建設業界において、建設機械からの排出が国内産業部門の1.7%を占めています。このため、脱炭素社会の実現に向けて建設機械のCO2排出量削減が課題となっています。
本記事では、建設機械の脱炭素に向けた具体的な取り組みや、低炭素建設機械の種類、普及を阻む課題について解説します。また、ハイブリッド式や燃料電池式など次世代技術の最新動向も解説していますので、建設業における環境対応やコスト削減を検討されている方は参照してみてください。
目次
建設機械分野のCO2排出量の現状

建設機械分野におけるCO2排出は、日本の産業部門全体の約1.7%を占めており、脱炭素社会の実現に向けて無視できない課題です。これまで国土交通省は、ICT技術を活用した施工の効率化や燃費性能の改善を通じて、排出削減に取り組んできました。
一方で、脱炭素の目標を達成するためには、段階的な改善だけでは限界があります。従来のディーゼルエンジンなどの動力源から、電動化や水素燃料など、根本的に異なる動力システムへの転換が求められているのが現状です。
建設機械は一台あたりの稼働時間が長く、燃料消費量も大きいため、動力源を見直すことで大幅な排出量削減効果が期待できます。短期的な効率改善と並行して、中長期的な視点で抜本的な技術革新を進めることが、建設分野における脱炭素の重要な要素です。
出典:国土交通省/令和5年度 建設施工の地球温暖化対策検討分科会
建設機械のCO2排出量削減に対してできること

建設機械のCO2排出量を削減するためには、さまざまなアプローチを組み合わせた取り組みが不可欠です。直接的な方法として、電動式やハイブリッド式などの低炭素建設機械への切り替えが挙げられます。
さらに、機械本体の製造段階から環境負荷を抑えるため、低炭素素材を積極的に採用することも重要な施策です。企業の努力に加えて、国土交通省が策定した脱炭素アクションプランに沿った業界全体での取り組みを進めることで、より効果的な排出削減が実現できます。
建設機械のCO2排出量削減に対してできることについて解説します。
低炭素建設機械の導入
建設業におけるCO2排出量増加の要因は、建設機械の使用にあります。化石燃料を動力源とするエンジンが主流だった建設機械業界でも、脱炭素への対応が本格的に始まっています。
近年ではリチウムイオンバッテリーを搭載した電動油圧ショベルや掘削機など、化石燃料に依存しない次世代の建設機械が相次いで市場に投入されつつある状況です。低炭素建設機械は、稼働時の排出量削減だけでなく、騒音や振動の低減など副次的なメリットも期待されています。
ただし、現時点では導入コストの高さや充電インフラの整備など、普及に向けた課題も残されています。
低炭素素材の使用
建設現場における脱炭素では、使用する素材や工法を見直すことで大きな削減効果が得られます。特に注目されている技術の一つが低炭素型コンクリートの活用です。
従来のコンクリートは製造過程で多量のCO2を排出していましたが、低炭素型コンクリートはセメントの一部または大部分を高炉スラグやフライアッシュなどの産業副産物に置き換えることで、製造時の環境負荷を抑えられることが特徴です。また、プレキャスト工法を採用することも効果的な手段です。
プレキャストは橋脚などの部材をあらかじめ工場で製作してから現場へ運搬するため、現場での施工期間が短縮されます。結果、建設機械の稼働時間が減り、排出されるCO2も削減できる仕組みです。
つまり、素材自体の低炭素化と施工プロセスの効率化を組み合わせることで、建設工事全体の環境負荷を抑えられます。
国土交通省が示す脱炭素アクションプラン
国土交通省は建設分野の脱炭素を加速させるため、具体的な行動計画を打ち出しています。2025年4月に公表されたアクションプランでは、CO2排出量の各段階に応じた先導的な取り組みのロードマップが示されました。
計画の核となるのが、国が発注する直轄工事において、CO2排出量を削減できる建設機械や脱炭素コンクリートの使用を原則化する方針です。国土交通省が直轄工事で率先して脱炭素に取り組む背景には、民間を含む建設業界全体の変革を促す狙いがあります。
公共工事で先進的な技術や素材の採用が標準化されれば、それが呼び水となって民間工事でも同様の取り組みが広がることが期待されます。国が発注者として環境配慮を徹底することで、業界全体の意識改革と技術革新を推進し、建設分野における脱炭素社会の実現を目指している状況です。
出典:国土交通省/国土交通省土木工事の脱炭素アクションプランを公表しました!
建設機械のCO2排出量削減が進まない理由

