基礎情報

ダブルスキンファサードとは?仕組みや分類、建設業の導入事例を解説!

ダブルスキンファサードとは?仕組みや分類、建設業の導入事例を解説!

環境性能に優れた建築物への需要が高まる中、ダブルスキンファサードが注目を集めています。二重の外皮構造により、省エネルギー性と快適性を両立できるダブルスキンファサードの技術は、オフィスビルや商業施設などさまざまな用途で採用が進んでいるのが現状です。

本記事では、ダブルスキンファサードの基本的な仕組みや5つの分類方法、外皮性能の向上や防音対策など具体的なメリットを解説します。

また、建設業界における 先進的な導入事例も紹介していますので、環境配慮型建築の提案やZEB対応を検討されている建設業の方は参照してみてください。

ダブルスキンファサードとは

ダブルスキンファサード とは

ダブルスキンファサードは、建物の外壁を二重構造にした外装システムです。通常の外壁やカーテンウォールの外側にもう一層の外皮を追加することで、建物と外部環境の間に空気層を形成し、優れた環境性能を実現します。

ダブルスキンファサードは1980年代にヨーロッパで開発されました。当初は日除けルーバーを風雨から保護する目的で外側にガラス層を設けたことが起源とされ、そこから現在の多機能ファサードへ発展しました。

二重構造により、デザイン性の向上に加えて、遮熱・断熱・遮音など多様な機能が得られます。特に注目すべきは、高層ビルでも自然換気が可能になる点です。強風や降雨の影響を受けやすい高層階でも、二重の外皮が保護層となることで窓を開けた換気が実現できます。空調設備への依存を減らし、窓際のペリメーター領域における環境調整が自然な形で行えることも特徴です。

出典:一般財団法人日本建築総合試験所/ガラスファサードの形態と構成方法について−環境的側面と構造的側面から−

ダブルスキンファサードの仕組み

ダブルスキンファサードは、二重の外皮の間に形成される空気層を活用した、環境制御システムです。基本的な仕組みは、自然な空気の流れを利用した温熱環境の調整にあります。

ファサードの下部に設けた吸気口から外気を取り込み、二重壁の間の空気層(キャビティ)を通過させ、上部の排気口から放出することで、煙突効果による自然な換気を実現します。フィンの開閉により空気の流れを調整できるため、季節や天候に応じた最適な制御が可能です。

また、キャビティ内のブラインドは内側と外側のガラスに挟まれた空間に配置されるため、風雨の影響を受けずに日射制御が行えます。自動制御システムにより、室内に入る太陽光を最適化し、夏季は遮熱、冬季は採熱の形で冷暖房負荷を効果的にコントロールできます。

ダブルスキンファサードの分類

ダブルスキンファサード とは

ダブルスキンファサードは、建物の規模や用途に応じてさまざまな形式が開発されています。建物全体を覆う吹き抜け型や複数層型、個別の窓ごとに設置するダブルウィンドウ型、廊下に面して配置するコリダー型、縦方向の空気流を活用するシャフト型など、それぞれが異なる特徴と適用条件を持ちます。

各方式の構造と性能の違いについて解説します。

出典:一般財団法人日本建築総合試験所/ガラスファサードの形態と構成方法について−環境的側面と構造的側面から−

吹き抜け型

吹き抜け型は、日本国内でも採用事例が多い一般的なダブルスキンファサード形式です。建物全体を覆う二重外皮構造により、大規模な環境制御を実現します。

吹き抜け型では、建物最下層から外気を取り込み、キャビティ内を上昇させながら最上部で排熱する仕組みです。キャビティの奥行きは約600〜1300mm程度担保され、換気方式や外気導入方法を柔軟に設定できる点が特徴です。

基本原理は複層ガラスと同様で、換気を行わないため適用できる地域や建物部位が限定されます。また、大空間を共有する構造ゆえに、階層間での振動伝播による騒音問題や、火災発生時の煙の拡散リスクが懸念されるため、設計段階から防災設備との綿密な連携が不可欠です。

