建築物省エネ法の改正により、2025年4月から原則すべての新築建築物に省エネ基準適合が義務化され、BEIは建設業界において 必須の知識となりました。
本記事ではBEIの基本的な定義や計算方法、関連する制度の概要、BEI値を効果的に下げるための具体的な手法について解説します。また、大手建設会社による省エネ技術の導入事例も紹介していますので、これから省エネ性能の高い建築物の設計・施工に取り組む建設業の方は参照してみてください。
目次
BEIとは

BEI(Building Energy Index)は、建築物がどれだけエネルギー効率に優れているかを示す評価指標であり、建築物省エネ法における適合判定で重要な役割を果たしています。
BEIの計算式は以下の通りです。
| BEI=設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量 |
設計段階で算出される一次エネルギー消費量を、基準となる一次エネルギー消費量で除して求めます。つまり、基準値に対して計画建物のエネルギー消費がどの程度の割合になるかを表す比率です。
新築物件の省エネ基準適合を判断する際は、BEI値が1.0以下であることが求められます。1.0を下回るほど基準よりも優れた省エネ性能を持つことを意味し、例えば0.8であれば基準の80%のエネルギー消費に抑えられることを示します。
設計一次エネルギー消費量
設計一次エネルギー消費量は、建築物の省エネ性能を評価する際の基礎となる数値です。設計一次エネルギー消費量は、計画段階における建物の仕様や設備条件をもとに算出される、年間のエネルギー使用量を表します。
消費量を左右する要素は大きく2つに分けられます。1つ目は住宅の断熱性や気密性など外皮性能で、建物そのものがどれだけ熱の出入りを抑えられるかです。2つ目は設備機器の性能で、空調システムや換気設備、照明器具、給湯機器などの効率性が影響を与えます。
建物の構造的な省エネ性能と、導入する機器の効率性の両面から総合的に算出される数値です。値が小さいほど、エネルギー効率に優れた建築物であることを意味し、BEI算出における分子として用いられます。
基準一次エネルギー消費量
基準一次エネルギー消費量は、省エネルギー基準において標準的な建物が1年間に消費するエネルギー量として定められた数値です。BEI算出における分母として用いられ、建築物の省エネ性能を評価する際の比較対象です。
基準一次エネルギー消費量は、建物ごとの条件によって異なります。主な決定要素は床面積の規模と建設地の気候区分です。床面積が大きいほど基準消費量も増加し、また建物が位置する地域の気候特性によっても変動します。例えば、寒冷地では暖房需要が大きいため基準値が高く設定される傾向です。
同じ設計であっても建設地や規模が異なれば基準値も変化するため、各建物の条件に応じた公平な評価が可能です。設計一次エネルギー消費量との比較により、建物が標準的な性能に対してどの程度優れているかを判断できます。
BEIを用いる制度
BEIは建築物の省エネ性能を評価する指標として、さまざまな制度で活用されています。新築建築物に適用される省エネ基準適合義務制度をはじめ、住宅事業者を対象とした住宅トップランナー制度、任意の性能表示制度であるBELSにおいても用いられます。
それぞれの制度におけるBEIの役割について解説します。
省エネ基準適合義務制度
省エネ基準適合義務制度は、建築物省エネ法に基づいて建物のエネルギー性能担保を求める制度です。住宅と非住宅それぞれに対してBEIの基準値が定められており、新築時には定められたBEI値を満たすことが必須です。
2025年4月からは適用範囲が拡大され、原則としてすべての新築建築物が対象となりました。建築主や設計者は計画段階からBEI値を意識した設計を行う必要があります。具体的には、外皮性能の向上や高効率設備の採用などを通じて、基準値以下となるよう調整しなければなりません。
2024年4月以降に適合性判定を申請する建築物の基準は次の通りです。
| 建築物 | BEI値の基準 |
| 住宅 | 1 |
| 非住宅:工場など | 0.75 |
| 非住宅:事務所・学校・ホテル・百貨店など | 0.80 |
| 非住宅:病院・飲食店・集会所など | 0.85 |
省エネ性能の担保は建築を進める上での前提条件となっており、BEIは法的な適合判断における中心的な指標として機能しています。
住宅トップランナー制度
住宅トップランナー制度は、一定規模以上の住宅供給を行う大手事業者を対象に、より高い省エネ性能の住宅提供を促す制度です。住宅トップランナー制度では、事業者全体として供給する住宅の平均性能が基準を上回るよう目標が設定されており、継続的な取り組みが求められます。
具体的には次の目標が設定されています。
| 種類 | 年当たりの戸数 | BEI | 目標年度 |
| 建売戸建 | 150戸 | 0.85 | 2020年度 |
| 注文戸建 | 300戸 | 0.80 | 2024年度 |
| 賃貸 | 1,000戸 | 0.90 | 2024年度 |
| 分譲 | 1,000戸 | 0.80 | 2026年度 |
目標年度を迎えた後も達成状況の維持が必要とされ、単発的な対応ではなく恒常的な性能向上への姿勢が評価されます。法的には努力義務として位置づけられていますが、目標未達成の場合には要因分析や改善に向けた具体的な対応策を報告しなければなりません。
強制力のある義務制度とは異なるものの、実質的には事業者の取り組み状況が可視化され、市場における競争力にも影響を与える仕組みです。
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)
BELS(Building-housing Energy-efficiency Labeling System)は、建築物省エネルギー性能表示制度の略称で、建物の省エネ性能を客観的に評価・表示する任意の認証制度です。BELSは消費者や事業者が物件選定の際に省エネ性能を容易に比較判断できるよう整備されました。
評価方法の特徴は、BEI値を基準とした星の数による視覚的な表示です。星の数が多いほど優れた省エネ性能を持つことを示し、最高で5つ星まで設定されています。
例として、BELSにおけるBEI値を基準とした星の数(住宅)は次の通りです。
| 星の数 | BEI値 |
| 星5 | 0.8以上 |
| 星4 | 0.85以上 |
| 星3 | 0.9以上 |
| 星2 | 1.0以上 |
| 星1 | 1.1以上 |
判定にあたっては、一次エネルギー消費量の削減度合いに加え、建物の断熱性や日射遮蔽性など外皮性能も総合的に考慮されます。義務制度ではないものの、取得することで建物の省エネ性能を対外的に証明でき、資産価値の向上や入居者への訴求力強化につながります。
出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会/建築物省エネ法に基づく省エネ性能の表示制度について
BEI値を下げる方法

