脱炭素が求められる中、建設業界でも環境負荷の低減が重要な経営課題となっています。この解決策として、再生可能エネルギーの導入が進んでいます。再生可能エネルギーを安定的に調達する方法として注目されているのが、コーポレートPPAです。
本記事では、コーポレートPPAの基本的な仕組みや契約形態の種類、導入によるメリット・デメリットを解説します。環境経営の推進や取引先からの要請に対応したい建設業の方は参照してみてください。
目次
コーポレートPPAとは?

コーポレートPPAは、企業が再生可能エネルギーを直接購入できる契約形態として、脱炭素を目指す企業から注目を集めています。コーポレートPPAの契約形態や、コーポレートPPAが注目されている背景について解説します。
コーポレートPPAとは再エネを直接購入する契約形態
コーポレートPPAは、企業が第三者の発電事業者と長期にわたり電力を購入する契約のことで、企業や自治体が再生可能エネルギーを長期的に調達できる有効な手段です。コーポレートPPAの契約形態は、需要家が発電事業者からCO2を排出しない再エネ電力を、固定または固定に近い価格条件で直接購入します。
コーポレートPPAが選ばれる理由は、初期投資を抑えながら安定的にクリーンな電力を担保できる点にあります。通常10年から20年以上の長期契約を結ぶため、電力コストの変動リスクを軽減しつつ、脱炭素の目標達成に向けた計画的な取り組みが可能です。
コーポレートPPAでは発電事業者と需要家が直接契約を交わすことで、より透明性の高い電力調達を実現します。自社で発電設備を保有する負担なく再エネを利用できるため、環境経営を推進する企業にとって実用的な選択肢の一つです。
コーポレートPPAが注目されている背景
コーポレートPPAは、気候変動対策とエネルギー安全保障の両面から、世界中で急速に普及が進んでいます。2022年には約36.7GWもの新規契約が締結され、前年比18%以上の成長を記録しました。2008年からの累計では148GWに達しており、企業による再エネ調達の主要な手段として確立されつつあります。
成長の背景には、CO2削減への社会的要請の高まりがあります。世界各国で気候変動リスクへの懸念が深刻化する中、企業は脱炭素への具体的な行動を求められるようになりました。コーポレートPPAを活用することで、確実に再エネ由来の電力を調達でき、環境目標の達成を着実に進められます。
さらに、エネルギー自給率の観点からも重要性が増しています。国内の再生可能エネルギー比率を高めることは、化石燃料への依存度を下げ、エネルギー安全保障の強化につながるため、企業だけでなく国家戦略としても推進されているのが現状です。
出典:日経BP/2022年の再エネPPA契約量、世界で過去最高の36.7GW
コーポレートPPAのさまざまな契約形態

コーポレートPPAには、発電設備の設置場所や電力の受け渡し方法によって、複数の契約形態が存在します。それぞれの特徴を理解することで、自社の状況や目的に最適な選択が可能です。
オンサイトPPA、フィジカルPPA(オフサイトPPA)、バーチャルPPA(オフサイトPPA)について解説します。
オンサイトPPA
オンサイトPPAは、発電事業者が需要家の敷地内に発電設備を設置し、構内線または自営線を通じて電力を直接供給する契約形態です。
オンサイトPPAは、企業側の負担が少ない点が魅力です。自社で発電設備を保有する場合と異なり、建設費用や維持管理の責任は発電事業者が負います。需要家は建物の屋上などの設置スペースを提供するだけで、発電設備の運転や保守などは専門的な業務を必要としません。
従来の自家発電・自家消費との違いは、所有権と管理責任の所在にあります。オンサイトPPAでは発電事業者がすべての技術的責任を担うため、企業は本業に集中しながら再エネ電力を安定的に利用できます。敷地内で発電と消費が完結するため、送電ロスが少なく効率的なエネルギー利用が可能です。
フィジカルPPA(オフサイトPPA)
フィジカルPPAは、敷地外に設置した発電設備から送配電網を経由して電力を供給する契約形態です。発電事業者が企業の敷地外に太陽光発電設備などを建設し、一般送配電線を通じて需要家へ電力を届けます。
フィジカルPPAのメリットは、複数の事業所へ同時に電力供給できる柔軟性です。拠点が分散している企業や自治体にとって、一つの発電設備から各施設に配電できるため、効率的な再エネ調達が実現します。また、発電量が需要を上回った場合でも、余剰分を含めてすべての環境価値を取得できる点は大きな魅力です。環境価値とは、再エネ由来の電力が持つ「CO2を排出しない」付加価値の事です。
一方で、小売電気事業者を介する仕組み上、託送料金や再エネ賦課金が発生します。そのため、通常の電力購入と比べて電気代の大幅な削減は期待しにくい側面があります。
バーチャルPPA(オフサイトPPA)
バーチャルPPAは、物理的な電力供給を伴わず環境価値のみを取引する契約形態です。発電事業者が遠隔地で発電した電力は市場で売却され、需要家が実際に使用する電力は特定の発電所と紐づきません。環境価値だけが小売電気事業者を経由して需要家へ提供される仕組みです。
バーチャルPPAの特徴は、既存の電力契約を変更する必要がない点です。企業は現在利用している電力会社との契約を維持したまま、再エネ由来の環境価値を追加で調達できます。契約変更に伴う手続きや業務への影響を避けられるため、導入のハードルが低く抑えられます。
フィジカルPPAと異なり、実際の電力供給経路とは独立した取引となるため、発電設備の立地に制約されません。遠方の大規模な再エネ施設からでも環境価値を調達でき、柔軟性の高い脱炭素の手段として活用できます。
コーポレートPPAとリース・自己所有との違い