複数層型

複数層型は、建物を鉛直方向に2層以上ごとに区画して構成するダブルスキンファサードです。複数層型は、吹き抜け型の課題を解決する実用的な形式として注目されています。

複数層型の利点は、区画による影響範囲の限定です。吹き抜け型では下層の熱が上層階に伝わりやすい問題がありますが、複数層型では各区画が独立しているため、上層階がキャビティからの熱的影響を受けにくくなります。さらに、騒音や火災時の煙の拡散も区画内に抑制できるため、安全性と快適性が向上することもメリットです。

運用方法は多様で、キャビティの給排気口に開閉機能を持たせ設備制御と連動させるアクティブ型と、機械設備に依存しないパッシブ型があります。加えて内側スキンの窓も開閉可能にすれば、利用者が個別に環境調整できるため、より高い快適性が実現できます。

ダブルウィンドウ型

ダブルウィンドウ型は、水平・垂直方向ともに完全に区画された、細分化されたダブルスキンファサード形式です。独立したユニットを縦横に配置する構造により、窓単位での環境制御を可能にします。

各ユニットが独立しているため、利用者ごとに遮音性能や温熱環境を調整でき、執務空間の快適性が大幅に向上することがメリットです。一方で、ユニット数が増えるため他の形式と比較してコスト面では不利になる傾向があります。

冬季は太陽光による温室効果でキャビティ内の空気を暖め、予熱された新鮮な空気を室内に導入できます。また、寒冷な夜間には換気口を閉じて暖気を二重窓の間に蓄積させることで、断熱バッファー層として機能し、室内からの熱損失を効果的に防止できることも特徴です。

コリダー型

コリダー型は、回廊を意味する名称の通り、各階にキャビティを水平方向に区画したダブルスキンファサードです。フロア単位での独立した空気層が特徴です。

コリダー型は吹き抜け型の課題を解決する有効な手段で、各階で空気層を遮断する構造により、下層から上層への熱伝播、騒音の伝達、さらに火災時の炎や煙の拡散などの問題を軽減できます。建物全体の安全性と快適性が向上する一方、区画構造が増えるため吹き抜け型と比較するとコストは高くなりがちです。

さらに、給排気口に開閉機能を設ければ、季節に応じた補助的な効果も期待できます。冬季には換気口を閉じることで効果的な断熱層として機能するほか、日射を受けた面の熱を水平方向に移動させ、日陰側への供給も可能です。

シャフト型

シャフト型は、垂直方向に分割されたキャビティを活用した構造のダブルスキンファサードです。シャフト部分とダブルウィンドウ部分を交互に配置することで、効率的な自然換気システムを実現します。

シャフト内で発生する上昇気流により、居室内の汚れた空気を効果的に外部へ排出できます。一方、新鮮な外気は外側スキンのガラス下部目地から取り込まれ、シャフトの外側に位置するキャビティ空間を経由して、内側スキンから各居室へと導入される仕組みです。

給排気の流れを分離することで、室内環境の質を保ちながら連続的な換気が可能です。シャフトが垂直に貫通する構造のため、階層間での空気の独立性を維持しつつ、自然な空気循環を促進できる点が特徴といえます。

ダブルスキンファサードのメリット

ダブルスキンファサードは、二重の外皮構造によって多様な性能向上を実現します。外皮性能のアップにより断熱・遮熱効果が高まり、キャビティ内で空気が移動することで自然換気も可能です。

さらに紫外線対策、防風対策、防音対策など複合的な機能を併せ持ち、快適な室内環境を形成します。ダブルスキンファサードの各メリットについて解説します。

外皮性能のアップ

ダブルスキンファサードは、建物の外皮性能を向上させ、一次エネルギー消費量の削減に貢献します。冬季には二重構造が断熱バッファーとして機能し、室内からの熱損失を抑制します。さらに、キャビティ内に侵入した太陽光が空気層を暖めるため、予熱された空気を室内に取り込むことで暖房負荷を軽減できることもメリットです。

