温室効果ガスは地球温暖化の主要因として世界的な課題となっており、建設業界においても排出削減が重要な経営テーマとなっています。
本記事では温室効果ガスの基礎知識から種類、増加している原因、建設現場で実践できる具体的な削減対策について解説します。また、大手企業による先進的な取り組み事例も紹介していますので、脱炭素に向けた施策を検討している建設業の方は参照してみてください。
目次
温室効果ガスとは

温室効果ガスとは、地球の気温を維持する重要な役割を担う大気中の成分です。英語ではGreenhouse Gasと表記され、GHGの略称でも知られています。
温室効果ガスが重要視される理由は、太陽から届く赤外線を吸収して再放出する特性にあります。CO2やメタンなどの種類があり、地表付近に熱エネルギーを留める働きをすることが特徴です。熱エネルギーを留める作用により、地球全体の温度が生物にとって適切な範囲に保たれます。一方で、温室効果ガスの量が増えると、地球全体の温度が上昇してしまい地球温暖化を招きます。
建設業では、施工時の機械稼働や資材製造過程で多くの温室効果ガスが発生します。近年では環境負荷の低減が求められており、排出量の把握と削減対策が重要な経営課題です。適切な理解に基づいた対策の実施が、持続可能な建設活動の実現につながります。
温室効果ガスの種類
温室効果ガスにはいくつかの種類が存在し、それぞれ異なる特性と発生源を持っています。各ガスの性質や排出メカニズムを正しく把握することは、効果的な削減につなげるためにも重要です。また、それぞれの温室効果ガスには地球温暖化係数があり、同じ重さのCO2と比較してどれだけ地球温暖化に寄与するか数値化されています。温室効果ガスの種類について解説します。
| 温室効果ガス | 地球温暖化係数 |
| CO2 | 1 |
| メタン | 28 |
| 一酸化二窒素 | 265 |
| ハイドロフルオロカーボン | 4-12,400 |
| パーフルオロカーボン | 6,630-11,100 |
| 六ふっ化硫黄 | 23,500 |
| 三ふっ化窒素 | 16,100 |
出典:環境省/算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧
CO2
CO2は、温室効果ガス全体の多くを占める最も重要な成分です。環境省が公表するIPCC第6次評価報告書では、温室効果ガス排出量全体に対して、CO2の地球温暖化への寄与割合が75%に達することが示されています。CO2の地球温暖化係数は最も低い1ですが、他の温室効果ガスに比べて大量に放出されているため、地球温暖化への寄与は最も高くなっています。
CO2が注目される最大の理由は、地球温暖化への影響度の高さです。化石燃料を燃やす際に大量発生するため、建設機械の稼働や資材運搬、暖房設備の使用など、建設業の日常的な活動と密接に関わっています。
さらに深刻な問題として、世界規模での森林減少が挙げられます。本来ならCO2を吸収するはずの樹木が失われ続けているため、大気中の濃度上昇に歯止めがかからない状況です。
建設プロジェクトにおいても、排出量の可視化と削減目標の設定が急務となっており、環境配慮型の工法選定や省エネ機械の導入が求められています。
出典:環境省/気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル
メタン
メタンは、炭素原子1個と水素原子4個で構成される化合物で、都市ガスの主要成分として広く利用されています。
メタンは、酸素が乏しい環境下で有機物が分解される際に生成されやすい性質を持っています。水田での稲作や家畜が消化の過程で行う反芻活動、さらに家畜排泄物の処理過程など、農業分野から多く排出されていることが特徴です。
建設業との関わりでは、建設残土や有機性廃棄物の不適切な管理、埋立地での分解プロセスなどが発生源です。CO2に比べて排出量自体は少ないものの、温室効果への寄与が高いため、適切な管理が求められます。現場における廃棄物の適正処理や、メタンガス回収システムの導入が効果的な対策です。
一酸化二窒素
一酸化二窒素は、排出量に対して温暖化への影響度が極めて高い温室効果ガスです。一酸化二窒素が重視される理由は、地球温暖化係数が265と高い数値にあるためです。人為的に発生する温室効果ガス全体における地球温暖化への寄与割合はメタンに次ぐ6.2%に過ぎませんが、わずかな排出量でも大きな環境負荷をもたらします。
発生源を見ると、大気中の約57%が海洋や土壌など自然由来で、残り43%が人間活動によるものです。さらに、大気中での寿命が約121年と極めて長い点も特徴です。一度排出されると長期間にわたって温室効果を及ぼし続けるため、早期の削減対策が求められています。
