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カーボンリサイクルとは?技術的な仕組みや企業の活用事例も解説!

カーボンリサイクルとは?技術的な仕組みや企業の活用事例も解説!

カーボンリサイクルは、排出したCO2を削減するだけでなく、資源として再利用する技術です。温暖化対策の重要施策として注目されており、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、産業界全体で取り組みが加速しています。

本記事では、カーボンリサイクルの仕組みやメリット、現状の課題を解説します。また、建設業界における応用事例も解説していますので、持続可能な建設業を目指す方や脱炭素経営に関心のある方は参照してみてください。

カーボンリサイクルとは

カーボンリサイクルとは

カーボンリサイクルとは、排出されたCO2を単に削減するのではなく、資源として再利用する循環型の仕組みです。カーボンリサイクルの技術により、CO2排出量を大幅に減らせるため、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた重要な手段として注目されています。

日本政府は2020年10月にカーボンニュートラル宣言を行い、その実現に向けて策定したグリーン成長戦略では、カーボンリサイクル産業を14の重要分野の一つに位置づけています。

グリーン成長戦略には、産業政策とエネルギー政策の両面からアプローチする方針が示され、2050年までの具体的な工程表も示されています。

回収したCO2は、化学品や燃料、建材などさまざまな製品に転換が可能です。依然として技術的な課題は残されているものの、経済成長と環境保護を両立させる新しい産業として、今後の発展が期待されています。

出典:資源エネルギー庁/CO2削減の夢の技術!進む「カーボンリサイクル」の開発・実装

出典:経済産業省/2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

カーボンリサイクルの仕組み

カーボンリサイクルの仕組み

カーボンリサイクルは、大気中に排出されるCO2を有効活用する循環システムです。CO2を分離回収する技術と回収したCO2を資源として利用する工程、そしてCCSやCCUSなどの技術開発の3要素で構成されています。

どのように連携し、持続可能な社会の実現に貢献するのか、カーボンリサイクルの仕組みについて解説します。

CO2を分離回収する技術

CO2を分離回収する技術は、カーボンリサイクルを実現するための最初のステップです。現在、火力発電所や都市ガス施設などから排出されるCO2を、物理吸収法や化学吸収法などの手法で効率的に回収する取り組みが進められています。さらに、大気中から直接CO2を回収する技術も開発が進んでおり、排出源を問わない回収が可能になりつつあるのが現状です。

日本国内では、化学製品の原料として利用するため、発電所から高濃度のCO2を分離・回収する設備が実証段階に到達しています。技術が確立されれば、従来は廃棄されていたCO2を有価値な資源として活用できます。

回収したCO2を資源として利用

回収したCO2は、ドライアイスや溶接用途として直接利用するだけでなく、さまざまな製品の原料として再資源化できることもカーボンリサイクルの特徴です。経済産業省は、CO2の活用範囲を広げるため、化学品・燃料・鉱物・その他の分野で多様な変換技術の開発を推進しています。

それぞれの分野で転換が進められている内容は次の通りです。

分野 要素
化学品分野 ●       ウレタン

●       ポリカーボネート

●       バイオマス由来化学品

●       オレフィン

燃料分野 ●       微細藻類

●       バイオマスを活用したバイオ燃料

鉱物分野 ●       コンクリート製品

●       構造物への固定化

さらに、バイオマス燃料とCCSを組み合わせたBECCSや、海藻・海草によるCO2吸収を活用するブルーカーボンなど、革新的な取り組みも展開されています。

CCSやCCUSなどの技術開発

CCSやCCUSは、CO2を管理・活用するための中核をなす技術として開発が進められています。CCSは回収したCO2を地中深くに貯留することで大気中への排出を防ぐ技術です。一方、CCUSはCO2を回収するだけでなく、資源として有効利用する技術を指します。

カーボンリサイクルは、CCUSにおける有効利用の部分を担う重要な取り組みと位置づけられます。単にCO2を地中に封じ込めるのではなく、化学品や燃料、建材などの製品へと転換することで、経済的価値を生み出しながらCO2削減を実現する技術です。

カーボンリサイクルのメリット

カーボンリサイクルは、環境面と経済面の両方でメリットをもたらす技術です。気候変動問題の解決、空気中のCO2を資源として活用できる点、あらゆる分野に適用できる汎用性など、それぞれのメリットがどのように持続可能な社会の実現に貢献するのかについて解説します。

気候変動問題の解決

カーボンリサイクルの最大のメリットは、気候変動問題の解決に直接貢献できる点です。CO2を回収して再利用することで、大気中への排出量を大幅に削減でき、地球温暖化の進行を抑制することにつながります。

