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建築物省エネ法とは?届出対象や法改正による適合義務の拡大に関して解説

建築物省エネ法とは?届出対象や法改正による適合義務の拡大に関して解説

建築物省エネ法が改正されたことを耳にしたことがあるものの、その適合対象を明確に把握できていない方もいるのではないでしょうか。

当記事では建築物省エネ法に関して、適合や届出の対象など基礎を解説します。建築物省エネ法による表示制度に関しても説明するのでぜひ参考にしてください。

建築物省エネ法の概要

建築物省エネ法の正式な名称は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」です。建築物省エネ法は、建築物による消費エネルギー量を抑えることを目的としており、断熱性能や設備の性能向上、効率化を図ることで、住宅や建築物の省エネ対策を行うための法律です。

日本は、パリ協定を受けて2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。そのため、建築物省エネ法が改正された背景には、温室効果ガス削減目標の達成に向けた建築分野の脱炭素に関する取り組み強化があります。

建築物省エネ法では、建築物の省エネ性能の向上を図るため、「大規模非住宅建築物の省エネ基準適合義務等の規制」や「省エネ基準への適合表示および誘導基準に適合した建築物への容積率特例の誘導」の措置を一体化して講じています。

参照:国土交通省「建築物省エネ法の概要

2025年に省エネ基準への適合は義務化される

2022年に建築物省エネ法の改正が公布され、2025年から適合義務が拡大します。建設業が着目すべき改正内容としては、現行の建築物省エネ法の適合義務の対象が「300㎡以上の非住宅および住宅」から「全ての新築の住宅および非住宅」に変更になった点です。

改正による適合義務対象が拡大された背景には、2050年カーボンニュートラル実現に向けた地球温暖化対策への強化があります。国内エネルギー消費量の約3割にあたる建築物分野において、カーボンニュートラル実現への取り組みが必要とされているからです。

なお、建築物省エネ法の改正により、建築主や建築士への努力義務や住宅を新築する事業者を対象とした制度の対象拡大などが行われます。改正による変更は以下の表を参考にしてください。

【建築物省エネ法の改正によるおもな変更】

変更点 詳細
建築主の性能向上努力義務 施行日:公布の日から3年以内

<概要>

建築主に対する義務基準である省エネ基準を上回る省エネ性能の確保

国土交通省「建築物省エネ法について

建築士の説明努力義務 施行日:公布の日から3年以内

<概要>

建築士が建築主に対して行う、建築物の省エネ基準適合性に関する説明努力の義務付け

 

国土交通省「建築物省エネ法について

省エネ基準適合義務の対象拡大 施行日:公布の日から3年以内

<概要>

全ての建築物が適合義務対象に拡大

 

国土交通省「【建築物省エネ法第10条】省エネ基準適合義務の対象拡大について

適合性判定の手続き・審査 施行日:公布の日から3年以内

<概要>

適合義務対象の拡大に伴う審査の簡素・合理化

 

国土交通省「【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について

住宅トップランナー制度の拡充 施行日:公布の日から1年以内

<概要>

住宅を新築する事業者に対する省エネ性能の向上を勧告する「住宅トップランナー制度」において、制度の対象を分譲マンションにも拡大

 

国土交通省「住宅トップランナー制度(分譲マンション)に関する事業者向け説明会資料

エネルギー消費性能の表示制度 施行日:公布の日から2年以内

<概要>

消費者等が建築物の省エネ性能の把握や比較ができるようにするために、販売および賃貸事業者が建築物の省エネ性能を広告等に表示することを国が勧告、公表、命令する制度

 

国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度

建築物再生可能エネルギー利用促進区域 施行日:公布の日から2年以内

<概要>

再生可能エネルギー設備の設置促進が必要な区域について、市町村による促進計画の作成が可能になる

 

国土交通省「【建築物省エネ法第67条の2~第67条の6】建築物再生可能エネルギー利用促進区域および関連情報

建築物省エネ法の改正により変わった具体的な点とは?