コーポレートPPAは、初期費用を抑えて脱炭素を進めたい企業にとって有効な選択肢です。リースや自己所有と比べて、料金体系や電力の利用形態、契約終了後の対応などに明確な違いがあります。
それぞれの違いは次の通りです。
| 自己所有 | リース | オンサイトPPA | オフサイトPPA | |
| 発電設備所有者 | ユーザー | リース業者 | PPA事業者 | PPA事業者 |
| 費用(初期費用・メンテナンス費用)負担者 | ユーザー | リース業者 | PPA事業者 | PPA事業者 |
| 契約終了後の取り扱い | 契約期間なし | 撤去もしくは電力ユーザーへ譲渡 | 撤去もしくは電力ユーザーへ譲渡 | PPA事業者が管理 |
| 電気の使用方法 | 自由に活用できる | 自由に活用できる | 電力ユーザー社内のみでの活用 | 電力ユーザーの拠点で使用する分だけ活用 |
| 発電設備から調達した分の電気料金 | なし | 電気料金はなし、ただしリース料の支払いあり | PPA事業者へ支払う | 小売電気事業者へ支払う |
自己所有では多額の初期投資が必要となり、リースでも一定の設備費用が発生します。一方、PPAモデルでは発電事業者が設備を保有するため、企業は固定費を削減しながら再エネ電力を利用できます。
コーポレートPPAのメリット

コーポレートPPAは、企業の環境経営と経済性を両立させる実用的な仕組みとして注目されています。脱炭素への取り組みを進めながら、財務負担を抑えられる点が大きな魅力です。
コーポレートPPAのメリットについて解説します。
CO2排出量の抑制
コーポレートPPAの導入により、企業はCO2排出量を削減できることがメリットの一つです。再生可能エネルギーの調達比率を高めることで、化石燃料由来の電力への依存度が低下し、CO2排出量の抑制に直結します。
既存の再エネ電力証書を購入するだけでは、実質的な発電量の増加にはつながりません。一方で、コーポレートPPAでは契約に伴って新たな太陽光発電設備などが建設されるため、社会全体の再エネ供給量が実際に増加します。
既存の火力発電所の稼働を減らす効果が生まれることがメリットです。新しいクリーンエネルギー源が電力市場に加わることで、化石燃料による発電の必要性が相対的に低下し、環境負荷の軽減に貢献します。企業の脱炭素目標達成だけでなく、エネルギー構造の転換を促進する社会的意義も大きい仕組みです。
太陽光発電設備の導入における初期費用や管理コストの削減
コーポレートPPAの魅力は、費用負担なしで再エネ導入を実現できる点です。発電設備の建設費用や設置にかかる経費はすべて発電事業者が負担するため、需要家は初期投資ゼロで太陽光発電の利用を開始できます。
多くの企業が再エネ導入を検討しながらも踏み切れない理由は、コスト面の課題です。太陽光発電設備は規模によって数百万円から数千万円と高額になり、さらに導入後も継続的な保守管理費用が必要です。財務面でのハードルが、環境経営への移行を妨げる要因となりかねません。
PPAモデルでは、設備の所有権が発電事業者にあるため、メンテナンスや修繕といった管理業務もすべて事業者側で対応します。企業は専門的な知識や人員を確保する必要がなく、運用の手間も不要です。
再エネ電力の安定した確保
コーポレートPPAは、将来にわたって再エネ電力を安定して調達できる仕組みです。約20年の長期契約を結ぶことで、価格や供給量の変動リスクを避けて、安定的に環境価値を担保できます。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、世界中の企業が再エネ電力の調達を急いでおり、今後は需給の逼迫による価格高騰も懸念されます。省エネルギー対策だけでは達成できない大幅なCO2削減には、再生可能エネルギーの導入が欠かせません。
早期にPPA契約を締結しておけば、将来的な価格変動の影響を軽減できます。固定または固定に近い条件で電力を購入できるため、脱炭素のコストを予測しやすく、中長期的な経営計画も立てやすくなることがメリットです。
コーポレートPPAのデメリット

