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【建設業向け】​​SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の概要と事例

【建設業向け】​​SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の概要と事例

SDGs(持続可能な開発目標)は世界的に推進されている概念であり、建設業界としても取り組んでいかなければならない要素のひとつです。SDGsの目標9では産業と技術革新の基盤構築に着目しており、建設業界としても注目するべき内容が含まれています。

本記事では、SDGsの目標9の概要や課題について解説します。また、実際にSDGsの目標9に取り組んでいる例も紹介しているので、SDGsに取り組む企業の方は参照してください。

SDGsの目標9の基本情報

SDGsの目標9の基本情報

SDGsの目標9である「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、インフラに着目し、誰もが平等に使える基盤構築を目指す目標を掲げているのが特徴です。ここでは、SDGsの目標9の概要からターゲットまで、詳しく解説します。

概要

SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、災害に強く丈夫なインフラを整備し、すべての人々がアクセスできるようにすることを重視しています。

東日本大震災のような大規模災害では、インフラの破壊により被害が拡大し、復旧にも長期間を要することが明らかになりました。大規模災害を通じて得た教訓から、自然災害やパンデミックなどの急なトラブルでも停滞することなく、即回復が可能なインフラ構築の重要性が認識されています。

また、目標9はイノベーションによる産業発展の推進も対象です。新技術の開発や導入を通じて、経済成長を促進するとともに、環境負荷の少ない持続可能な産業基盤の確立を目指しています

ターゲット

SDGsの目標9のターゲットとして、アフリカ諸国や内陸開発途上国、小さな島国の開発途上国に対する資金面での支援強化が挙げられます。該当する国は地理的・経済的制約から開発が遅れがちであり、特別な支援を必要としているのが特徴です。

開発途上国の災害に強いインフラ開発の推進も、SDGsの目標9のターゲットとされています。気候変動による災害リスクが高まる中、停滞することなく持続可能なインフラ整備は長期的な発展に欠かせません。

さらに、開発途上国での国内技術開発・研究・イノベーション支援も対象です。自国での技術力向上は、持続的な経済成長と自立につながる重要な要素です。また、開発途上国における情報通信技術へのアクセス拡大も対象としています。平等なアクセス権限は、教育や経済活動など多方面での機会創出につながり、格差是正に貢献します。

SDGsの目標9が必要な理由・背景

SDGsの目標9が必要とされる背景には、インフラ整備と持続可能な社会構築の関係があります。人々の暮らしを豊かにし、持続可能な社会を実現するためには、強靭なインフラ整備が欠かせません。

現状、開発途上国の一部地域では水や電気などの基礎的なライフラインだけでなく、医療サービスや教育機会さえ十分に得られない人々が多数存在しています。水道や電気など基本的なインフラが整わなければ、日常生活の質が低下するだけでなく、健康状態の悪化や労働環境の制約にもつながるため、インフラ整備は欠かせません。

国連広報センターの報告によれば、世界には電気を自由に使えない人が2022年段階で1,000万人増加(過去10間で初めて)しています。また、安全に管理された飲料水を利用できない人が20億人にものぼると予想されています。水や電気などの資源における状況を改善し、すべての人々が基本的なサービスにアクセスできる社会を構築するためには、目標9が掲げるインフラ開発とイノベーション推進が重要な役割を果たします。

参照:国際広報連合センター/持続可能な開発目標(SDGs)2024

SDGsの目標9達成による効果

SDGsの目標9達成による効果

SDGsの目標9達成による効果として、次の内容が挙げられます。

  • 安心して快適に暮らせる社会の実現
  • 生産性と所得の向上
  • 健康・教育面での成果改善
  • 経済の輪に加わる国・地域の増加
  • 情報社会の変化

ここでは、SDGsの目標9の達成で得られるそれぞれの効果について詳しく解説します。

安心して快適に暮らせる社会の実現

SDGsの目標9達成による効果は、安心して快適に暮らせる社会の実現を可能とします。目立った産業基盤がない開発途上国でも、インフラの拡充によって多くの人々が便利で快適な生活を送れます。

水や電気、通信網などの基本的なインフラへのアクセスが担保されることで、以下さまざまな視点で生活面の向上が期待できます。

  • 健康状態の改善
  • 教育機会の拡大
  • 経済活動の活性化

「産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標が達成されれば、世界中の国々がより均衡ある形で発展し、人々のより豊かな暮らしが実現可能です。

「産業と技術革新の基盤をつくろう」に基づくイノベーションの促進は新たな産業や雇用を創出し、経済成長をけん引するとともに、環境に配慮した持続可能な社会システムの構築にも貢献します。

生産性と所得の向上

開発途上国の発展により、新たな産業・技術の創出可能性が広がります。そして、新たな産業・技術の創出によって、地理的・経済的格差に縛られないより平等なグローバル社会の実現が可能です。様々な地域で独自のイノベーションが生まれることは、世界全体の多様性ある発展に欠かせません。

