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建築物の脱炭素に向けた取り組みを解説

建築物の脱炭素に向けた取り組みを解説

地球温暖化をはじめとする環境問題が注目される中で、建築業界でも脱炭素への意識が高まっています。建築物の脱炭素を目指すためには、どのような方法があるのか知りたい方もいるでしょう。

当記事では、建築物の脱炭素のために行われている取り組みを紹介します。企業の事例も紹介しているので、脱炭素への取り組みの参考にしてみてください。

建設業界で脱炭素が重要視される理由

国内のCO2排出の3分の1は住宅や建築関連から発生しているものです。

なかでも、建設工事現場における燃料燃焼から排出されるCO2排出量は、産業部門の建築機械による排出量は産業部門の排水量のうち1.4%を占めています。そのため、建築業界のCO2排出量は施工段階でいかに削減するかが重要視されています。

これらの対策として推進されているのが、ICT施工による作業効率化や低燃費型建設機械の導入です。

なお、住宅や建築物そのものからのCO2排出量を削減する取り組みとして、2025年4月1日には新築の住宅や非住宅に対して、太陽光などの再生可能エネルギーを活用したZEHやZEBへの適合が義務付けられます。

参照:国土交通省「建設現場における脱炭素化の加速に向けて

建築物省エネ法により新築や増築時の省エネ基準適合が義務化された

2022年に改正された建築物省エネ法によって、全ての新築住宅と新築非住宅と、新たに増築や改築を行う部分への省エネ基準の適合が義務化されました。

建築物省エネ法とは、建築物におけるエネルギー消費量の削減を図り、エネルギーの有効利用と脱炭素をはじめとする環境の保全を目的に制定された法律です。これまでは中規模以上の非住宅に限られていた省エネ基準の適合義務が、住宅や小規模の非住宅にも拡大しました。

また、既存の建築物の増築や改築を行う際も、省エネ基準適合義務の対象です。一定以上の断熱性能を持つ外壁や窓を施行することや、省エネ性の高い空調や照明設備を設置することにより、増改築部分の省エネ基準への適合が求められています。

省エネ基準を満たした建築物は、断熱性能やエネルギー効率に優れており、化石燃料由来のエネルギー消費を抑えられるため脱炭素につながります。大規模なビルや施設だけでなく、一般家庭でも省エネ基準の適合が義務化されることから、建築物全体の脱炭素が期待されます。

なお、改正された建築物省エネ法では、省エネ基準の適合義務以外にも、建築士が建築物の省エネ性能向上について建築主に説明する努力が義務化されました。建築物省エネ法について詳しく知りたい方は、国土交通省の公式HP「建築物省エネ法について」を確認してください。

脱炭素の実現に向けた建築業界の取り組み

建築物の脱炭素に向けて、建築業界ではさまざまな取り組みが行われています。

【脱炭素に向けた建築業界の取り組み】

・省エネ住宅の普及

・環境に配慮した建築素材の使用

・施工技術の開発

・設計や内装の工夫

建築物は、資材の運搬から建設工事、建築物の使用、解体までの複数の段階でCO2をはじめとする温室効果ガスが排出されています。建築物の設計手法や使用する資材、施工システムなどの技術の活用が建築業界全体の脱炭素の促進につながるでしょう。

省エネ住宅の普及

脱炭素の実現に向け、建築業界では省エネ住宅を普及させるための取り組みが行われています。ZEBや低炭素住宅などの基準に適合するよう省エネ性能の高い建築物を提供することで、冷暖房などのエネルギー使用による温室効果ガスの発生を低減できるためです。

たとえば、省エネ住宅導入のメリットを消費者にも理解してもらえるよう、省エネと快適な暮らしの両立をコンセプトとした商品を積極的に開発している住宅メーカーがあります。CO2の削減レベルに応じて、省エネ設備や太陽光パネルなどを導入した複数の商品を展開しているのが特徴です。

また、省エネラベルで快適性や経済性を消費者にもアピールしていくことで、省エネ評価の高い住宅の普及を促進しています。省エネラベルの評価によって、消費者だけでなく設計者や施工者、仲介者など幅広くインセンティブを付与する仕組みづくりも検討されています。