建設機械の脱炭素が重要であることは認識されているものの、実際の普及には多くの障壁が存在します。技術的な課題として、電動化に必要な発電機やバッテリーのサイズが建設機械と適合しない問題があります。
また、過酷な現場環境に耐えうる耐久性を担保しながら、既存のディーゼル機械と競争できる価格帯に抑えることも課題です。ここでは発電機のサイズ問題、耐久性とコストの問題について解説します。
発電機のサイズ問題
建設機械のCO2排出量削減を阻む課題の一つが、発電機のサイズ問題です。電動建設機械への給電方法には、発電機からケーブルで送電する方式と、機械本体にバッテリーを搭載する方式の2種類があります。
発電機方式では、モーターの特性上、起動時に通常運転時を大幅に上回る電流が流れるため、瞬間的な電力需要に対応できる大容量の発電機を用意しなければなりません。そのため、大型建設機械になるほど必要な発電機も巨大化し、限られた工事現場のスペースを圧迫してしまうことが課題です。
建設現場では資材置き場や作業エリアの担保も重要であり、大型発電機の設置場所を担保することが新たな制約となりかねません。電動化による環境性能の向上と、現場での実用性を両立させることが、建設機械の脱炭素における重要な技術的課題の一つです。
耐久性とコストの問題
建設機械のCO2排出量削減が進まない背景には、コストと耐久性の課題があります。自動車分野では電動化やハイブリッド化が急速に進んでいますが、建設機械は生産台数が自動車に比べて圧倒的に少なく、量産効果が働きにくいため、電動化に伴うコストが高額になりがちです。
さらに、従来のディーゼルエンジン搭載機は20年以上の長期稼働も珍しくなく、過酷な現場環境でも安定した性能を発揮してきた実績があります。一方で、電動建設機械は市場投入されてからの歴史が浅く、長期使用における信頼性や耐久性のデータが十分に蓄積されていません。
建設事業者にとって機械は重要な投資であり、実績の乏しい新技術への移行には慎重にならざるを得ないのが現実です。
建設機械のCO2排出量削減に対する取り組み

建設機械のCO2排出量削減に対する取り組みとして、次の方式が注目されています。
- ハイブリッド・エンジン式
- 蓄電池式
- 燃料電池式
- バイオ燃料式
それぞれの方式の特徴について解説します。
ハイブリッド・エンジン式
ハイブリッド重機は、エンジンと電動モーターを組み合わせた動力システムを採用することで、燃費向上と環境負荷低減を両立した建設機械です。自動車分野では既に主流となっている技術ですが、建設機械においても本格的な普及が始まっています。
特に油圧ショベルでは、ブームを下げる際に発生するエネルギーを電気に変換して蓄え、次の動作に活用する回生システムが搭載されており、エネルギーの無駄を最小限に抑えています。
エンジンとモーターを状況に応じて最適に使い分けられるため、従来型と比べて大幅な燃料削減が実現することが特徴です。ただし、電動モーターやバッテリー制御装置などの追加機器が必要なため、導入時の初期投資は従来機よりも高額になる課題もあります。
蓄電池式
蓄電池式建設機械は、従来のエンジンではなく、リチウムイオンバッテリーなどの蓄電池を動力源として稼働する建設機械です。日立建機は2000年代から電動化技術の開発に注力し、業界に先駆けて蓄電池駆動式ショベルを市場投入してきました。
また、コマツは商用車や産業用車両向けのリチウムイオン電池を手がけており、米国蓄電池メーカーを買収し、電動化時代における安定的なバッテリー調達体制の構築を目指しています。
燃料電池式
燃料電池式建設機械は、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する燃料電池を動力源とし、CO2を排出せず稼働できる技術です。建設機械分野でも水素活用の試みが本格化しており、コマツは世界初となる最大積載量約92トンの大型ダンプトラックに水素エンジンを搭載した実験車両を開発し、実証実験に着手しました。
さらに中型油圧ショベルのコンセプトモデルも開発を進めています。燃料電池式のメリットは、貯蔵・搬送が可能な水素をエネルギー源とすることで、電力網から離れた遠隔地でも充電インフラの制約を受けずに運用できる点です。バッテリー式では困難だった人里離れた現場での中型・大型電動重機の活用のハードルが下がります。
バイオ燃料式
バイオ燃料式は、廃食用油や植物性油脂を原料とするバイオディーゼル燃料や水素化植物油などを、従来の軽油に代えて建設機械の燃料として使用する方式です。既存のエンジンを大きく改造することなく利用できる点が特徴で、比較的導入のハードルが低い脱炭素手段として注目されています。
2023年4月には、東急建設が廃食用油を原料とする三和エナジーのバイオディーゼル燃料を、東京都内の土木施工現場の発電機に実際に採用しました。バイオ燃料は、食品廃棄物などを有効活用しながらCO2排出量を削減できるため、循環型社会の構築にも貢献する技術として期待されています。
建設機械のCO2排出量削減に関する事例紹介

建設機械のCO2排出量削減に関する事例として、2社の事例を紹介します。自社の取り組みの際に参照してみてください。
鹿島建設株式会社
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出典:民間初、自動運転レベル4の運行許可を取得|2024.6.26|鹿島建設株式会社
株式会社 小松製作所
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出典:-安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場の実現を加速- 水素燃料電池を搭載した中型油圧ショベルのコンセプトマシンを開発 実証実験を開始|2023.5.12|株式会社 小松製作所
まとめ

本記事では、建設機械分野におけるCO2排出量削減の現状と、脱炭素に向けた具体的な取り組みについて解説しました。建設機械からの排出は国内産業部門の1.7%を占めており、脱炭素達成には抜本的な動力源の見直しが不可欠です。
現在、低炭素建設機械の導入、低炭素素材の使用、国土交通省のアクションプランなど、多角的なアプローチが進められています。一方で、発電機のサイズ問題や耐久性・コストの課題により普及は道半ばですが、建設業界全体での脱炭素実現に向けた環境は着実に整いつつあります。
建設業における環境対応やコスト削減を検討されている方 は、ぜひ参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。








