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グリーンカーボンとは?ブルーカーボンとの違いや活用のメリットを解説!

気候変動問題への対応が世界的な課題となる中、グリーンカーボンは森林や植生が大気中のCO2を吸収・貯留することから、カーボンニュートラルの実現に向けて、建設業界でもその重要性がますます高まっています。

本記事では、グリーンカーボンの基本概念からブルーカーボンとの違いや現状と課題まで詳しく解説します。また、活用メリットや森林吸収Jクレジットの仕組みも解説していますので、環境配慮型事業の展開をお考えの建設業界の方は参照してみてください。

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グリーンカーボンとは

地球温暖化対策として注目を集めているグリーンカーボンは、森林や草原などの陸上生態系による炭素循環の仕組みを活用した概念です。森林などが吸収・貯留したCO2を有効活用することで、持続可能な社会の実現に向けた重要な役割を果たしています。

グリーンカーボンが注目される背景など、概要について解説します。

森林などが吸収・貯留したCO2

グリーンカーボンとは、陸地に存在する森林や山林、熱帯雨林などの植生が大気中のCO2を吸収し、貯留している炭素です。森林や山林、熱帯雨林などの植生は光合成を通じてCO2を取り込み、酸素を大気中に放出する重要な役割を担っています。

森林をはじめとする陸上植生は、生態系の基盤として地上の生物に食料を提供するなど、生物多様性の維持に不可欠な存在です。また、降雨時には雨水を長時間保持することで河川の流量調整を行い、水資源の安定供給に貢献しています。

近年、地球温暖化対策としてカーボンニュートラルの実現が世界的な課題となる中、グリーンカーボンは自然由来の炭素削減手段として注目されています。人工的な技術に頼らず、既存の自然生態系を活用したアプローチとして、森林保護や植林事業の重要性が再認識されているのが現状です。

グリーンカーボンが注目される背景

グリーンカーボンが注目される背景には、深刻化する気候変動問題への対応が世界的に必要となっていることが挙げられます。地球温暖化の進行を食い止めるためには、CO2の排出量削減が不可欠とされていますが、単純に排出量を減らすだけでは根本的な解決にはなりません。

仮に今後のCO2排出量をゼロに抑制できたとしても、これまでに大気中に蓄積された膨大な量のCO2は残存し続ける課題があります。排出削減と併行して、既に大気中に存在するCO2を積極的に吸収・除去する取り組みが重要視されるようになりました。

このような状況において、森林や植生による自然の炭素吸収能力を活用するグリーンカーボンが注目を集めています。人工的な技術に比べて費用対効果が高く、生態系保全との両立も可能なグリーンカーボンは、持続可能な気候変動対策として世界各国で重要な位置づけを占めています。

グリーンカーボンとブルーカーボンの違い

炭素を固定する自然環境には、陸上の森林などによるグリーンカーボンと、海洋・沿岸域によるブルーカーボンがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。

ブルーカーボンとはどのような仕組みなのか、また4つのブルーカーボン生態系の特徴や、グリーンカーボンとブルーカーボンの違いについて解説します。

ブルーカーボンとは

ブルーカーボンとは、海洋に生息する生物によって吸収・貯留された炭素を指し、海水に溶け込んだCO2を海洋生物が光合成によって取り込むことで形成されます。

ブルーカーボンの特徴的な点は、生態系の規模は比較的小さいものの、単位面積あたりのCO2吸収能力が極めて高いことです。海洋生物が光合成を通じて大気中のCO2を吸収し、それらの生物が死滅した後、死骸が海底に沈殿することで長期間にわたって炭素が固定化されます。

一方、グリーンカーボンは陸上の森林や植生によって貯留される炭素であり、広大な面積を持つ陸域全体での炭素蓄積が特徴です。両者は炭素を吸収・貯留する共通の機能を持ちながら、海洋と陸域と異なる環境で発揮される自然の気候変動対策として、それぞれ重要な役割を担っています。

4つのブルーカーボン生態系の特徴

ブルーカーボンを隔離・貯留する海洋生態系は、2009年に国連環境計画が公表した報告書「Blue Carbon」において、海草藻場、海藻藻場、湿地・干潟、マングローブ林の4つに分類されています。

それぞれの特徴は次の通りです。

ブルーカーボン生態系 特徴
海草藻場 比較的浅い海域で根と地下茎を発達させ、花を咲かせて種子による繁殖を行う
海藻藻場 海藻藻場は海中で生育する藻類による生態系
湿地・干潟 潮の満ち引きによって水陸が交互に現れる場所
マングローブ林 海底の泥層内で長期間にわたって炭素を蓄積する

