組み事例

ネットゼロの企業による取り組み事例

ネットゼロへの取り組みは、国だけでなく各民間企業も実施しています。下記よりその取り組みの事例を紹介しましょう。

大和ハウス工業株式会社

大和ハウス工業株式会社(本社:大阪市、社長:芳井敬一)は、SBTi(The Science Based Targets initiative)より日本の住宅業界・建設業界で初めて温室効果ガス(以下、GHG)排出量削減に関する目標において「SBTネットゼロ」の認定を取得しました。

 当社グループは環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」に基づき、創業100周年となる2055年までに、グループ、グローバル、サプライチェーンを通じて「環境負荷ゼロ」の実現を目指しています。

 その重点テーマとして、「気候変動の緩和と適応」を掲げ、事業活動におけるGHG排出量の削減を図っています。2018年には、世界の住宅・建設業界で初めて「SBT」(※1)・「EP100」(※2)・「RE100」(※3)の3つの国際イニシアチブに加盟し、省エネ活動を推進するとともに、再生可能エネルギーの発電や積極的な活用を図っています。2022年5月には、GHGの排出量削減に向けた取り組みを強化するため、第7次中期経営計画に合わせて新たな脱炭素目標を策定しました。

 そしてこのたび、当社グループの短期目標がSBTiより1.5℃水準の認定を受けるとともに、ネットゼロ目標もSBTiの認定を取得しました。

 今後も、気候危機というグローバルな社会課題の解決に向け、当社グループは一丸となって脱炭素化への取り組みを加速させます。

引用:日本の住宅・建設業界で初めて「SBTネットゼロ」認定を取得|大和ハウス工業株式会社

東急建設株式会社

当社事業においては、引渡し後の建物から排出されるCO2(Scope3)が非常に大きくなるため、工事を発注するお客様に対し、環境負荷の少ない資機材の提供やZEB・ZEH-Mの提案を積極的に行っています。ZEB・ZEH-Mに関しては、自社設計物件において2016年度から対応しています。2023年度は、4件のZEB設計物件(『ZEB』:1、ZEB Ready:2、ZEB Oriented:1)が竣工し、新たにZEB:8件を設計しました。技術研究所のZEB改修では、竣工から6年連続で76〜79%エネルギー消費量の削減を実現しています。またZEB竣工物件においては毎月の詳細項目(空調、換気、照明、給湯、昇降機、太陽光発電)の計測値を収集、設計値と実測値の比較検証を実施しており、エネルギー運用のサポートと得られたデータの蓄積および検証によるZEB提案・設計へのフィードバックをしています。加えてお客様のニーズに柔軟に対応するため、「ZEHデベロッパー」への登録を行い、ビルだけでなく住宅建築においても脱炭素化の取り組みを加速させています。

引用:気候変動リスクへの取り組み|東急建設株式会社

カーボンネガティブとは?

カーボンネガティブとは、大気中に排出される温室効果ガスの量よりも、吸収および除去される量が上回る状態のことです温室効果ガスの排出量と吸収量を実質ゼロにするカーボンニュートラルやゼロエミッションよりも、脱炭素が進んでいる状態です。

カーボンネガティブの実現のため、温室効果ガスを回収・吸収し,貯留・固定化することで大気中から除去するネガティブエミッション技術(NETs)が注目されています。米国や欧州では大企業がネガティブエミッション技術の開発に投資する動きも見られており、今後の普及が期待されています。

【ネガティブエミッション技術の例】

ネガティブエミッション技術 概要
BECCS バイオマスエネルギーの燃焼により発生したCO2を捕集・貯留する技術
DAC 大気中の温室効果ガスを直接捕集する技術。
回収した温室効果ガスを貯留する技術(CCS)との組み合わせはDACCS、燃料や化学品に利用することはDAC-Uと呼ばれる
土壌炭素貯留 バイオマスを土壌に貯蔵・管理する技術。
有機物の自然分解によるCO2発生を防ぐ
バイオ炭 有機物を熱分解により炭化しを土壌に埋設することにより、炭素を固定する技術
風化促進 玄武岩などの岩石を粉砕・散布し、風化を人工的に促進する技術。
風化の過程(炭酸塩化)でCO2を吸収する
海洋肥沃
(ブルーカーボン)
海洋に養分を散布することにより生物学的生産を促す技術。
大気中からのCO2の吸収量の増加を見込む
植林・再生林 樹木によるCO2吸収を促進する技術

参照:ネガティブエミッション技術の検討方針について|経済産業省

エネルギーの大部分を化石燃料に頼っている日本において、温室効果ガスの排出量を完全にゼロにすることは困難です。ネガティブエミッション技術の普及により、大気中に蓄積された温室効果ガスを除去できれば、ネットゼロやカーボンネガティブの実現に近づくでしょう。

なお、カーボンポジティブもカーボンネガティブと同義で使われています。「カーボンネガティブ=温室効果ガスの除去」に対して、「カーボンポジティブ=温室効果ガスの吸収」という考え方であり、どちらも同じ意味を示す言葉であることを覚えておきましょう。

まとめ

カーボンニュートラルやネットゼロは、温室効果ガスの排出量を吸収量で相殺することにより実質ゼロとすることです。それぞれ細かな定義の違いがあるものの、多くの場合は同義で使用されています。

建設業界においても、カーボンニュートラルやネットゼロの目標は、温室効果ガスの排出量を吸収量で実質ゼロにするという重要な取り組みです。日本の建設会社は、省エネや創エネ技術の導入を進めることで脱炭素経営を推進し、企業イメージの向上や資金調達のメリットを享受しています。

しかし、エネルギーの大部分を化石燃料に頼っている日本において、温室効果ガスの排出量をゼロにすることは困難です。温室効果ガスの排出量と吸収量を相殺するため、大気中の温室効果ガスを除去する「ネガティブエミッション技術」の開発が進められており、カーボンニュートラルやネットゼロの実現が期待されています。

この記事の監修

リバスタ編集部

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