少量でも影響が大きく、かつ長期間残留する性質から、排出抑制の重要性が高いガスといえます。
出典:気象庁/展示室5 大気中一酸化二窒素濃度の変動とその要因
フロン類
フロン類は、炭素とフッ素が結合したフルオロカーボン及び六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素と呼ばれるフッ素化合物の総称です。
かつてフロン類は優れた特性から幅広く活用されていました。エアコンや冷蔵庫の冷媒として熱交換機能を担い、建物の断熱材では高い保温性能を発揮し、スプレー製品では噴射剤としての役割を果たすなど、日常生活のあらゆる場面で使用されてきました。
しかし環境への深刻な影響として、フロンが成層圏に達してオゾン層を破壊することが判明し、国際的な規制対象となった経緯があります。現在では代替フロンと呼ばれる改良型の物質が使用されていますが、代替フロンは温室効果ガスとしての性質を持つため、適切な管理と回収が求められています。使用機器の廃棄時には法令に基づいた処理が必要です。
温室効果ガスの排出状況
世界全体で排出される温室効果ガスの内、CO2の地球温暖化への寄与は全体の約75%を占めており、圧倒的な割合となっています。CO2の64%は化石燃料の使用によるもので、産業革命以降の工業化が主な要因です。
メタンは排出量こそ少ないものの、温室効果はCO2の28倍に達します。主な発生源は牛などの反芻動物による消化プロセスや水田からの放出です。国別のCO2排出量を見ると、2023年時点で中国がトップ、続いてアメリカ、インド、ロシアの順となり、日本は5番目に位置しています。
日本は省エネルギー技術の発展により経済規模に対する排出効率は改善されていますが、国土面積に比して排出量が大きいのが現状です。主要排出国としての国際的な責任は重く、削減目標の達成に向けた継続的な取り組みが求められています。
出典:GLOBAL NOTE/世界の二酸化炭素(CO2)排出量 国別ランキング・推移(EI)
温室効果ガスが増えている原因

地球規模で温室効果ガスの濃度が上昇し続けている背景には、人間活動による複合的な要因があります。主な原因として挙げられるのが、燃料の大量消費と森林の減少という2つの側面です。温室効果ガスが増えている原因について解説します。
燃料の大量消費
温室効果ガスの増加を引き起こす最大の要因は、化石燃料の大量消費です。石炭や石油、天然ガスといった化石燃料を燃焼させる過程で、CO2をはじめとする温室効果ガスが大量に放出されます。
発電所での電力生産、工場での製造活動、自動車や航空機による輸送など、現代社会のあらゆる場面でエネルギー源として依存している状況です。さらに深刻な問題として、発展途上国の経済成長による化石燃料使用量の増加が挙げられます。
生活水準の向上に伴い大量消費型の社会構造が世界規模で拡大しており、エネルギー需要は増加の一途をたどっているのが現状です。今まで先進国が中心だった化石燃料の使用が、新興国でも急速に広がることで、地球全体での排出量は加速度的に増え続けています。そのため、持続可能な代替エネルギーへの転換が急務です。
森林の減少
温室効果ガスの増加には、森林面積縮小の深刻な問題も関わっています。森林が減少する理由は、人間活動による影響が大きな要因です。樹木は光合成によって大気中のCO2を吸収し、酸素を放出する重要な役割を担っています。一方で、世界各地で森林伐採が進むことで、自然の浄化機能を持つ植物が失われ続けているのが現状です。
特に問題なのは、地球が本来持っているCO2の処理能力が低下している点です。自然界のサイクルの中では、森林や海洋がCO2を吸収することでバランスが保たれてきました。
森林減少により吸収量が減る一方で、化石燃料の使用による排出量は増加しています。結果、大気中に留まる温室効果ガスの量が年々蓄積され、温暖化が進行している状況です。
温室効果ガス削減に向けて建設業に求められること
建設業界は温室効果ガス排出量が高水準にある産業の一つであり、脱炭素への取り組みが急務となっています。具体的な対策として、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーの導入、節電・省エネ対策、GX建機の導入が重要です。
温室効果ガス削減に向けて建設業に求められることについて解説します。
再生可能エネルギーやクリーンエネルギーの導入