また、産業・技術分野で活躍する人材が増加すれば、地域や国全体に適切な経済循環が生まれます。先進国からの援助に依存せず自立した経済活動が可能になり、持続可能な発展の土台が形成されます。

さらに、産業基盤となる堅固なインフラが整備されることで作業効率が向上し、新たな取り組みへの時間的・経済的余裕の創出も可能です。結果、持続可能な社会に向けたビジネスモデルや問題解決策の具現化が促進され、さらなる発展へとつながっていきます。

健康・教育面での成果改善

インフラの充実は生活の質を向上させるだけでなく、子どもたちに不可欠な教育機会の提供にも直結する要素です。電気や通信網が整備されればデジタル教育ツールへのアクセスが可能になり、遠隔地でも質の高い学習機会が得られます。

また、安全な水や衛生設備の整備は健康状態の改善につながり、子どもたちが学校に通い続けられる環境を構築する要因です。さらに重要なのは、教育が単なる就職のためのツールではなく、ターゲット9の5が示すように、持続可能な科学技術開発を推進する研究者・開発者の育成にもつながる点です。

質の高い教育を受けた人材が増えることで、自国の課題に適した技術やイノベーションを生み出せる人材が形成され、長期的な技術自立と持続可能な発展の循環が生まれます。

経済の輪に加わる国・地域の増加

産業と技術革新の基盤が整備されることで、開発が遅れていた国や地域の人々が経済活動に本格的に参画できます。インフラの整備や技術へのアクセス改善により、地理的・経済的な障壁が低減され、より多くの人々が生産活動や市場に参加できる世界を実現可能です。

経済の輪に参加する人々が増えることは、単に参加者数の増加にとどまらず、経済活動全体の活性化をもたらします。多様な背景や視点を持つ人々の参加は新たな市場ニーズの発見や革新的なアイデアの創出につながり、経済全体のダイナミズムを高める要素となります。

そして、経済の輪が広がることで世界全体としてより強靭かつ包括的な経済システムが構築され、誰も取り残されない社会が実現可能です。

情報社会の変化

インターネット利用が困難だった人々に情報と知識への平等なアクセスが担保されることで、情報社会はさらに変貌します。これまで疎外されていた地域や層の人々が情報ネットワークに加わることで、情報の流れがより包括的になると予想されます。

遠隔地の農家がリアルタイムの市場情報にアクセスできるようになったり、地方の学生が世界中の教育コンテンツを利用できるようになったりすることは、格差是正と機会創出が進む要因です。

さらに、情報社会への参加者が増加することは、市場全体の活性化につながります。多様なバックグラウンドを持つ人々が情報交換や経済活動に参加することで、見過ごされがちだったニーズや独自の視点が共有され、イノベーションの源泉となります。

SDGsの目標9を阻む課題

SDGsの目標9を阻む課題

SDGsの目標9を阻む要因として、次の課題が挙げられます。

  • インフラ整備の不足・老朽化
  • インターネット環境の差
  • ICT技術の進度

ここでは、SDGsの目標9において世界が抱えている課題の詳細について解説します。

インフラ整備の不足・老朽化

SDGsの目標9を阻む課題であるインフラ整備の不足・老朽化は、深刻な問題です。世界には、依然としてインフラ整備が不十分な国や地域が多く存在しています。

多くの地域では安全な飲料水が十分に担保されておらず、健康リスクにさらされている住民が多くいます。また、極度の貧困状態にある人々は1日100円程度の極めて限られた予算で生活せざるを得ず、基本的なサービスへのアクセスも困難な状況です。

さらに、インフラの質の問題も深刻です。未舗装の道路は物流の妨げとなり、経済活動を制限します。耐久性の低い建物は、特に自然災害の多い地域では住民の安全を脅かす原因となりかねません。脆弱なインフラは不便なだけでなく、人々の命と生活を危険にさらし、地域の持続可能な発展を阻害しているのです。このため、インフラ整備の不足・老朽化の解消が課題とされています。

インターネット環境の差

インターネットは現代社会で不可欠なインフラで、インターネットへのアクセスの可否によって生じる格差は深刻です。インターネットにアクセスできないことは、以下さまざまな面で不利益をもたらします。

  • 教育機会の損失
  • 就労機会の制限
  • 健康情報へのアクセス不足
  • 行政サービスの利用困難

Global Connectivity Report 2022が示すように、2022年段階で世界の約29億人がインターネットにアクセスできない状況にあり、内90%が開発途上国に集中しています。デジタル化が進む世界で、多くの人々が情報社会から取り残されている現実を示すデータです。