一方、夏季は過度な日射による室内のオーバーヒートが課題となりますが、キャビティ内に設置したブラインドで日射を遮蔽し、温室効果を制御します。遮られた熱は換気によって屋外へ排出されるため、冷房消費を抑制できます。

空気が移動する

ダブルスキンファサードの重要な機能として、キャビティ内での空気移動による環境制御が挙げられます。

空気の流れは、自然換気と機械換気の2つの方式です。自然換気では、温度差による浮力を利用した効果により、キャビティ内に上昇気流が発生します。暖められた空気が上昇し、下部から新鮮な外気が流入する自然な循環が生まれるのです。一方、機械換気では送風設備により強制的に空気を移動させ、より確実な制御を実現します。

換気方式を建物の用途や気候条件に応じて使い分けることで、執務空間とキャビティの両方の環境を同時に最適化できます。

紫外線対策

ダブルスキンファサードは、二重のガラス層により紫外線を効果的に低減します。紫外線は人体や室内の家具、内装材を劣化させる要因となりますが、複層のガラス構造を通過する過程で大幅にカットされます。

特にキャビティ内に設置されたブラインドと組み合わせることで、日焼けや色褪せといった紫外線による被害を防止しながら、適度な自然光を室内に取り込めることがメリットです。さらに、透明な素材で外部環境と隔てることで、視覚的な開放感を損なわない点も特徴です。

太陽の光や季節の移り変わりを室内にいながら感じられるため、閉鎖的にならず、自然とのつながりを保った快適な空間を実現できます。

防風対策

ダブルスキンファサードの外側スキンは、キャビティ内の設備を風から保護する役割を担います。通常の建物では、外部に設置した日除けルーバーやブラインドは風雨の影響を直接受けるため、強風時には破損のリスクがあり、運用に制約が生じます。

一方でダブルスキンファサードでは、外側のガラス層がキャビティ全体を覆うことで、内部のブラインドを風から完全に保護できることがメリットの一つです。高層ビルなど風が強い環境でも、ブラインドを安全に展開して日射制御が行えます。

さらに、風による損傷や劣化を防げるため、設備の耐久性が向上し、メンテナンスコストの削減にもつながります。

防音対策

ダブルスキンファサードは、二重のガラス層と空気層により優れた遮音性能を発揮します。外部からの騒音は、まず外側スキンで減衰され、キャビティ内の空気層を通過する際にさらに吸収されます。また、内側スキンでも遮音されるため、二段階の防音効果により交通騒音や周辺環境の音を大幅に低減できることがメリットです。

また、キャビティの奥行きや空気層の厚みを調整することで、遮音性能をさらに高められます。静かで快適な室内環境を実現することで、執務空間の生産性向上や居住空間の質の向上に貢献します。

建設業におけるダブルスキンファサードの事例

ダブルスキンファサード とは

ダブルスキンファサードは、日本国内でも大手建設会社により採用されています。鹿島建設株式会社や大成建設株式会社の取り組みについて紹介します。

鹿島建設株式会社

外部との熱の出入りを制御し,快適な室内環境の維持に大きな影響を及ぼす建物のファサード。その重要性から,メニューも多様化している。『ダブルスキンファサード』は,二重化したサッシの間に空気層をつくって断熱効果をもたらし,外気を取り込んで日射遮蔽性能を向上させる。また,二重サッシとブラインドにより日射遮蔽効果を高める『エアフローウィンドウ』や,遮蔽性能,紫外線カットに優れた『高性能Low-Eガラス』,庇で昼光を反射させ室内を明るくする『ライトシェルフ』などにも,当社は多くの施工実績を持つ。

当社開発の『Eco―Win』は窓からの熱や日差しといった窓周りの環境計画に特化して,温熱環境や省エネ性能を検討するツール。多彩なファサードメニューに対応し,簡易な条件を入力するだけで,窓際の温熱環境の断面分布や空調機器の負荷などをビジュアルに比較検討できる。快適性と省エネの両立をアシストするツールだ。