再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出することなく発電できるエネルギー源として注目されています。
再生可能エネルギーには次の要素が該当します。
- 地熱発電
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電
- バイオマス発電
再生可能エネルギーが重視される理由は、継続的に利用可能な持続性にあります。自然界に存在するエネルギーを活用するため、資源の枯渇を心配する必要がありません。特に自然環境から直接得られるものは、クリーンエネルギーの呼び方もされています。
建設現場において太陽光パネルの設置や風力発電システムの活用が進めば、化石燃料への依存度を大幅に下げられます。再生可能エネルギーの普及はCO2排出量の削減に直結するため、日本国内でも積極的な導入が推進されているのが現状です。
現場事務所や仮設施設への導入から始め、段階的に利用範囲を拡大していく取り組みが求められています。
節電・省エネ対策
電力消費量そのものを削減する節電・省エネ対策は、温室効果ガス削減に直接的な効果をもたらします。節電・省エネ対策が有効な理由は、エネルギー源の転換を待たずに即座に実施できる点です。操業時間の最適化や生産プロセスの見直しによる運用改善などが施策の例として挙げられます。
また、蓄電システムを導入して深夜電力を活用することなど、ピーク時の電力需要を分散させる工夫も効果的です。特に大規模な電力を消費する施設では、わずかな改善アイデアでも大きなインパクトを生み出せる可能性があります。
照明のLED化や空調設備の効率的な運用、待機電力の削減など小さな取り組みの積み重ねが、結果として相当量のCO2排出削減につながります。投資コストを抑えながら実現できる対策も多く、即効性の高い削減手段です。
GX建機の導入
GX建機は、国土交通省が令和5年10月7日に開始した新たな認定制度です。建設現場で使用される機械を環境配慮型の動力源へ転換することで、脱炭素社会の実現を目指しています。
従来の化石燃料に依存したディーゼルエンジンから、電力や水素、バイオマス燃料などクリーンエネルギーを活用する建機へと段階的に切り替えを進めています。国土交通省は燃料電池や水素エンジンを搭載した機種の正式認定を推進しており、今後の建設現場を支える主力動力として位置づけている点が特徴です。
重機や運搬車両など大量の燃料を消費する建設機械の動力転換は、業界全体の温室効果ガス削減に大きく寄与します。初期投資は必要ですが、長期的な環境負荷低減と運用コスト削減の両立が期待できます。
温室効果ガス削減に向けた建設業の事例
建設業界では温室効果ガス削減に向けた具体的な取り組みが各社で進められています。先進的な企業による実践事例として、鹿島建設株式会社、清水建設株式会社、三井住友建設株式会社の活動を紹介します。
鹿島建設株式会社
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出典:気温上昇を1.5℃に抑えるSBT認定を取得|2023.7.27|鹿島建設株式会社
清水建設株式会社
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出典:大気から二酸化炭素を直接回収・利活用するm-DAC®技術の都市実装を開始|2024.10.17|清水建設株式会社
三井住友建設株式会社
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出典:CO2排出量を90%削減するコンクリートを用いたPCaPC床版で環境認証ラベル(EPD)を取得|2025.5.29|三井住友建設株式会社
まとめ

本記事では温室効果ガスの定義や種類、増加原因、そして建設業界に求められる削減対策について解説しました。
温室効果ガスはCO2やメタン、一酸化二窒素、フロン類などで構成され、地球の気温を保つ一方で過剰な排出が温暖化を引き起こしています。主な増加要因は化石燃料の大量消費と森林減少であり、世界規模での対策が急務です。
建設業界においては、再生可能エネルギーの導入、節電・省エネ対策、GX建機の活用などの具体的な削減手法が求められています。重機の稼働や資材製造、輸送など多くの工程で温室効果ガスを排出する建設業だからこそ、脱炭素への取り組みが重要な経営課題です。環境負荷低減と事業継続の両立を目指す建設業の方は、参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
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