省エネ基準への適合やBELS評価の向上には、BEI値を効果的に下げる取り組みが不可欠です。具体的な方法として、空調や給湯などの高効率設備の採用、断熱性能を高める外皮性能の向上、太陽光発電などの再生可能エネルギー設備の導入が挙げられます。
BEI値を下げる方法について解説します。
高効率設備の採用
高効率設備の採用は、BEI値を改善する上で即効性の高い手法です。建物のエネルギー消費において設備機器が占める割合は大きいため、高性能な製品に更新することで顕著な省エネ効果が得られます。
空調設備は、最新型のエアコンを選択することが重要です。近年の機器はエネルギー効率が大幅に向上しており、従来品と比べて消費電力を抑えながら快適な室内環境を維持できます。
また換気設備では、全熱交換器の導入が効果的な選択肢です。全熱交換器は排気時に失われる熱エネルギーを回収し、新たに取り込む外気の温度調整に活用する仕組みです。給湯設備も、エコキュートやエネファームなど高効率機器への置き換えが推奨されます。
設備投資は初期コストを要しますが、設計一次エネルギー消費量の削減につながり、BEI値の改善に直結します。
外皮性能の向上
外皮性能の向上は、建物の根本的な省エネ性能を高めるアプローチです。外皮とは建物の内外を隔てる境界部分を指し、断熱性や気密性、遮音性、耐久性などの性能を総合的に評価したものが外皮性能です。
外皮性能を高めることで、外気温の影響を最小限に抑えられるため、冷暖房で調整した室内環境を効率的に保持できます。結果として空調設備の稼働負担が軽減され、エネルギー消費量の削減につながります。
例えば、窓サッシを高断熱・高性能な製品に変更することが効果的です。窓は熱の出入りが大きい部分であり、性能向上の影響が顕著に現れます。また壁や床、天井には高性能断熱材を適切に充填することで、建物全体の保温・保冷能力が向上します。
再生可能エネルギー設備の導入
再生可能エネルギー設備の導入は、BEI値を効果的に低減する手法として注目されています。太陽光発電システムなどの創エネ設備を搭載すれば、建物で生み出したエネルギーを一次エネルギー消費量から差し引いて計算できるため、その分BEI値を削減できます。
設備機器の効率化や外皮性能向上が消費量を抑える守りのアプローチであるのに対し、創エネ設備はエネルギーを生み出す攻めの対策です。特に屋根面積が広く日照条件に恵まれた建物では、大きな省エネ効果が期待できます。
創エネ設備には、災害時の電力供給途絶に対する備えの副次的な価値もあります。自家発電により最低限の電力を担保できるため、地震や台風などの災害が頻発する日本において、建物の防災性能を高める要素としても重要です。
BEI値を下げるメリット
BEI値を下げることで得られるメリットとして、次の内容が挙げられます。
- 光熱費の削減ができる
- 補助金を受けられる
- 資産価値が高まる
最も直接的なメリットは光熱費の削減です。BEI値が0.8の建物であれば、基準と比較して20%のエネルギー削減が実現できるため、長期的な運用コストを大幅に抑えられます。
さらに、省エネ性能の高い建築物は、国や自治体が用意する各種補助金の対象となる可能性が高まります。脱炭素社会の実現に向けて毎年さまざまな支援制度が整備されており、初期投資の負担軽減につながることもメリットです。
他にも、環境意識の高まりとともに、住宅購入者や借主の省エネ性能への関心は年々増しています。優れたBEI値を持つ建物は市場での競争力が高く、売却時や賃貸時の評価額にも好影響を与えます。
建設業のBEI値に関する事例
建設業界では省エネ性能の高い建築物の実現に向けて、各社が取り組みを進めています。ここでは、建設業のBEI値に関する具体的な事例について紹介します。
清水建設株式会社
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出典:平川の風土に根ざす人と環境に優しい庁舎|個別事例紹介(30事例)
大成建設株式会社
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出典:寒冷地における先進的な省エネ・再エネ技術を駆使したZEB複合庁舎|個別事例紹介(30事例)
まとめ

本記事ではBEIの基本的な概念から計算方法、関連制度、さらにBEI値を下げる具体的な手法について解説しました。
BEIは建築物省エネ法における適合判定の中核となる指標であり、2025年4月以降は原則すべての新築建築物で基準適合が義務化されています。建設業に携わる 事業者にとって、省エネ基準への対応は避けて通れない課題となりました。
高効率設備の採用や外皮性能の向上、再生可能エネルギー設備の導入などの対策を通じてBEI値を改善することで、法令遵守だけでなく、施主への提案力強化や建物の資産価値向上にもつながります。
大手建設会社の先進事例も紹介していますので、これから省エネ性能の高い建築物の設計・施工に取り組む建設業の方は参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
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