海草藻場は、アマモなどの海産種子植物が形成する生態系で、比較的浅い海域で根と地下茎を発達させ、花を咲かせて種子による繁殖を行います。一方、海藻藻場は、コンブ場、ガラモ場、アラメ場が代表的な存在として知られています。

湿地・干潟は、食物連鎖によって結ばれた多様な生物が共存し、複雑な生態系を形成していることが特徴です。マングローブ林は、塩分を含む水域に適応した特殊な樹木群で、大気から直接CO2を吸収します。

出典:国土交通省/ブルーカーボン

グリーンカーボンとブルーカーボンの違い

グリーンカーボンとブルーカーボンは、現在では明確に区別されていますが、以前は両者とも「グリーンカーボン」の名称で一括して呼ばれていました。分類が変化したのは、2009年に国連環境計画が発表した報告書において、海洋・沿岸域の炭素吸収システムを独立した概念として「ブルーカーボン」と定義したことがきっかけです。

両者の最も顕著な違いは、炭素の貯留期間にあります。ブルーカーボンは海底の泥層や堆積物中で数百年から数千年の長期間にわたって炭素を安定的に保持できるのに対し、グリーンカーボンは森林火災や伐採、自然の分解過程により数十年程度で大気中に再放出される可能性が高くなっています。

また、単位面積あたりの炭素吸収量も両者には差があり、ブルーカーボン生態系は面積は小さいものの吸収能力が高いことが特徴です。ブルーカーボンは長期的な炭素固定に、グリーンカーボンは大規模な炭素吸収に、それぞれ重要な意義を持っています。

グリーンカーボンの現状と課題

気候変動対策として大きな期待が寄せられるグリーンカーボンですが、現状はさまざまな課題を抱えています。

森林や植生による炭素吸収・貯留を効果的に進めるためには、資源の不足や植林スペースの確保などの基本的な問題に加え、世界各地で深刻化している増加する森林破壊への対応が急務です。

グリーンカーボンの現状と課題について解説します。

資源の不足

グリーンカーボンは気候変動対策の重要な手段として注目されているものの、絶対的な資源量には限界がある現実に直面しています。現在、世界全体で1年間に大気中に排出される炭素量は約96億トンに達する一方、グリーンカーボンによる年間吸収量は約19億トンにとどまっています。

さらに、海洋・沿岸域のブルーカーボンと合わせても、両者の合計吸収量は約48億トンとなり、年間排出量の半分程度しかカバーできない状況です。自然による炭素吸収だけでは、現在の温室効果ガス排出レベルを相殺することが困難であることを示しています。

資源量の制約から、ブルーカーボンとグリーンカーボンのみに依存した気候変動対策では、持続可能な社会の実現には限界があります。自然由来のCO2吸収と並行して、根本的な排出量削減や革新的な技術開発など、多角的なアプローチが不可欠です。

植林スペースの確保

グリーンカーボンの拡大を図る上で、植林可能なスペースの確保は課題の一つです。日本では国土の約7割が森林に覆われているものの、新規に植林できる適地は決して豊富とは言えない状況です。既存の森林以外で植林を進めるためには、限られた国土を効率的に活用することが必要です。

課題に対する有効な解決策として、休耕地や耕作放棄地となった田畑の活用が注目されています。農業従事者の高齢化や過疎化によって管理が困難になった農地を森林に転換することで、新たな炭素吸収源の創出が可能です。

さらに、公園や街路樹の拡充、建物の屋上や壁面の緑化、企業や住宅敷地内での植樹など、都市環境に適応した多様な手法を組み合わせることで、限られた空間でもグリーンカーボンの増加に貢献できる可能性があります。

増加する森林破壊

グリーンカーボンの拡大を阻む深刻な課題が、世界規模で進行している森林破壊です。国連食糧農業機関が発表した「世界森林資源評価2020メインレポート」によると、1990年から2020年までの30年間で、世界の森林面積は日本の国土面積の約5倍に相当する1億7800万ヘクタール減少しました。

森林破壊のペースは依然として深刻で、2010年から2015年の期間においても年間330万ヘクタールの森林が消失し続けています。特に懸念されるのは、生物多様性の宝庫としても重要な役割を担っているアフリカと南米の熱帯雨林における急速な森林破壊の進行です。

