2024/1/8
2025/6/13
中小企業が脱炭素に取り組むメリット3選や具体的な方法を解説!

地球温暖化の問題が注目される中で、地球温暖化対策へ重点を置いた経営方針を定める「脱炭素経営」が注目されています。
本記事では、中小企業が脱炭素経営に取り組む方法を解説します。脱炭素経営のメリットやデメリットについても解説するので、脱炭素経営への転換を検討している方は参考にしてみてください。
中小企業が脱炭素に取り組む3つのメリット
中小企業が脱炭素に取り組むことには、以下3つのメリットがあります。
【中小企業が脱炭素に取り組むメリット】
- 企業イメージの向上
- 社員のモチベーションの向上
- 資金調達や人材獲得における優位性の確保
地球温暖化が注目されている昨今において、脱酸素に取り組むことは企業のイメージ向上などに繋がります。では、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
企業イメージの向上
中小企業が脱炭素に取り組むことは、対外的な評価を受けるため企業イメージの向上に繋がります。これは、地球環境に配慮した企業だというクリーンなイメージを市場に与えられるためです。また、大手企業との提携に向けた信頼を築くためにも、脱炭素に取り組むことで、中小企業も新たなビジネスチャンスを得ることができます。このように、脱炭素に取り組むことは企業のイメージを向上させ、成長機会を広げる要素となり得ます。
社員のモチベーションの向上
中小企業が脱炭素に取り組むことで、社員のモチベーションが向上します。企業が気候変動という社会課題に積極的に取り組む姿勢を示すことは、社員に対して社会的責任を果たしているという意識を育てるためです。積極的に取り組む姿勢により、社員の共感や信頼が得られ、日々の業務に対する意欲も高まります。社員が自社の方針に共感することで、より積極的に業務に取り組むようになり、脱炭素を通じて企業自体の価値が高まるため、企業全体の活力を高めるとともに持続的な成長を促進させます。
資金調達や人材獲得における優位性の確保
脱炭素への取り組みは、資金調達や人材獲得において優位性の確保が期待できます。近年、金融機関は企業の融資先選定時に、地球温暖化対策を重要視するようになったためです。環境への配慮が企業の評価に影響を与えることに加え、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を考慮したESG投資の増加に伴い、ESG経営を行う企業は金融機関などから支援を得やすくなります。つまり、中小企業が脱炭素に取り組むことは、企業の成長を加速させる要因となり得るため、資金調達や人材獲得をすることも比較的容易になります。
中小企業が脱炭素に取り組む2つのデメリット
中小企業が脱炭素に取り組むことは多くのメリットを得られる一方で、いくつかのデメリットも考えられます。
【中小企業が脱炭素に取り組むデメリット】
- 初期費用や維持費がかかる
- 専門的な人材やノウハウの確保が必要
では、それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
初期費用や維持費がかかる
中小企業が脱炭素に取り組む際、初期費用や維持費がかかる点がデメリットと言えます。例えば、太陽光発電システムの導入には、設備の購入や設置工事費用が必要です。また、導入後も定期的なメンテナンスや修理費用が発生することがあります。このようなコストは特に中小企業にとって経営を圧迫する要因となり、資金繰りに影響を与える可能性があるため、脱炭素への取り組みを始める際には、きちんと資金計画を立てなければなりません。
専門的な人材やノウハウの確保が必要
脱炭素に取り組むためには、社内において専門的な知識を持つ人材が不可欠ですが、専門的な人材を確保することは容易ではありません。人材確保には、時間とリソースを割かなければならず、中小企業にとっては大きな負担となる可能性があるからです。ノウハウが不足している場合、外部の専門家に依頼したりセミナーに参加したりする必要があり、それに伴う費用も発生します。したがって、脱炭素に取り組む際は、社内での専門的な人材を始めとして社内のリソースやノウハウの確保、そして必要な外部サポートのバランスを考えることが肝要なのです。
中小企業が脱炭素に取り組む方法とは?