出典:省エネと快適の両立を目指すファサードエンジニアリング|鹿島建設株式会社

大成建設株式会社

換気スリット(自動開閉制御)を、サッシ縦方向に内蔵。これによりサッシ縦方向全域から給気、排気を行えます。この為、十分な換気量を確保可能で、従来600mm程度を必要とした中空層幅を、約200mmと大幅に薄型化しても、省エネルギー性能は従来型ダブルスキン同等としました。

夏季は、換気スリットにより、2重ガラス内の空気を自然換気し、日射熱の負荷を低減します。冬季は、換気スリットを閉じて、断熱性を向上させます。

サッシ底部のアイソレーションダンパーの開閉により空気の通り道を制御し、省エネルギー性能を最大限に発揮します。

出典:薄型ダブルスキン「T-Façade Air」|大成建設株式会社

まとめ

ダブルスキンファサード とは

本記事では、ダブルスキンファサードの仕組みや分類、メリットについて解説しました。ダブルスキンファサードは、二重の外皮構造により優れた環境性能を実現する先進的な建築技術です。

吹き抜け型、複数層型、ダブルウィンドウ型、コリダー型、シャフト型の分類があり、建物の規模や用途に応じて最適な形式を選択できます。外皮性能の向上、自然換気の実現、紫外線対策、防風対策、防音対策などさまざまなメリットを持ち、省エネルギー性と快適性を両立できることが特徴です。

建設業界では 、環境配慮型建築への需要が高まっており、ZEBやLEED認証取得を目指すプロジェクトでダブルスキンファサードの採用が進んでいます。初期コストは高くなりますが、長期的な運用コスト削減や建物価値の向上が期待できますので、環境性能の高い建築物を提案される建設業の方は、参照してみてください。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

建設業界向けの脱炭素対策資料はこちら!

お役立ち資料

注目記事

SBT×CDP Aリストが示す“脱炭素を競争力にする方法” ――「脱炭素×事業成長」インフロニアHDに学ぶ実装プロセス
業界事例

SBT×CDP Aリストが示す“脱炭素を競争力にする方法” ――「脱炭素×事業成長」インフロニアHDに学ぶ実装プロセス

いま改めて石油を理解する ~インフラ維持の危機と災害対応、そして脱炭素への取り組み~
セミナー情報

いま改めて石油を理解する ~インフラ維持の危機と災害対応、そして脱炭素への取り組み~

サステナビリティ 2025→2026:建設業が“今”整える制度・開示・現場実装
ニュース

サステナビリティ 2025→2026:建設業が“今”整える制度・開示・現場実装

ピーエス・コンストラクションの脱炭素への取り組みと 「TansoMiru管理」導入によるCO2排出量可視化効果
業界事例

ピーエス・コンストラクションの脱炭素への取り組みと 「TansoMiru管理」導入によるCO2排出量可視化効果

AI活用で工事費・建物のCO2排出量を算定 新ツールがもたらす木内建設のDXと脱炭素戦略
業界事例

AI活用で工事費・建物のCO2排出量を算定 新ツールがもたらす木内建設のDXと脱炭素戦略

記事の一覧はこちら

本ウェブサイトを利用される方は、必ず下記に規定する免責事項をご確認ください。
本サイトご利用の場合には、本免責事項に同意されたものとみなさせていただきます。当社は、当サイトに情報を掲載するにあたり、その内容につき細心の注意を払っておりますが、情報の内容が正確であるかどうか、最新のものであるかどうか、安全なものであるか等について保証をするものではなく、何らの責任を負うものではありません。
また、当サイト並びに当サイトからのリンク等で移動したサイトのご利用により、万一、ご利用者様に何らかの不都合や損害が発生したとしても、当社は何らの責任を負うものではありません。

目次