コーポレートPPAには多くのメリットがある一方で、導入前に理解しておくべきデメリットもあります。契約の性質や設備の特性から生じる制約を把握することで、自社に適した判断が可能です。
コーポレートPPAのデメリットについて解説します。
設置場所が限られている
コーポレートPPAの導入におけるデメリットは、設置場所に制約があることです。すべての企業や施設で利用できるわけではなく、環境や設備の状況によっては実現が困難です。
屋根の老朽化が進んでいる場合、太陽光パネルの重量に耐えられず補強工事が必要になることもあります。また、敷地面積が狭く十分な発電量を担保できる規模の設備を設置できない場合や、周辺の建物や樹木の影響で日照時間が限られる立地では、発電効率が低下し事業性が成り立ちません。
ただし、判断基準は発電事業者によって異なります。ある事業者が設置困難と判断した場所でも、別の事業者なら対応可能な技術や設備を持っている可能性があります。導入を検討する際は複数のPPA事業者に相談し、それぞれの提案内容や条件を比較検討することが重要です。
長期的な契約が求められる
コーポレートPPAでは、10年から25年など長期契約が基本となるため、安定した供給が得られる一方で、柔軟性が制限されるデメリットがあります。契約期間中は発電設備の所有権が事業者にあるため、企業の都合で自由に変更できません。
事業環境の変化により、建物の建て替えや事業所の移転、業態転換などで太陽光パネルの移設や撤去が必要になった場合でも、契約期間中は原則として実行できないことに注意が必要です。やむを得ず変更する場合は高額な違約金が発生し、想定外のコスト負担を強いられることになりかねません。
このため、将来的な施設利用の見通しや経営方針の安定性を十分に検討した上で、契約を締結する必要があります。自社の中長期計画とPPA契約の期間が整合しているか、慎重に見極めることがコーポレートPPA導入成功の鍵です。
将来性に不安定さがある
コーポレートPPAには、価格変動リスクが存在します。契約時に固定された価格条件が、将来的に必ずしも有利に働くとは限りません。
市場環境の変化によって不利益を被る可能性があります。契約締結後に再エネ電力の市場価格が下落した場合、通常であれば安価に調達できたはずの電力を、契約で定められた高い価格で購入し続けなければなりません。
一方で、市場価格が低い時期に契約すれば、将来の価格上昇の影響を避けられるメリットも得られます。しかし、再エネ技術の進歩や発電効率の向上により、電力コストは今後さらに低下する可能性も指摘されています。契約時点での市場予測が困難なため、長期的な経済合理性の判断には慎重さが必要です。
建設業でコーポレートPPAを活用した事例

建設業でコーポレートPPAを活用した事例を2つ紹介します。自社の導入の際に参照してみてください。
清水建設株式会社
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出典:賃貸用オフィスビルにオフサイトコーポレートPPAを活用|2021.12.02|清水建設株式会社
東急建設株式会社
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出典:太陽光オンサイトPPAサービスの提供を開始|2023.06.08|東急建設株式会社
まとめ

本記事では、企業が再生可能エネルギーを直接調達できるコーポレートPPAの仕組みや契約形態、メリット・デメリットについて解説しました。
コーポレートPPAは、初期投資や管理コストを抑えながら脱炭素を実現できる有効な手段です。安定的にCO2排出量を削減し、長期的な環境価値を担保できる点が魅力です。
建設業界では、現場での電力使用や施設運営において環境負荷の低減が求められています 。事業所の屋上や保有地を活用したオンサイトPPA、複数の現場や拠点への供給が可能なフィジカルPPAなど、事業形態に合わせた導入が可能です。
脱炭素経営の推進や取引先からの環境対応要請に応えたい建設業の方は、参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
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