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排出量取引制度とは?2026年義務化の対象企業やメリットを解説!

排出量取引制度とは?2026年義務化の対象企業やメリットを解説!

2050年カーボンニュートラル実現に向けて、排出量取引制度が2026年度から本格的に義務化されます。年間CO2排出量10万トン以上の企業が対象となるため、建設業界にとっても重要な制度変更です。

本記事では排出量取引制度の基本概念、義務化スケジュール、対象企業の定義、メリット・デメリットを詳しく解説します。キャップアンドトレード方式とベースラインアンドクレジット方式の違いや、経済的インセンティブの仕組み、カーボンリーケージなどの課題についても分かりやすく紹介していますので、脱炭素経営を検討されている建設業界の方は参照にしてみてください。

排出量取引制度とは

排出量取引制度とは

排出量取引制度は、CO2の削減を効率的に進めるための市場を促す制度です。排出量取引制度には環境政策としての狙いがあり、複数の取引方式が存在し、気候変動対策の必要性から生まれた歴史的経緯があります。

制度の根本的な目標、実際の運用方法、導入に至った社会的背景について詳しく解説します。

排出量取引制度の目的

排出量取引制度は、CO2削減を市場メカニズムで推進する環境政策です。制度の最大の目的は、2050年カーボンニュートラル実現への道筋を確実にすることにあります。

排出量取引制度は、単純な企業負担増加ではなく、バランスの取れたアプローチを採用していることが特徴です。

CO2排出量の多い企業には2028年度を目途とした化石燃料賦課金の導入が予定される一方で、政府は20兆円規模の大規模な脱炭素投資支援を提供します。

また、企業の早期設備投資を効果的に誘導し、日本全体の脱炭素を加速させることも目的の一つです。排出量取引制度は規制と支援の調整により、持続可能な社会への転換を実現する重要な政策手段として位置づけられています。

出典:外務省/「排出量取引制度」って何?脱炭素の切り札をQ&Aで 基礎から学ぶ

排出量取引の方式

排出量取引には、次の2つの主要な方式が存在します。

方式 特徴
キャップアンドトレード方式 政府や自治体がCO2排出量の上限を設けて、各事業者に対して排出量を割り当てる
ベースラインアンドクレジット方式 CO2の削減事業を実施した場合と実施しなかった場合で排出量を比較し、差分をクレジット化

キャップアンドトレード方式は、政府や自治体が排出上限を設定し、各事業者に排出枠を割り当てる仕組みです。明確な削減目標と制度的強制力により、確実な排出削減を実現できる特徴があります。

一方でベースラインアンドクレジット方式は、事業者の自主的な環境貢献を評価する制度です。削減事業の実施前後で排出量を比較し、その差分をクレジットとして発行します。

環境省、経済産業省、農林水産省が共同運営するJクレジット制度が代表例で、企業の積極的な環境活動に対してインセンティブを提供します。

排出量取引制度の背景

排出量取引制度の背景には、深刻化する地球温暖化と気候変動への国際的な需要があります。工業化以降、人類の経済活動が飛躍的に拡大し、石油や石炭などの化石エネルギー消費量が急激に増加しました。

現在、CO2の削減は一国の問題を超えた国際的な共通課題です。異常気象の頻発、海面上昇、生態系の破壊など、気候変動の影響は全世界に及んでおり、緊急かつ効果的な対策が求められています。

排出量取引制度は、市場メカニズムを活用して効率的かつ確実な排出削減を実現する革新的な政策手段として注目されています。

排出量取引制度はいつから義務化となるか

排出量取引制度はいつから義務化となるか

排出量取引制度の義務化は、日本の脱炭素政策において重要な転換点を示しています。制度導入に向けては段階的なアプローチが採用されており、2026年度を起点とした本格的な義務化が予定されています。

制度構築に至るまでの経緯と、具体的な義務化スケジュールについて詳しく解説しますので参照してみてください。

排出量取引制度のこれまでの流れ

排出量取引制度の導入に向けては、段階的な枠組みが進められています。2023年にGXリーグが発足し、脱炭素実現と国際競争力強化を両立させる企業群の連携基盤が確立されました。