国立環境研究所「2050年脱炭素社会実現の姿に関する一試算」によると、脱炭素の基本方針は「省エネ」「エネルギーの低炭素化」「電化」の3つです。中小企業で対応が難しい取り組みも多くあるので、ここでは比較的早く対応できる脱炭素への取り組みを紹介します。
【中小企業ができる脱炭素への取り組み】
- 節電対策を行う
- 省エネ設備を導入する
- 再生可能エネルギーを導入する
- カーボンオフセットを実施する
取り組み内容によって脱炭素の対応範囲やコストは異なるため、自社の組織体制や予算に合わせて、できることから脱炭素に取り組むことが大切です。では、それぞれの取り組みについて具体的に見ていきましょう。
節電対策を行う
企業が行う節電対策は、脱炭素に向けた取り組みのひとつです。日本ではエネルギーの大部分を化石燃料に頼っており、照明など電気製品の使用でも温室効果ガスが発生するため、節電によって消費電力を抑えることで脱炭素につながります。
たとえば、オフィスの部分消灯や使用していないプリンターなどの電源を切ることによって節電が可能です。また、エアコンの設定温度の調整や、PCの省エネモード設定など、電気製品の使い方を工夫することも有効です。
節電対策は、設備を新たに導入することなく、普段使用している電気製品などの使い方の工夫で脱炭素に貢献できます。中小企業でも実行しやすい手法なので、これから企業で脱炭素に取り組みたいと考えている人は、身近な節電対策からはじめてみましょう。
省エネ設備を導入する
企業に省エネ設備を導入することで、脱炭素につなげる方法もあります。
たとえば、オフィスの照明に白熱電球を使用している場合は、LED照明に転換することでエネルギー消費量を削減できます。環境省によると、LED電球の消費電力は、白熱電球と比較して約85%抑えることが可能です。
また、近年ではエアコンや冷蔵庫などの電気製品も省エネ化が進んでいるため、古い家電を使用している場合は省エネ性能の高い製品に買い替えることでも脱炭素につながります。最新型の省エネタイプのエアコンの場合、10年前と比較して約12%の省エネが可能です。
普段使用している電気製品などを省エネ設備に変えることで、同じ使用量でも消費エネルギーを削減できます。省エネ設備を導入することにより、電力の使用量を抑えることが難しい企業でも無理なく脱炭素に取り組むことができます。
再生可能エネルギーを導入する
再生可能エネルギーを導入することでも、脱炭素に取り組むことが可能です。日本ではエネルギーの多くを化石燃料に頼っていますが、温室効果ガスを発生させない再生可能エネルギーを利用する取り組みが広まっています。
たとえば、オフィスの屋上に太陽光パネルを設置して、自社発電を行っている企業もあります。電力会社からの購入が少なくて済むためコストを削減できるほか、太陽光発電で余った電力を販売して収入を得ることも可能です。
太陽光パネルなどの再エネ設備の設置が難しい場合は、契約している電力を再生可能エネルギー使用率の高いプランに変更することで脱炭素に貢献できます。再生可能エネルギープランの利用は、環境への配慮に加え、電気自動車購入時の補助金対象となるなどのメリットもあります。
なお、近年では企業の敷地などを事業者に貸し出すことで、無償で発電設備を設置できるPPAモデルも注目されています。設備費用やメンテナンス費も不要のため、再生可能エネルギーの導入コストが課題となっている企業も、貸し出しが可能な敷地がある場合はPPAモデルの導入を検討してみましょう。
カーボンオフセットを実施する
企業が削減しきれなかったCO2の排出量は、脱炭素に関する活動への投資である「カーボンオフセット」を実施することで埋め合わせができます。森林保全活動や他社のCO2削減量など、脱炭素に関する活動を「カーボンクレジット」として購入することにより、自社のCO2排出量を削減したとみなされるためです。
【カーボンオフセットの主な取り組み】
カーボンオフセット | 概要 |
オフセット製品・サービス | 製造や販売などのライフサイクルを通じて排出される温室効果ガスをオフセットした製品を販売する
例:発電時のエネルギー消費に伴う排出をオフセットした電力の販売 |
会議・イベントのオフセット | 開催に伴って排出される温室効果ガスを埋め合わせたコンサートや国際会議等のイベント
例:出席者の移動・宿泊に伴う排出をオフセットした国際会議の実施 |
自己活動オフセット | 企業や団体などが自らの事業活動に伴って排出される温室効果ガスを埋め合わせる
