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パッシブデザインとは?アクティブデザインとの違いやメリット・デメリットを解説!

パッシブデザインとは?アクティブデザインとの違いやメリット・デメリットを解説!

近年、建設業界では持続可能な住まいづくりへの関心が高まっており、その中でもパッシブデザインが注目を集めています。パッシブデザインは、自然の力を最大限に活用することで、エネルギー効率と快適性を両立させる革新的な設計手法です。

本記事では、パッシブデザインの基本概念から構成要素、メリット・デメリットまで詳しく解説します。また建築コストの増加や性能発揮のデメリットも解説していますので、省エネ住宅の建築をされている方は参照してみてください。

パッシブデザインとは

パッシブデザインとは

 

パッシブデザインとは、機械設備に頼らず自然環境の力を最大限に活用した建築設計手法です。自然のチカラを活かす家づくりの考え方として注目されており、太陽光や風、地熱などを効果的に取り入れることで快適な住環境を実現します。

季節や地域などの環境特性に合わせた設計が重要で、パッシブハウスとの違いも理解しておく必要があります。これらのポイントについて解説します。

出典:一般社団法人環境共生まちづくり協会/環境共生住宅とは

自然のチカラを活かす家づくり

パッシブデザインは、受動的(passive)の意味を持つ言葉の通り、自然環境から与えられるエネルギーを建物の設計に巧みに取り入れる手法です。自然のチカラを活かす家づくりの考え方で、太陽光や風といった自然現象を積極的に住環境の改善に役立てます。

パッシブデザインでは、機械設備への依存を極力減らし、自然の恩恵を最大化することが重要な目標です。特に断熱・気密・蓄熱の三要素が中心的な役割を果たし、これらの性能を高めることで外部環境の影響を適切にコントロールできます。

高性能な断熱材と気密施工により熱損失を防ぎ、蓄熱材の活用で太陽からの熱エネルギーを効率的に貯蔵・放出する仕組みを構築します。

季節や地域などの環境特性に合わせる

パッシブデザインの効果を最大限に発揮するためには、それぞれの地域や季節の特性を理解し、特性に応じた設計を行うことが不可欠です。夏季は強烈な日射を適切に遮蔽し、自然風の流れを促進させて夜間の涼しい空気を室内に導入する工夫が求められます。

一方、冬季には貴重な太陽光を積極的に室内に取り込み、建物の構造体に熱を蓄積させるとともに、冷たい季節風から建物を守る対策が必要です。

相反する要求をバランス良く満たすため、構造材料の選定から間取りの配置、庇や開口部の設計まで、あらゆる要素を総合的に検討しなければなりません。日本は南北に細長い地形と複雑な地理的条件により、地域ごとに日射量や風況が大きく異なります。

そのため設計前には気象データの詳細な分析が欠かせず、各地域の日照時間の違いを踏まえた日射利用方法の最適化が求められます。

パッシブハウスとの違い

パッシブデザインとよく混同される概念にパッシブハウスがあります。パッシブハウスは1990年代にドイツで確立された具体的な省エネルギー住宅の認定制度であり、厳格な数値基準をクリアした建物のみが称号を得られます。

パッシブハウスの認定を受けるためには、冷暖房にかかるエネルギー負荷量、建物の気密性能、住宅全体で消費されるエネルギー量について、それぞれ定められた基準値を下回る必要があり、専門機関による厳しい審査プロセスを通過しなければなりません。

一方パッシブデザインは、特定の性能数値による認定制度ではなく、自然エネルギーを活用する設計思想や手法そのものを表す概念です。パッシブハウスが達成すべき明確なゴールを持つ認定システムであるのに対し、パッシブデザインは設計者が自然の力を最大限に活かすためのアプローチ方法を示しています。

パッシブデザインとアクティブデザインとの違い

パッシブデザインとアクティブデザインとの違い

パッシブデザインの理解を深めるためには、対極にあるアクティブデザインとの違いを把握することが重要です。アクティブという言葉は能動的を意味し、受動的なパッシブとは正反対の概念を表しています。

パッシブデザインが太陽光や風といった自然から得られるエネルギーを巧みに建物設計に取り込むことで快適性と省エネルギー性を両立させる手法であるのに対し、アクティブデザインは高性能な機械設備や最新技術を積極的に導入することでエネルギー効率の向上を図ります

具体的には、アクティブデザインとして次の要素が挙げられます。

  • 太陽光発電
  • 蓄電池
  • 高効率給湯機
  • 高効率空調
  • HEMS(Home Energy Management System)