インターネットアクセスの欠如は、グローバル経済への参加機会を制限し、開発途上国の持続可能な発展を妨げる大きな障壁です。

出典:Global Connectivity Report 2022

ICT技術の進度

地球規模でICT技術が急速に発展し、生活環境は今後大きく変化していくことが予測されています。変化は新たな機会をもたらす一方で、先進国と途上国間のデジタル格差を生む課題も浮き彫りにしています。現状では、先進国のICT技術は途上国と比較して大きく先行しており、先進国と途上国の格差をどのように縮小していくかが重要な課題です。

一方で、スマートフォンの普及は各国で格差が発生している状況に新たな可能性をもたらしています。パソコンが普及していない地域でも、スマートフォン経由でインターネットにアクセスする途上国の人々が増加しています。

モバイル端末向けの最適化を考える「モバイルファースト」の流れは固定インフラを必要としない形でのデジタル参加を可能にし、一部の地域ではデジタルリープフロッグ(技術段階の飛び越え)の現象も見られています

SDGsの目標9達成に必要なこと

SDGsの目標9達成には「グリーンインフラ」の導入が重要な役割を果たします。欧米を中心に世界的に注目を集めているグリーンインフラはアメリカ発祥の概念であり、自然の生態系機能を積極的に活用したインフラ整備のアプローチです。

アメリカのポートランドや欧州の各都市では都市緑化が進められており、土地の特性を活かした雨水貯蓄管の設置など、地域の自然条件を最大限に生かしたインフラ開発が行われています。

また、都市周辺の豊かな森林を保全・活用することで、微生物から大型動物まで多様な生物が織りなす生態系を維持しながら、気候変動に起因する暴風雨や土砂崩れなどの自然災害リスクを軽減できることもグリーンインフラのメリットです。

建設業界におけるSDGs目標9の取り組み事例

建設業界におけるSDGs目標9の取り組み事例として、以下3つの例を紹介します。

  • 清水建設株式会社
  • 鹿島建設株式会社
  • 大成建設株式会社

今後SDGsに関する取り組みを実施するうえで、それぞれの事例を参照してください。

清水建設株式会社

地震や巨大台風、豪雨などの自然災害リスクが高まる中、生活と事業を災害から守ることが求められています。

強靭な建物・インフラの構築を通じて、安全・安心でレジリエントな社会の実現に貢献していきます。

引用:シミズと創るSDGs|2022.06.15|清水建設

鹿島建設株式会社

鹿島建設は、カーボンニュートラルの実現に向け、低炭素型建設材料の開発と施工プロセスの見直しを推進しています。特に、CO2を削減する「カーボンリサイクル・コンクリート」の導入に注力しており、製造時に発生するCO2を吸収・固定化する技術を活用することで、大幅な排出削減を実現しています。このコンクリートは従来のものと同等の強度と耐久性を持ち、実際の建設現場でも採用が進んでいます。

施工プロセスの効率化にも取り組んでおり、ICTを活用した省エネ施工や、施工現場のエネルギー最適化を行うことで、無駄なエネルギー消費を削減しています。また、資材の輸送においても、輸送経路や方法の見直しを進め、CO2排出の抑制を図っています。

さらに、建設後の建物においても環境負荷を低減するため、高断熱材の使用や高効率設備の導入を推進し、冷暖房エネルギーの消費を削減しています。これにより、長期的な環境負荷の軽減が可能となります。

引用:建設業で活かせるカーボンニュートラル事例集|2025.02.06|EcoNiPass

大成建設株式会社

大成建設株式会社はSDGsへの対応強化のため4月1日付で「サステナビリティ総本部」を新設しました。多くのゼネコンでもSGDs対応は進んでいますが、環境経営推進室などいわゆる「室」レベルの組織であるケースが多いのですが、大成建設が新設したサステナビリティ総本部は建築総本部などと並ぶ組織であり、本業である土木・建築に匹敵する重要な位置付けとなっています。

これまで企業にとって環境配慮などは社会貢献活動であり、経営にとって余計なコストになっていた部分もあるのではないかと思います。しかし、今では環境対応をビジネスとして取り込むことで、企業の成長に直結させるサステナビリティ経営が必要となってきます。最近はこれをSX(サステナビリティトランスフォーメーション)と言います。

引用:建設業に求められるサステナビリティ経営 ~無視できないカーボンニュートラル戦略~|2022.12.14|株式会社日刊建設通信新聞社

まとめ

まとめ

本記事では、建設業界の方向けにSDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」について解説すると共に、SDGsの目標9達成によってどのような社会が実現できるのか、さらにどのような課題があるのかについても解説しました。SDGs目標9はインフラに着目し、誰もが平等に使える基盤構築及びイノベーションによる産業発展の推進を掲げていますインフラの整備及び新技術の開発や導入を通じて経済成長を促進するとともに、環境負荷の少ない持続可能な産業基盤の確立を目指しています。

建設業界としてSDGs目標9に取り組む事例も紹介していますので、SDGsの推進を検討している建設業者の方は、ぜひ参照してください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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