現在、世界の森林の半分以上にあたる54パーセントが上位5か国に集中し、上位10か国で全体の66パーセントを占めている偏在状況も問題を複雑化しています。

出典:林野庁/世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要

グリーンカーボン活用のメリット

グリーンカーボン活用には次のメリットがあります。

  • 国内のポテンシャルが高い
  • 企業ブランディングの向上
  • 森林吸収Jクレジットの活用

それぞれのメリットの内容を解説します。

国内のポテンシャルが高い

日本におけるグリーンカーボン活用は、国内の豊かな森林資源を背景として、高いポテンシャルを秘めています。国土の約7割を森林が占める日本では、これらの森林を適切に保全し再生させることで、大気中のCO2吸収量を大幅に増加させられる可能性があります。

また、国内で生産される木材や木質バイオマスを積極的に利用することで、従来の化石燃料に代わる持続可能なエネルギー源として活用でき、結果的にCO2排出量の削減にもつながることもメリットの一つです。木材の循環利用は、森林の健全な育成サイクルを促進し、長期的な炭素固定効果を高める効果も期待されています。

さらに、日本は森林管理や林業技術において技術力とノウハウを蓄積しており、日本の知見を国内外で活用することでグリーンカーボンの潜在能力を最大限に発揮できる環境が整っています。

企業ブランディングの向上

グリーンカーボンを活用した取り組みは、企業のブランドイメージ向上に効果をもたらします。環境に配慮したプロジェクトを推進することで、企業は消費者や株主に対して環境意識の高い責任ある組織として自社をアピールできます。

近年、環境・社会・ガバナンスを重視するESG経営への関心が高まる中、グリーンカーボンへの取り組みは企業の持続可能性を示す重要な指標の一つです。

特に、グローバル化が加速する現代社会において、国内市場だけでなく海外の投資家に対する訴求力向上も期待できます。欧米を中心とした海外投資家の多くは、環境問題への取り組み姿勢を投資判断の重要な基準として位置づけており、グリーンカーボン活用は国際的な資金調達や企業評価の向上に直結する可能性があります。

森林吸収Jクレジットの活用

日本国内でグリーンカーボンを活用する際の重要な仕組みとして、森林吸収Jクレジットの存在が挙げられます。森林吸収Jクレジットは日本政府が発行する炭素オフセットクレジット制度の一種で、国内の森林によるCO2吸収量を客観的に評価し、その成果をクレジットとして認定する公的な制度です。

森林吸収Jクレジットの仕組みは、森林保全に積極的に取り組む事業者に対して、実際の森林によるCO2吸収量を科学的に測定・評価し、その結果に基づいてクレジットを付与するものです。

クレジットは他の企業や組織の炭素オフセットに利用できるため、森林管理者にとっては新たな収益源となり、森林保全活動の経済的持続性を高める効果があります。

グリーンカーボンの活用事例

高知県では、グリーンカーボンの効果を最大化するために、森林保全の基本となる間伐作業に積極的に取り組んでいます。間伐は適正な密度で森林を管理する重要な手法で、過密状態の森林から一部の木を計画的に伐採することで、残された木々が健全に成長できる環境を整備します。

高知県の取り組みは、実践的な森林管理にとどまらず、将来世代への環境教育にも力を注いでいる点が特徴的です。県内の小学校では児童を対象とした間伐体験教室を定期的に開催し、森林の役割や適切な管理方法について実体験を通じて学習する機会を提供しています。

高知県のような教育的アプローチは、子どもたちに森林保全の重要性を理解させるだけでなく、地域全体の環境意識向上にもつながります。

出典:カーボンオフセットフォーラム/森を元気にし、切った木は有効活用する

まとめ

本記事では、グリーンカーボンの基本概念から活用メリット、現状と課題について解説しました。グリーンカーボンは森林などが吸収・貯留した炭素のことで、気候変動対策として注目されていますが、資源量の限界や植林スペースの確保、世界的な森林破壊といった課題も存在します。

一方で、日本は豊富な森林資源と高い技術力を有しており、森林吸収Jクレジットの活用や企業ブランディングの向上など、多面的なメリットが期待できることも特徴です。建設業界においても、木材利用の推進や緑化事業への参入により、グリーンカーボン分野での新たなビジネス機会の創出が可能です。

建設業界では、入札段階や工事成績評点で施工時や竣工後の建築物においてCO2排出量の削減が評価され、加点につながる動きが生じています。また、建設会社からCO2排出量を開示し削減方針を示さないと、発注者であるデベロッパーから施工者として選ばれにくくなる状況も起きており、建設会社にとってCO2排出量の管理・削減は喫緊の課題です。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。 ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、
建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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