どちらも持続可能な建築を目指す点では共通していますが、アプローチには明確な違いがあり、実際の設計では両方の要素を適切に組み合わせることが一般的です。

パッシブデザインを構成する5つの要素

パッシブデザインを構成する5つの要素

 

パッシブデザインは次の5つの要素によって構成されています。

  1. 断熱
  2. 日射熱利用暖房
  3. 自然風利用
  4. 昼光利用
  5. 日射遮蔽

それぞれの要素の内容を解説します。

断熱

パッシブデザインの基盤となる断熱は、建物全体の保温性能を決定づける要素の一つです。高断熱・高気密の考え方を軸として、外壁や屋根、床面、窓などあらゆる部位の断熱性能を向上させることで、建物内部の熱環境を安定させられます。

特に日本の住宅では冬季の暖房エネルギー消費が大きな割合を占めるため、効果的な断熱対策は直接的な省エネルギー効果をもたらします。

断熱性能の客観的な評価指標として用いられているUA値は、建物の外皮全体がどれだけ熱を通しやすいかを数値化したものです。数値が小さいほど優れた断熱性能を持つことを意味し、国の省エネルギー基準においても地域の気候特性に応じたUA値の基準値が設定されています。

日射熱利用暖房

日射熱利用暖房は、冬季の厳しい寒さを自然の太陽エネルギーで和らげるパッシブデザインの要素です。効果的な日射熱の活用を実現するためには、建物への太陽光の入射角度や時間帯による変化を詳細に分析する日照シミュレーションが欠かせません。

シミュレーション結果に基づいて、最適な窓の配置と寸法が決定され、貴重な太陽熱を最大限に室内に導入する設計が可能です。

単に窓から日射を取り入れるだけでなく、熱エネルギーを効率的に活用するための工夫も重要です。窓の位置やサイズの最適化に加えて、コンクリートなどの蓄熱材を戦略的に配置することで、日中に蓄積された太陽熱を夜間や曇天時にゆっくりと放出させる仕組みを構築できます。

自然風利用

自然風利用は、空気の物理的性質と風の力を巧みに活用することで、機械的な冷房設備に頼らずに快適な室内環境を創出するパッシブデザインの重要な要素です。温度の異なる空気が持つ特性として、暖められた軽い空気は上昇し、冷たく重い空気は下方に滞留する自然現象があります。

温度差による空気の動きと、外部から吹く自然風の力を組み合わせることで、エアコンなどの人工的な冷房機器を使用せずに過ごせる期間を延長できます。

効果的な自然風利用を実現するためには、建物内部に明確な風の通り道を設計することが不可欠です。適切に配置された開口部により、室内の空気を効率的に循環させ、同時に空気中に浮遊するほこりや熱気を屋外に排出する機能を持たせられます。

昼光利用

昼光利用は、太陽からの自然光を建物内部に効果的に導入し、人工照明への依存を抑えるパッシブデザインの手法です。昼光利用の技術は、大型の窓や天窓といった開口部を戦略的に配置することで、日中の豊富な自然光を室内空間に取り込みます。

単純に窓を大きくするだけでなく、位置や寸法を慎重に計画することで、眩しさや熱負荷の原因となる直射日光を適切に制御しながら、十分な明るさを確保する空間設計が必要です。

自然光の活用効果をさらに高めるためには、室内の仕上げ材の選択も重要な要素です。壁面に明るい色調の材料を採用することで、入射した光を効率的に反射・拡散させ、室内全体により均等で柔らかな光環境を創出できます。

日射遮蔽

日射遮蔽は、夏季の快適性担保と冷房エネルギー削減を両立させるために欠かせないパッシブデザインの構成要素です。夏の暑さ対策において最も効果的なのは、強烈な太陽光を室内に侵入させないことであり、冷房負荷を根本的に軽減できます。

夏季特有の太陽高度の高さを利用して、軒や庇といった建築的な遮蔽装置を適切に設置することで、直射日光を効果的に遮断可能です。

最適な日射遮蔽設計を実現するためには、窓の規模や種類、配置位置に加えて、軒や庇の角度や寸法を科学的に検討しなければなりません。これらの設計要素は、冷房期の平均日射取得率を示すイータ・エーシ値の指標を基準として決定されます。

パッシブデザインのメリット

パッシブデザインのメリット

 

パッシブデザインを採用することで得られるメリットは多岐にわたります。最も注目される効果の一つがエネルギー効率の向上です。自然エネルギーの活用により光熱費の削減が期待できます。