さらに、国土交通省、経済産業省、環境省の3省が省エネ住宅に関する補助金等の支援策を設けて省エネ住宅の普及に取り組んでいます。省エネ住宅を建てる際には導入コストが課題となる場合がありますが、補助金制度の充実により国内の省エネ住宅普及の後押しとなるでしょう。

環境に配慮した建築資材の使用

環境に配慮した建築資材を使用することも、建築物の脱炭素に向けた取り組みのひとつです。

建築物の脱炭素において、注目されている建築資材のひとつが木材です。木材は鉄などと比較して製造時のCO2排出が少ないことや、空気中のCO2を吸収する性質を持つことから、環境負荷の少ない建築資材とされています。

また、コンクリートの混和材にCO2を吸収する材料を使用し、セメント使用量を減らして製造時のCO2排出量も削減する「CO2吸収型コンクリート」も開発されています。歩車道境界ブロックやマンションの天井パネルなどへの使用実績があります。

鉄やコンクリートなどを使った建築資材の製造や廃棄には、多くのCO2が発生します。環境に負荷を与えにくい建築資材を使用することで、建築物に関わるCO2排出量の削減につながるでしょう。

施工技術の開発

脱炭素に向けた施工技術の開発も進んでいます。建設現場では建設機械の使用によって多くのCO2が排出されているため、施工技術の開発により、建設機械や資材の輸送に掛かるエネルギーの使用を抑えることで建築物の脱炭素を目指しています。

たとえば、情報通信技術を利用して建築作業の効率化を目指す「ICT施工」を活用して、ドローンで撮影した映像をもとに3D測量を実施している企業もあります。作業効率や安全性に加え、建設機械の使用時間を短縮してCO2の排出を抑えられることから建設現場での脱炭素にも貢献します。

また、建築資材の一部を工場で組み立てておくプレハブ工法も注目されています。建築資材を運搬するための車両や、建築現場での建設機械の使用時間が短縮され、CO2排出量を削減できます。

また、国土交通省では建設業の脱炭素への技術研究開発を推進・支援しており、建築分野のさらなる脱炭素の普及が期待されています。

設計や内装の工夫

設計や内容の工夫により、脱炭素を目指す取り組みも進められています。

脱炭素につながる設計手法のひとつに「パッシブデザイン」があります。パッシブデザインとは、機械を使わずに太陽の熱や光、風などの自然のエネルギーを建物に取り入れる手法であり、暖房や換気などに使うエネルギーを低減できることから建築物の脱炭素に有効です。

たとえば、家屋に高窓を設置して効率的に空気の循環を行う方法があります。天井付近に溜まった暖かい空気が外に流れやすく、建物の下部にある窓からも外気が入り効率的に換気ができる設計となります。

また、夏と冬での太陽の位置の違いを利用した庇(ひさし)を設ける方法もあります。太陽が高い位置にある夏だけ日除けとして機能する角度に調整されており、冬は日差しを遮ることなく光と熱を室内に取り込むことが可能です。

ほかにも、窓辺に蓄熱性の高い素材を使用することで室内の暖房に利用するなど、さまざまな手法が考案されています。パッシブデザインは脱炭素に向けた省エネへの取り組みに加え、機械に頼らず快適な暮らしも実現する設計手法といえるでしょう。

建築物の脱炭素に向けた企業の取り組み事例

建築物の脱炭素に向け、独自の取り組みを行っている企業の事例を紹介します。

【建築物の脱炭素に向けた企業の取り組み事例】

企業名 取り組み内容
株式会社松村組 ・2025年を期限とした「顧客へのZEB・ZEH-M化開発支援強化中期目標」の設定
飛島建設株式会社 ・「施工段階」「オフィス活動」におけるCO2削減量の目標設定と実行
東鉄工業株式会社 ・「施工段階のCO₂排出量」「産業廃棄物の最終処分率」「再生バラスト出荷量」に関する目標値を設定