建築物省エネ法は、1980年に創設された「省エネ基準」ではカバーできなくなった建築物に対する規制を強化することを目的に、2015年に制定された法律です。建築物省エネ法が誕生するまでは、断熱性能(Q値・μ値)や機密性能(C値)の基準が「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下  省エネ法)」によって定められていました。

【建築物省エネ法の変遷】

法律・省エネ基準
1979年 「省エネルギー法」制定
1980年 「省エネ基準(昭和55年基準)」創設
1992年 「新省エネ基準(平成4年基準)」への改正

●           断熱性能(Q値・μ値)基準強化

1999年 「次世代省エネ基準(平成11年基準)」への改正

●           断熱基準の強化、機密性能(C値)の適用

●           住宅性能表示制度創設

2006年 「改正省エネ法」

●           2,000㎡以上の住宅・非住宅に対する届出義務

2009年 住宅トップランナー制度の制定
2013年 「平成25年基準」への改正

●           新指標(UA値・ηA値)の導入、地域区分の細分化、C値基準削除

2015年 「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」公布

●           容積率特例創設

2016年 「平成28年基準※」誘導措置

※エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準 (平成28年経済産業省・国土交通省告示第1号)

2019年 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第4号)公布
2021年 建築物省エネ法改正施行(2019年公布)

「改正平成28年基準」

●           300㎡以上の建築物への適合義務

●           300㎡未満の住宅・非住宅を対象とした説明義務制度の創設

●           住宅トップランナー制度の対象事業者の追加

2022年 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)

省エネ法と建築物省エネ法の違いは2,000㎡以上の非住宅に求められていた「届出義務」が「適合義務」に変更になった点です。省エネ法と建築物省エネ法のいずれも2,000㎡以上の住宅および300㎡以上 2,000㎡未満住宅および非住宅に対しては「届出義務」がありました。

【2021年改正建築物省エネ法による適合義務の変更】

画像引用:国土交通省「建築物省エネ法について

建築物省エネ法は2019年と2022年に公布されています。 省エネ基準の届出義務(第19条)は2021年に施行された建築物省エネ法の改正によって、廃止され、全ての新築住宅・新築非住宅に省エネ適合義務が該当するようになりました。

参照:国土交通省住宅「建築物省エネ法 法令等の改正履歴

建築物省エネ法の対象となる建築物

建築物省エネ法の適合および届出対象となる建築物は、床面積が300㎡以上の住宅及び非住宅建築物の新築・増改築となります(2023年現在)。さらに、延床面積が300㎡未満の住宅を設計する際、建築士は建築主(施主)に対する説明義務があります。

建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律で義務付けられている「省エネ適合性判定(建築物エネルギー消費性能適合性判定) 」では、床面積が300㎡以上の住宅及び非住宅建築物の新築・増改築の際に建築物エネルギー消費性能確保計画(省エネ計画)の作成と、工事着手前に登録省エネ判定機関または所管行政庁で適合判定を受けることが建築主に対して義務付けられています。

なお、省エネ計画の届出を怠った場合、罰則の可能性もあります。届出は設計者が代行する場合も多いため、工事に着手する21日前までに居住地域の行政庁への提出を怠らないよう留意しましょう。

建築物省エネ法における評価基準

建築物省エネ法の評価基準は建物の用途によって異なります。

【建築物の種類別評価基準】

建築物の用途 都道府県
住宅 ・窓や外壁などの外皮性能(UAとηAC)を評価する基準

・設備機器等の一次エネルギー消費量を評価する基準

非住宅 ・窓や外壁などの外皮性能(PAL)を評価する基準

・設備機器等の一次エネルギー消費量を評価する基準

参照:国土交通省「改正建築物省エネ法の 各措置の内容とポイント

省エネ性能の評価において、住宅と非住宅いずれも設備機器等の一次エネルギー消費量を評価する基準の算出方法は同じです。しかし、住宅と非住宅では「窓や外壁など外皮性能を評価する基準」が異なります。

住宅用途の外皮性能は、断熱性能を示す「外皮平均熱貫流率(UA)」と日射遮蔽性能を示す「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)」によって評価されます。一方、非住宅の外皮性能は、建築物の窓際など温度が外気の影響を受けやすい「ペリメータゾーン」の年間熱負荷係数(PAL)で評価されます。

なお、外皮性能を評価する基準は地域によっても異なります。建築物省エネ法の評価基準は、建物の所在地域の基準値を確認してみてください。

【都道府県別の地域区分一覧表】

地域区分 都道府県
1,2 北海道
3 青森県、岩手県、秋田県
4 宮城県、山形県、福島県、栃木県、新潟県、長野県
5,6 茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、 大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、 熊本県、大分県
7 宮崎県、鹿児島県
8 沖縄県

参照:国土交通省「地域区分新旧表

建築物省エネ法による2つの表示制度

建築物省エネ法では、省エネに関する2つの表示制度があります。建築物のオーナーはこれらの表示によって建築物省エネ法への取り組みと建築物の利用価値を訴求でき、テナントなどの利用者はこれらの表示に基づいて入居先の物件を選定できます。