GXリーグは、グリーントランスフォーメーションを主導する先進企業による自主的な取り組みとしてスタートし、現在では700社を超える企業が参加する大規模なプラットフォームへと発展しています。

参加企業は各々が2025年度までの具体的なCO2削減目標を設定し、積極的な削減活動を展開しています。

出典:GXリーグ/参画企業一覧

2026年度から段階的に義務化

2026年4月を起点として、日本の排出量取引制度は義務化段階に移行する予定です。一定規模以上の排出事業者を対象とした強制的な参加により、CO2削減に向けた規律強化と公平性・実効性の高い制度運用が本格化します。

さらに、2033年度からは発電部門への本格的な制度拡充が計画されています。脱炭素実現の核心となる発電事業者に対して、段階的な有償オークション制度を導入し、排出枠の市場取引を通じた脱炭素を推進する予定です。

オークション方式により、幅広い企業がCO2排出量に応じた適正なコストを公平に負担する仕組みが構築されます。

出典:経済産業省/排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針

2026年に義務化される排出量取引制度の対象企業

2026年に義務化される排出量取引制度において、どの企業が対象となるかは重要な焦点です。義務化の影響範囲を把握するため、対象となる企業数の予測も政策立案において大事な要素となります。

制度適用の具体的な基準と、日本経済全体に与える影響規模について詳しく解説します。

対象企業の定義

2026年から義務化される排出量取引制度では、年間CO2排出量10万トン以上の法人が対象企業として定義されています。

対象企業には義務が課せられ、毎年度の排出実績に相当する排出枠の償却が必要です。償却制度により、企業は自らの排出量に対して確実な責任を負うことが避けられません。

排出枠の割当量は画一的ではなく、主要産業分野ごとの業種特性を十分に考慮した仕組みが予定されています。生産量あたりの排出量基準であるベンチマークを基準とすることで、各業界の実情に即した公平な制度運用が実現されます。

出典:内閣官房GX実行推進室/GX実現に資する排出量取引制度の検討の方向性

対象となる企業数の予測

排出量取引制度の対象企業数は、制度発表時点での推計によると300~400社程度と見込まれています。対象となる企業数の規模は一見限定的に感じられますが、実際には日本全体のCO2排出量の約60%をカバーする広い範囲となっていることが特徴です。

対象企業の選定基準は、国内外の制度との整合性を重視して慎重に設定されます。既存の省エネ法や温室効果ガス排出抑制法との連携を図りつつ、EUや韓国などの先進的な排出量取引制度の規模を参照先として適切な範囲が決定される予定です。

日本は、比較的少数の大規模排出事業者が国全体の排出量の大部分を占めているため、限定的な企業数への制度適用でも高い政策効果が期待できます。

出典:内閣官房GX実行推進室/GX実現に資する排出量取引制度の検討の方向性

排出量取引制度のメリット

排出量取引制度のメリット

排出量取引制度には、次のメリットがあります。

・経済的なインセンティブが生まれる
・環境目標達成に貢献できる
・脱炭素につながる
・企業の取り組みが促進される
・CO2削減費用を軽減できる

それぞれのメリットの内容を詳しく解説します。

経済的なインセンティブが生まれる

排出量取引制度のメリットは、環境保護と経済活動を両立させる経済的インセンティブの創出です。制度により排出権市場が形成され、排出権そのものが企業にとって貴重な資産として位置づけられます。

企業は排出権の売買を通じて直接的な利益を獲得できる機会を得ると同時に、排出権価格の上昇により排出削減への投資が経済的に合理的な選択となり得ます。市場メカニズムを通じて、従来の規制一辺倒では実現困難だった自発的な環境改善行動を促進することが目的です。

制度が、企業の技術革新と効率化に対する強力な動機付けとして機能することも注目すべきポイントです。

環境目標達成に貢献できる

排出量取引制度のメリットとして、環境目標達成への確実な貢献も挙げられます。排出量取引制度の特徴は、達成すべき目標が極めて明確に設定されていることです。国や産業部門全体で策定された削減目標を基盤として、各企業や事業所に対して具体的な排出枠が配分される仕組みです。