CO2の削減は、国際的な環境目標であるSDGsの達成にも深く関わっています。特に「気候変動に具体的な対策を」という目標に対して、カーボンリサイクルは実効性のある解決策として期待されていることが特徴です。

従来は廃棄物として扱われていたCO2を資源として循環させることで、環境負荷を減らしながら経済活動を維持できる仕組みが構築されます。

空気中のCO2を資源として活用できる

カーボンリサイクルのメリットは、空気中のCO2を価値ある資源として活用できる点にあります。日本が温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指すうえで、温室効果ガスの大半を占めるCO2の削減は避けて通れない課題です。

カーボンリサイクルは、エネルギー転換部門や産業部門から排出されるCO2を単に削減するだけでなく、回収してさまざまな炭素化合物へと転換します。従来は環境負荷としてのみ捉えられていたCO2が、化学品や燃料などの有用な製品を生み出す原材料となることがメリットでもあり特徴です。

あらゆる分野に適用できる

カーボンリサイクルのメリットの一つは、特定の産業に限定されず、あらゆる分野に適用できる汎用性の高さです。基礎研究レベルの先端技術から、日常生活で使用する身近な製品まで、幅広い領域でカーボンリサイクルの考え方を活かせます。

カーボンリサイクル技術はすでにさまざまな分野で実用化が進んでおり、幅広い製品の製造に活用されています。代表的な例が、CO2を吸収して固定化するコンクリートの開発です。建設資材だけでなく、化学品や燃料、プラスチック製品など、さまざまな産業分野で応用が進んでいます。

この活用の柔軟性により、各産業が独自のニーズに合わせてカーボンリサイクルを取り入れられるため、社会全体での脱炭素を効率的に推進できます。

カーボンリサイクルの課題

カーボンリサイクルの課題

カーボンリサイクルには課題があることを把握しておく必要があります。カーボンリサイクルが抱えている課題は次の通りです。

  • 技術面が安定していない
  • CO2の排出
  • 膨大なコスト

それぞれの課題の内容を解説します。

技術面が安定していない

カーボンリサイクルには多様な製品を生み出せるメリットがある一方で、技術面での不安定さがある課題も抱えています。カーボンリサイクルの技術はまだ歴史が浅く、現在も試行錯誤が続けられている発展途上の段階です。

応用範囲の広さゆえに、各分野で求められる技術水準や条件が異なり、安定した成果を得ることが難しい状況です。実験段階では成功しても、実用化や量産化の段階で想定通りの結果が得られないケースも少なくありません。

CO2を効率的に変換するプロセスの確立や、コスト面での採算性の確保など、クリアすべき技術的ハードルは依然として残されています。技術面での不確実性が、企業や投資家にとって導入を躊躇させる要因となっており、カーボンリサイクルの本格的な普及を妨げていることが大きな課題です。

CO2の排出

カーボンリサイクルには、CO2が排出されるという矛盾した課題が存在します。CO2を原料として製造した製品が焼却される際や、カーボンリサイクル燃料を使用する際に、再びCO2が大気中に放出されます。

特に問題となるのが、CO2リサイクルする際に使用する水素生成過程で大量のCO2が発生する可能性がある点です。CO2削減を目的とした取り組みが、結果として環境問題の悪化を招く恐れがある状況です。課題を解決するには、製造プロセス全体での脱炭素や、再生可能エネルギーの活用、製品のライフサイクル全体でのCO2収支を考慮した設計が欠かせません。

膨大なコスト

カーボンリサイクル技術の課題の一つが、膨大なコストです。革新的な技術であるがゆえに、CO2の回収から製品化までの一連のプロセスには多額の投資が必要です。

現状では、カーボンリサイクルにより製造された製品は従来の製造方法と比較してコストが高く、経済的な競争力を持ちにくい問題があります。将来的に社会全体へ技術を普及させるためには、コスト削減が避けられません。

実際に、政府が策定したロードマップにおいても、技術開発と並行してコストを段階的に低減していくことが重要な目標として掲げられています。設備投資の効率化、大量生産によるスケールメリットの獲得、プロセスの最適化などを通じて、経済的に実現可能な水準まで引き下げることが、カーボンリサイクル技術の本格的な社会実装に向けたポイントです。