【建築物省エネ法による表示制度】

制度名 表示
建物の省エネ性能を表す表示

(第7条)

BELS

建築物エネルギー消費性能基準への任的表示(第41条) 基準適合認定マーク (eマーク)

画像出典:国土交通省「改正建築物省エネ法の 各措置の内容とポイント

建物の省エネ性能を表す表示(BELS表示制度)は、建築物の新築時に、設計時点での省エネ機能に関して 5段階評価で認証を受けたことを示せます。また、第41条の表示制度(基準適合認定マーク)は、建築物の改修時等に国が定める省エネ基準への適合を示すものです。

なお、基準適合認定マークの表示が可能になる建築物エネルギー消費性能基準適合認定は、既存建築物を対象としており、所管の行政庁(都道府県、市または区)によるものです。認定を受ける場合には建物が所在する行政庁に問い合わせてみてください。

建築物の脱炭素に向けた企業の取り組み事例

2050年カーボンニュートラル実現に向けた建築物分野での取り組みが求められるなか、建築物省エネ法は複数回にわたり改正が行われてきました。建築物省エネ法の改正により、届出対象となる建築物が拡大するなど建築業界でも脱炭素への取り組みは喫緊の課題となっています。

ここでは、建築物の脱炭素への取り組みを推進する企業を紹介します。

オリエンタル白石株式会社の事例

二酸化炭素( CO₂)の排出削減が急務となる中、当社ではセメントレスコンクリートおよびセメントミニマムコンクリートの開発に取り組んでいます。これは、コンクリートの主要材料であるセメント、水、砂、砂利において、一つは CO₂をこの材料の中に取り込むことによる有効性を検証すること、もう一つは製造過程において CO₂の排出量が多いセメントを極力使用せずに既存と同等以上の性能を有する材料、配合を開発することです。

セメントを用いないコンクリートとしてケイ酸ナトリウムや水酸化ナトリウムを用いた重合反応による硬化を図る開発も進めており、用途や対象地域によって材料を選択し、その強度や耐久性などを評価しながら実用化に繋げていきます。

参照:オリエンタル白石株式会社「環境

東亜道路工業株式会社の事例

当社では、環境に関する国際規格であるISO14001の全社認証を2008年12月に取得し、環境マネジメントシステムを活用して、環境問題に鋭意取り組んでおります。また、改正省エネ法の求める「年平均1%以上のエネルギー消費原単位の低減」を達成すべく、中長期計画を策定し省エネに取り組んでいます。

当社が受注した工事に、ICT施工技術(情報化施工)を活用することにより、生産性向上、品質確保、安全性向上、検測作業の省力化を図ります。また、情報化施工を活用することにより、機械使用時のCO2の発生を抑制し、環境保全に寄与します。

参照:東亜道路工業株式会社「環境との共生

世紀東急工業株式会社の事例

当社では、地球環境の保全が事業上の重要課題の一つであるという認識のもと、環境負荷軽減、環境保全への貢献に向けて、様々な取り組みを行っています。その一例には、長期的な展望も視野に入れた設備更新にあわせて実施される製造設備の機能向上、燃料の置き換え、太陽光発電設備の導入などがあります。

当社ではアスファルト合材工場が主なCO₂の排出元となりますが、そのほかにも、工事施工用の重機、オフィス、移動用車両などから排出されており、環境マネジメントシステムのなかで各部門が活動方針を定め、CO₂排出量の管理・削減に取り組んでおります。

参照:世紀東急工業株式会社「循環型社会・気候変動対策

まとめ

建築物省エネ法は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」のことを指し、住宅や建築物の省エネ対策を図るための法律です。建築物省エネ法の適合および届出対象となる建築物は、床面積が300㎡以上の住宅及び非住宅建築物の新築・増改築です。

2022年建築物省エネ法の改正が公布され、2025年以降新築の住宅および非住宅に適合が義務付けられることになります。改正の背景には2050年カーボンニュートラル実現に向けた建築物分野での取り組みの必要性が挙げられます。

また、建築物省エネ法では、省エネに関する2つの表示制度があります。これらの表示制度によって建築物のオーナーは、建築物省エネ法への取り組みと建築物の利用価値を訴求でき、テナントなどの利用者はこれらの表示に基づいて入居先の物件を選定できるようになっています。

 

この記事の監修

リバスタ編集部

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