各企業には明確な排出量上限が定められるため、目標設定のあいまいさが排除され、企業にとって達成すべき課題が明確化します。

また、目標が数値化されていることで、各企業や事業所が目標達成に向けた具体的なアクションプランを策定しやすくなることもメリットの一つです。

脱炭素につながる

排出量取引制度は、脱炭素の推進においても重要な役割を果たします。CO2排出量が集中する産業部門に重点的にアプローチすることで、社会全体の脱炭素を効果的に加速させられることがメリットです。

対象事業者にとってCO2排出量の即座な削減は現実的に困難な場合もありますが、制度の真価は長期的な効果にあります。企業は継続的に排出削減方法を模索し、その過程で蓄積されたノウハウを企業間で共有することが重要です。

ノウハウ共有により、産業全体の技術革新と削減手法の普及が促進されることが期待されます。即効性よりも持続的な改善プロセスを重視することで、日本の産業構造全体を脱炭素型へと転換させる基盤が構築されます。

企業の取り組みが促進される

排出量取引制度のメリットの一つは、企業の自主的な環境改善への取り組みを効果的に促進することです。排出量取引制度では企業が排出権を自ら購入できる仕組みが整備されており、市場メカニズムを通じた柔軟な対応が可能です。

排出量削減への投資にコストがかかっても、排出権価格の上昇などによる将来的なメリットを見込める企業は、積極的に削減活動に取り組みます。経済的インセンティブにより、規制による強制ではなく、企業自身の戦略的判断として環境負荷低減が選択されることが見込まれます。

市場原理を活用した仕組みにより、持続可能で効率的な脱炭素への企業参加が実現し、社会全体の環境目標達成が加速されていくことがメリットです。

CO2削減費用を軽減できる

排出量取引制度は、企業のCO2削減にかかる費用負担を効果的に軽減できることもメリットです。自社での削減努力に加えて、排出枠に余剰がある他の企業や事業所から排出枠を購入することが認められており、削減手段の選択肢が拡大されています。

制度の柔軟性により、企業は景気動向や経営状況に応じて最も効率的な削減方法を選択できます。自社での設備投資による削減が困難な時期には排出枠購入を活用し、投資余力がある際には積極的な削減技術導入を進めるなど戦略的な対応が可能です。

排出量取引制度の課題

排出量取引制度には、カーボンリーケージの問題と排出枠設定の難しさの課題があります。それぞれどのような課題かを解説しますので、自社の取り組みを進めるにあたって参照してみてください。

カーボンリーケージの問題

排出量取引制度における重要な課題として、カーボンリーケージの問題があります。カーボンリーケージは、環境規制の厳しい国で事業を行う企業が、規制の緩やかな国へ移転してしまう現象です。

企業がコスト削減を優先して環境対策の緩い国へ事業を移転すれば、地球全体での排出量は結果的に増加し、CO2削減の目的が損なわれるリスクがあります。

すでに排出量取引を導入しているEUでは、カーボンリーケージリスクの高い産業に対しては排出枠を多めに設定するなど、産業の国外流出を防ぐ配慮が行われています。日本においても、国際競争力の維持と環境目標達成のバランスを取る制度設計が重要な課題です。

排出枠設定の難しさ

排出量取引制度における困難な課題の一つが、適切な排出枠設定の難しさです。排出枠設定は制度の成否を左右する重要な要素でありながら、バランスの取り方が極めて複雑です。

排出枠を厳格に設定すると、各企業や事業所のCO2削減費用負担が大幅に増加し、経営への深刻な影響が予想されます。過度な負担は企業の競争力を損ない、場合によっては事業継続そのものを困難にする可能性があります。

一方で排出枠を緩やかに設定すると、自助努力による削減投資を行わず、単純に排出枠購入のみで目標達成を図る企業が現れることが懸念点です。この場合、制度本来の技術革新促進や削減文化醸成という効果が失われます。

まとめ

まとめ

本記事では排出量取引制度について解説しました。2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2026年度から年間CO2排出量10万トン以上の企業を対象とした義務化が予定されており、建設業界でも制度対応が必要です。

経済的インセンティブによる削減促進や明確な目標設定といったメリットがある一方で、カーボンリーケージや排出枠設定の難しさの課題も存在します。建設業界では設備投資や技術革新を通じた効率的な削減戦略の構築が重要となり、制度を活用した持続可能な事業運営が求められています。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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