例:事業活動で削減しきれなかった温室効果ガスをオフセットし、自社の CSR レポートで公開 |
クレジット付製品・サービス | 商品やサービスにクレジットを添付して販売し、購入者のオフセットを支援する
例:購入者の日常生活に伴う排出をオフセットする量のクレジットを添付した家具の販売 |
寄付型オフセット | 地球温暖化防止活動への貢献・資金提供等を目的として参加者を募り、金額に応じてクレジットを購入する
例:売上金の一部をクレジット購入に用いることを宣言した商品の販売 |
参考:環境省「カーボンオフセット・ガイドライン」
日本では、代表的なクレジットとして「Jクレジット」制度があります。Jクレジットは国が運営するクレジット制度であり、企業の温室効果ガス削減目標であるSBTの達成や、省エネ法における温室効果ガスの排出量報告にも用いることができます。
企業活動におけるCO2の排出量をゼロにすることが困難な場合でも、脱炭素に関連する活動への投資で実質ゼロを目指すことが可能です。企業活動で削減しきれなかった分のCO2は、カーボンオフセットによって埋め合わせを行うことも検討してください。
関連記事:建設業界の脱炭素経営の実践~中小企業の事例から学ぶ 3つの手順と実践事例~
中小企業が脱炭素経営を導入する手順
脱炭素経営とは、CO2の排出を経営上の重点課題と捉えて全社を挙げて脱炭素に取り組むことであり、中小企業の間でも脱炭素経営が広まっています。脱炭素経営を導入する場合は、以下の手順に沿って行いましょう。
【脱炭素経営の導入手順】
- 脱炭素について知り自社の方針を検討する
- 自社のCO2排出量を算出して削減箇所を特定する
- 削減計画を立てて実行する
脱炭素経営は、「①知る」「②測る」「③削減する」の3ステップで行うことが推奨されています。環境省では「中小企業向けの脱炭素経営導入ハンドブック」を公開し、導入の流れや脱炭素に向けた具体的な手法を記載しているので、詳しく知りたい方はあわせて確認してみてください。
脱炭素について知り自社の方針を検討する
企業が脱炭素経営を導入する場合、まずは脱炭素について知り、自社の方針を検討することが大切です。なぜならば、脱炭素に関する情報収集により知識を深めることで、自社への影響についても把握し、脱炭素の取り組みを自分事として捉えることができるようになるためです。
脱炭素についての情報収集は、本やインターネットを活用した方法以外にも、セミナーや講演会などへの参加も有効です。
中小企業は大企業と比較して、限られた人材や予算の中で脱炭素に取り組まなければなりません。収集した情報に基づき、「自社が出来ることは何か」「どのような付加価値を提供できるのか」など自社の方針を検討してください。
なお、自社に脱炭素のノウハウを持つ人材がいない場合や何から取り組めばよいのか分からない場合は、中小企業の脱炭素を支援する各種サービスの利用も可能です。環境省と経済産業省では「中小企業等のカーボンニュートラル支援策」を公表して、カーボンニュートラルに関する情報提供や相談窓口などを複数紹介しているので、参考にしてみてください。
自社のCO2排出量を算出して削減箇所を特定する
脱炭素経営の方針が決まったら、自社のCO2排出量の算出を行います。自社におけるCO2排出状況を把握することにより、削減対象を特定し脱炭素経営に向けての具体的な施策を検討することができるからです。
削減ターゲットを明確にするために、事業所やエネルギー単位で排出量を算出します。CO2排出量の対象は電力以外にも都市ガスやガソリン、灯油などがあるため、業務日報や請求書等を用いて該当の項目を抽出し算定を行いましょう。
算出したデータに基づき、どの部分のCO2排出量を削減対象とするかを特定していきます。算出したデータは、グラフ化することで削減箇所を検討しやすくなるほか、対策を実行後との数値の比較により施策の効果の可視化が可能です。
自社以外の間接的な温室効果ガス排出が多い場合は、取引先や消費者にも協力を仰ぐなどサプライチェーンを巻き込んでの脱炭素を目指すことも必要です。脱炭素に取り組むに当たり、取引先からの理解を得ることが難しい場合は使用する原材料の変更や新たな取引先を探すことも検討してください。
なお、CO2排出量の計算方法については「二酸化炭素排出量の計算方法を解説」の記事で詳しく解説しています。自社のCO2排出量を算出したい方や、国への報告義務について知りたい方は参考にしてみてください。
削減計画を立てて実行する