パッシブデザインのさまざまなメリットについて解説します。

エネルギー効率の向上

パッシブデザインがもたらすメリットとして、エネルギー効率の向上が挙げられます。パッシブデザインは、太陽光や風など自然界に存在するエネルギー源を建物設計に巧妙に組み込むことで、人工的なエネルギー消費を抑えます。

高性能な断熱材を使用した壁面や窓の採用により、冬季の暖房費や夏季の冷房費など光熱費負担の軽減が実現可能です。さらに建物の配置や開口部の計画において自然風の流れを十分に考慮した設計を行うことで、機械換気に依存することなく室内の空気循環を促進できます。

自然換気システムにより、清浄で新鮮な空気環境を維持しながら、換気設備の運転エネルギーも節約可能です。

快適性の向上

パッシブデザインがもたらす快適性の向上は、住まい手の生活の質そのものを改善するメリットです。パッシブデザインの高断熱・高気密性能と、季節に応じた適切な日射制御技術が組み合わさることで、一年を通じて自然で心地よい室内環境を実現します。

冬季においては、窓から取り入れる豊富な太陽熱により、人工的な暖房機器にほとんど頼ることなく暖かさを感じられる居住空間を創出できます。夏季には庇の適切な設計による日射遮蔽効果と、自然風の流れを最大限に活用した開口部配置により、室温上昇を効果的に抑制することもメリットの一つです。

補助制度や優遇措置

パッシブデザインを採用した省エネルギー住宅には、国や自治体からさまざまな経済的支援制度が用意されており、建築費用の負担軽減に大きく貢献します。例えば、住宅ローン控除制度では、年末時点での住宅ローン残高の0.7%を最大13年間にわたって所得税から控除でき、環境性能の高い住宅ほど借入限度額が増額される仕組みです。

住宅ローンの面でも有利な条件が設定されており、全期間固定金利のフラット35では、住宅性能に応じて一定期間の金利引き下げが適用されるフラット35Sがあります。さらに登録免許税の軽減措置も設けられており、一般住宅の税率0.15%に対して、特定認定長期優良住宅や認定低炭素住宅では0.1%まで軽減されます。

出典:国土交通省/住宅ローン減税

パッシブデザインのデメリット

パッシブデザインのデメリット

 

パッシブデザインには、導入時に注意すべきデメリットも存在します。懸念として建築コストの増加が挙げられ、高性能な断熱材や窓などの採用により初期投資が膨らむ傾向です。また設計や施工の精度によっては、期待した省エネルギー効果や快適性が十分に発揮されない場合もあり、性能を十分に発揮できない可能性があることも理解しておかなければなりません。

パッシブデザインのデメリットについて解説します。

建築コストの増加

パッシブデザイン住宅の建築では、従来の一般的な住宅と比較して初期投資の増加が避けられないことがデメリットです。建築コストの増加は、高断熱・高気密性能を実現するために必要となる高品質な断熱材の採用が主要な要因の一つです。

さらに効率的な太陽光エネルギーの活用を目指すため、性能の優れた大型窓や特殊な開口部システムを選択する必要があり、これらの高性能建材は通常の製品と比べて価格が高くなる傾向があります。

設備機器の設置や施工においても、従来の工法以上に精密な作業が求められるため、工事費用も相応に増加します。また自然エネルギーを最大限に活用する設計を実現するためには、建築士や設計者による専門的で高度な技術と知識が不可欠となり、設計費用の増加要因の一つです。

性能を十分に発揮できない可能性がある

パッシブデザインは自然エネルギーを活用する設計手法であるため、建築地の環境条件によっては期待した性能効果を十分に得られない可能性があります。周辺建物の配置や高さによって敷地への日照が大幅に制限される場合、太陽光や太陽熱が不足し、パッシブデザインの機能である日射熱利用が困難になりかねません。

リスクを回避するためには、適切な敷地選択が極めて重要です。パッシブデザインの性能を最大限に引き出すには、建築地の日照条件や風況、周辺環境の将来的な変化まで総合的に検討する必要があります。

まとめ

パッシブデザイン

 

本記事では、建設業界で注目が高まっているパッシブデザインについて詳しく解説しました。パッシブデザインは、自然エネルギーを活用した設計手法として、断熱・日射熱利用・自然風利用・昼光利用・日射遮蔽の5つの要素から構成され、エネルギー効率の向上や快適性の向上といった多くのメリットを提供します。

一方で、建築コストの増加や立地条件による性能制約などのデメリットも存在するため、専門的な知識を持つ建築会社との連携が不可欠です。建設業で住宅に携わっている方は、パッシブデザインの概念を取り入れるためにも参照してみてください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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