出典:経済産業省/カーボンリサイクルロードマップ資料

カーボンリサイクルの活用事例

カーボンリサイクルの活用事例

カーボンリサイクルの活用事例を紹介します。カーボンリサイクルを導入し、活用しようとしている方は参照してみてください。

株式会社大林組

大林組では、汎用性の高いハイブリッド木造建築の施工において、構造材であるCLTパネルの壁と天井を工場でユニット化することで高品質かつ短工期での施工を実現する「CLTユニット工法」を開発しました。

従来、CLTパネルを用いた工法は、パネルを運び、建設現場で組み立てていましたが、CLTユニット工法では、4tトラックに積めるサイズで設計されたCLTユニットを、あらかじめ工場で製作して建設現場に搬入することが可能となり、製作精度の向上による高品質化と現場での施工手間の削減による短工期化を実現できます。

出典:原木から製材、加工、完成までCLT製造工程を紹介|株式会社大林組

大成建設株式会社

大成建設株式会社(社長:相川善郎)が開発し、社会実装を進めている環境配慮コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」によるCO2固定量が、日本の温室効果ガス吸収量(CO2固定量)に盛り込まれ、その他の環境配慮型コンクリートとともに世界で初めて国連に報告されました。

温室効果ガスの排出・吸収量については、気候変動に関する国際連合枠組条約第4条及び第12条、パリ協定第13条並びに関連する締約国会議の決定に基づき、各国が温室効果ガス排出・吸収量の目録を作成し、条約事務局への提出が義務付けられています。また、日本政府は、国内における温室効果ガス排出量・吸収量を算定し、毎年公表しています。

これまで当社は、製造時にCO2を大量に放出するセメントの使用量を削減してCO2排出量を抑制する環境配慮コンクリート「T-eConcreteシリーズ」を開発・適用し、さらに工場などから排出されたCO2を資源とする炭酸カルシウムを用いたカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の開発と社会実装に向けた取り組みを進めてきました。カーボンリサイクル・コンクリートはCO2を炭酸塩鉱物(CaCO3)として長期にわたり安定して固定し、使用材料に関わるCO2排出量収支がマイナスとなる「カーボンネガティブ」を達成しています。

出典:環境配慮コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」による温室効果ガス吸収量(CO2固定量)を世界で初めて国連に報告|2024.4.12|大成建設株式会社

三菱重工業株式会社

三菱重工業は、CO2および再生可能エネルギーから生成可能なカーボンリサイクル燃料「エレクトロフューエル(Electrofuels™)」の日本市場への展開について、同燃料への先進的な取り組みを実施しているインフィニウム社(Infinium、本社:米国カリフォルニア州)と共同で検討していくこととし、このほど覚書(MOU)を締結しました。同社が持つエレクトロフューエル製造技術と当社グループのCO2回収技術やバリューチェーンソリューションを組み合わせることで、日本国内の脱炭素ソリューションを加速します。

当社は、米国統括拠点である米国三菱重工業(MHIA:Mitsubishi Heavy Industries America, Inc.)を通じ、2021年1月にインフィニウム社への出資を行って以降、共同でソリューションの商用化や市場展開に関する検討を行っており、今回のMOU締結もその一環です。インフィニウム社によるとエレクトロフューエルは、同社が特許を保有する触媒技術と再生可能エネルギーを使用し、回収したCO2とグリーン水素を合成ガスに転換することでつくられます。これにより、従来の化石燃料と比較してCO2排出量を最大97%削減可能となり、クリーン液体燃料として既存設備に利用することで輸送時におけるCO2排出量を直接削減できるため、輸送のEV化、CO2回収・カーボンオフセット(排出権取引)などといった既存の脱炭素戦略に追加される新たな手段となることが期待されています。

出典:カーボンリサイクル燃料「エレクトロフューエル」の日本市場への展開を検討

米インフィニウム社と協働し、日本国内の脱炭素ソリューションを加速|2022.4.22|三菱重工業株式会社

まとめ

まとめ

本記事では、カーボンリサイクルの仕組みやメリット、課題について解説しました。カーボンリサイクルは、排出されたCO2を回収して資源として再利用する技術であり、気候変動問題の解決に貢献する重要な取り組みです。CO2を化学品や燃料、建材などに転換することで、環境保護と経済成長の両立が可能です。

建設業界においても、CO2を吸収するコンクリートの開発や製造プロセスでの活用など、カーボンリサイクル技術の応用が進んでいます 。技術面の不安定さやコストといった課題は残されていますが、政府の支援や企業の先進的な取り組みにより、実用化への道筋が見えてきました。

持続可能な建設業を目指す方は、カーボンリサイクル技術の動向を参照してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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