CO2の削減対象が決まったら、具体的な削減計画を立てて脱炭素に向けた施策を実行しましょう。自社のCO2排出源の分析により削減対策を洗い出し、実施可能な削減対策をリストアップした上で実施計画を策定します。
例えば、CO2削減のために電化計画を進める例を考えてみましょう。企業として主にできることは、給湯の方法を熱から電気に変えることです。給湯方法を省エネ設備であるヒートポンプ式にした後、導入前後でどの程度CO2が削減されたかを確認します。その結果が削減計画と大きく外れたものになっていなければ、想定通りの脱炭素計画を実施できたことになります。
削減計画を立てる際は、最終的なゴールまでの中間目標を定めておくことで、方向性のズレや計画の遅れがあった際に軌道修正しやすくなります。CO2の削減計画は、規模の小さい施策など実施しやすいものから徐々に拡大していくように策定することで、無理なく取り組むことが可能です。
施策を行った後は効果を検証し、継続的に見直しを行うことで取り組み内容をより良いものに改善できます。施策の効果を実感できるよう、積極的に社内外へ公表していけば、従業員のモチベーションアップにもつながります。
なお、省エネ設備の導入など、施策の実行にはコストが掛かる場合があります。「中小企業等のカーボンニュートラル支援策」では、脱炭素に取り組む中小企業が利用できる補助金も紹介しているため、費用面での負担が企業の課題となっている場合は補助金の利用も検討してみてください。
中小企業の脱炭素への取り組み事例
脱炭素に積極的に取り組んでいる中小企業の事例を紹介します。
八洲建設株式会社
当社は経営戦略において気候変動対策を重要課題と位置付け、2030年に事業活動に基づく
CO2排出量を2018年比50%削減、2040 年にカーボンフリーを達成することを表明いたしました。
当社の掲げるCO2排出量削減目標の達成を確実なものにするため、具体的な取り組みと
目標を明示・公表することで持続可能な社会の実現を目指します。
引用:カーボンニュートラルへ向けたトランジション戦略|八州建設株式会社
加山興業株式会社
世界全体で大規模な自然災害が相次ぐなど気候変動に起因する諸問題は、現在進行形で待ったなしで進行しています。また、更なる潜在的なリスクがある中で、事業活動にも影響を及ぼすものであると認識しています。世界で二酸化炭素削減に取り組むことが求められ、日本においても「脱炭素」が掲げられています。加山興業も自社の事業活動における二酸化炭素削減に意欲的に努め、お客様やお取引様とともに推進していくことに努めます。
引用:脱炭素|加山興業株式会社
宮城建設工業株式会社
重点的な取組テーマ
環境配慮
自然資本
取り組みの内容
自社のエネルギー量を把握し効率化の促進、生物多様性の保全等実施しています。
環境基本方針等まとめた環境マニュアル(みちのくEMS)策定しており、みちのく環境管理規格認証登録されています。
当社の排出するCO2を算出し脱炭素を目的として太陽光発電を設置しています。
関連記事:「中小企業と脱炭素」-三和興産が取り組んできたScope3につながるエコシステムへの道
まとめ
中小企業が脱炭素に取り組むことは、エネルギーコストの削減や企業イメージの向上などのメリットがあります。しかし、取り組みの内容によっては、設備の導入やセミナーへの参加などのコストが企業にとってのデメリットとなる可能性もあります。
中小企業でも、節電対策やカーボンオフセットなど、さまざまな方法で脱炭素に取り組むことができます。実行する手法によってコストや削減量が異なるため、脱炭素の目的に合わせて自社の取り組み方を考えていきましょう。
近年は、中小企業の間でもCO2の排出を経営上の重点課題と捉えて全社を挙げて脱炭素に取り組む「脱炭素経営」が広まっています。脱炭素へ取り組むにあたって費用やノウハウに課題を感じている企業の方は、中小企業の脱炭素を支援するための相談窓口や補助金制度の利用を検討してみてください。
建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。
リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

この記事の監修

リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
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