・「効率的な重機械使用計画の策定」「建設発生土の再利用や搬出距離の短縮」「重機械省燃費運転教育・指導」「アイドリングストップ」によるCO₂排出量の削減

株式会社松村組の事例

当社は、創業以来「経営理念」のもと、お客様や様々なステークホルダーの皆様からの信用・信頼に応える「企業活動(CSR)」を実践しております。さらに、持続可能な企業として、企業活動を通じて取組むべき重要推進課題を抽出し、その推進方策として「SDGs活動/働き方改革/脱炭素社会の実現」を掲げ、目標達成シナリオ及び指標を設定し、「私たちのありたい姿」を目指し挑戦を続けていきます。

当社は、サスティナビリティ方針のもと、2050年度までに脱炭素社会の実現を掲げ、ZEB・ZEH-M化の開発支援強化に取り組んでいます。

参照:株式会社松村組「サステナビリティ

飛島建設株式会社の事例

当社ではトビシマSXに向けた取組の一環として社会のサステナビリティへ貢献するための課題を抽出し、優先的に取り組むべき重要課題(ESG・SDGsマテリアリティ)を決定、「脱炭素の推進」を優先的に取り組むべき重要課題の一つであると位置づけています。

気候変動リスクの管理については「リスクマネジメント委員会」において各部門における気候変動リスクの事業への影響の確認を行うとともに、定期的にモニタリングを実施し必要な対策が講じられているかについて確認していきます。

「リスクマネジメント委員会」での検討内容は社長を委員長とする内部統制委員会で組織全体のリスク管理プロセスに統合され、取締役会に報告されます。

参照:飛鳥建設「TCFD提言に基づく気候関連情報の開示

東鉄工業株式会社の事例

建設業の社会的役割に鑑み、「低炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向け、環境関連法規の遵守、環境負荷の低減、環境汚染の予防など環境要注カード等を活用し、環境の保全に取り組んでおります。

中期目標を掲げたうえで毎年環境保全計画を策定し、取組み事項を現場と共有化することにより活動内容のレベルアップを図り、全社一丸となって継続的に推進しております。

当社における施工段階のCO₂排出量は、重機械の軽油の消費によるものが約9割を占めております。 効率的な重機械使用計画の策定、建設発生土の再利用や搬出距離の短縮、重機械省燃費運転教育・指導、アイドリングストップ等により、CO₂排出量の削減に努めております。

参照:東鉄工業株式会社「環境への取組み | サステナビリティ」

建築物の脱炭素を促進するカーボンニュートラル対応試行工事

建設現場における脱炭素を促進するため、建築物の工事契約時や完成時に脱炭素に関する評価を組み込んだ「カーボンニュートラル対応施行工事」の導入が始まっています。

カーボンニュートラル対応試行工事は、建設機械の省エネ化や環境に配慮した資材の使用や現場作業の効率化などにより、建築物全体における脱炭素を目的とした取り組みです。カーボンニュートラル対応試行工事で評価を受けると、建築工事に脱炭素への配慮を行ったことをアピールできます。

カーボンニュートラル対応試行工事では工事発注者や施工者だけでなく、資材メーカーや建設機械メーカー、運送業者なども連携して取り組んでいく必要があります。カーボンニュートラル対応試行工事を通じて、建設業界における脱炭素への取り組みが広まることで、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されます。

まとめ

2022年に改正された建築物省エネ法により、建築物の新築や増改築の際の省エネ基準への適合が義務化されました。建築物の脱炭素に向け、さまざまな技術の開発や企業の取り組みが進められています。

建築業界では、ZEBをはじめとする省エネ住宅の普及のほか、環境に配慮した建築資材の利用やデザインの工夫によって脱炭素を目指す取り組みが進められています。資材の製造から解体までのライフサイクルにおいて、複数の段階で排出される温室効果ガスの削減が可能です。

現在は公共施設を中心に、脱炭素の技術を取り入れた建築物が広まっています。建設現場での脱炭素を促進するための「カーボンニュートラル対応施行工事」の導入も始まり、資材メーカーや運送業者など建築に関わるさまざまな企業を巻き込んだ脱炭素への取り組みが期待されています。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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