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建築にとってのサーキュラーエコノミーとは?有効な建築の取り組みや建材も解説!

建築にとってのサーキュラーエコノミーとは?有効な建築の取り組みや建材も解説!

建設業界では、大量の資材投入と廃棄物の発生が長年の課題となっており、持続可能な事業モデルへの転換が求められています。近年注目されているのが、資源を循環させるサーキュラーエコノミーの考え方です。

本記事では、建設業におけるサーキュラーエコノミーの概要や導入メリット、具体的な取り組み方法を解説します。また、実際に活用できるリサイクル建材も紹介していますので、環境負荷を抑えながら収益性の向上を目指す建設業の方は参照してみてください。

建築にとってのサーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー 建築

建築分野におけるサーキュラーエコノミーは、資源を循環させる持続可能な経済システムとして注目されています。従来の「作っては壊す」リニア型のモデルから、建材や資源を繰り返し活用する循環型へと転換する考え方です。

ここでは、サーキュラーエコノミーの概要と、建築業界が抱えるサーキュラーエコノミーに対する課題について解説します。

サーキュラーエコノミーの概要

サーキュラーエコノミーとは、資源を繰り返し活用することで廃棄物の発生を極力抑える経済システムです。従来の経済活動では、原材料を調達して製品を作り、使用後は廃棄する一方通行の流れが一般的でした。

しかし、直線的なモデルでは限りある資源が枯渇し、環境への負荷も増大します。そこで注目されているのが、使用済みの製品や素材を再び資源として循環させるサーキュラーエコノミーの仕組みです。具体的には、建築における長寿命化を図る設計、部品の交換や修理による延命、使用後の素材を原料として再生利用するなどの取り組みが含まれます。

資源の循環を通じて、新たな原材料の採掘量を削減し、廃棄物の量も最小限に留められます。結果として、環境保全と経済成長を両立させる持続可能な社会の構築につながると期待されている考え方です。

出典:環境省/第2節 循環経済への移行

建築業界が抱えるサーキュラーエコノミーに対する課題

建築業界では、サーキュラーエコノミーの実現に向けて課題を抱えています。建設プロジェクトは大規模な資材投入を必要とする一方で、膨大な量の廃棄物を生み出す産業です。建材として使用される木材を維持するには森林の伐採が避けられず、自然環境への影響が懸念されます。

さらに、既存建物の解体や道路の改修工事では、コンクリート片やアスファルト片、廃木材などが大量に発生します。これら廃材の適正処理には相応のコストが必要であるため、費用負担を避けるために不法投棄が行われるケースが後を絶ちません。

不法投棄は周辺環境の汚染を引き起こし、生態系への悪影響をもたらす要因となっています。建築業界が持続可能な循環型モデルへ移行するためには、廃材の適切な回収・再利用システムの構築と、経済的に成立する仕組みづくりが不可欠です。

サーキュラーエコノミーが建築にもたらすメリット

建築分野にサーキュラーエコノミーを導入することで、次のようなさまざまなメリットが期待できます。

  • 建材の高騰・枯渇に対する解決策
  • コストカット
  • 企業イメージの向上

ここでは、サーキュラーエコノミーが建築にもたらすメリットについて解説します。

建材の高騰・枯渇に対する解決策

近年、建材市場では価格高騰と供給不安が深刻化しています。新型コロナウイルス感染拡大を契機としたリモートワークの普及により、アメリカや中国で住宅需要が急増し、世界的な木材不足を招きました。ウッドショックと呼ばれる現象は、建材価格の急騰を引き起こしています。

加えて、日本は多くの建築資材をロシアからの輸入に依存していましたが、経済制裁によって調達ルートが遮断され、需給バランスが大きく崩れました。資源問題に対し、サーキュラーエコノミーの考え方が有効な解決策として注目されています。

建設段階から将来的な解体を見据えた設計を行い、使用する建材を取り外して再利用する取り組みなどが必要です。循環型の建築手法により、新規資材への依存度を下げ、価格変動や供給リスクに強い事業体制を構築できます。

出典:国土交通省/最近の建設業を巡る状況について【報告】

コストカット

サーキュラーエコノミーの導入は、建築企業の収益性向上にも貢献します。建材の調達から施工、販売に至るまでの一連の流れを効率化できるため、資源の無駄を省きます。

結果、新規に購入する原材料の量を減らせることで、調達コストの大幅な削減につながることもメリットの一つです。さらに、資源を有効活用する仕組みを整えることで、工事現場から発生する廃材の量を最小限に抑えられます。

廃棄物の処理には運搬費用や処分場への支払いなど相応の経費が必要ですが、発生量そのものを減らすことで経費の支出も削減できます。加えて、リユース可能な建材を計画的に回収・管理すれば、次のプロジェクトで再利用することにより、さらなるコスト圧縮も可能です。

企業イメージの向上

サーキュラーエコノミーへの取り組みは、企業の社会的評価を高める重要な要素です。環境保全や資源循環に積極的な姿勢を示すことで、持続可能な社会づくりに貢献する責任ある企業としてアピールできます。

顧客からの信頼獲得につながるだけでなく、投資家に対しても強いアピールポイントです。近年、ESG投資の重要性が高まっており、環境への配慮を重視する投資家は、循環型ビジネスモデルを採用する企業を積極的に支援する傾向にあります。

また、取引先企業との関係構築においても、サーキュラーエコノミーの実践は有利に働きます。サプライチェーン全体で環境負荷低減を目指す企業にとって、同様の価値観を持つパートナーとの協業は不可欠だからです。

サーキュラーエコノミー実現に有効な建築の取り組み

サーキュラーエコノミー 建築

サーキュラーエコノミーを建築分野で実現するには、具体的な取り組みを実践することが重要です。既存ストックの有効活用や環境負荷の少ない設計手法、自然由来の建材採用など、多様なアプローチが求められます。

ここでは、サーキュラーエコノミー実現に有効な建築の取り組みについて解説します。

既存建物の利活用

既存の建物を最大限に活用することは、サーキュラーエコノミー実現の最も効果的な方法です。建物を解体して新築するのではなく、定期的な点検や修繕を通じて長期間使用し続けることで、新たな資源投入や廃棄物発生を抑制できます。

建物の状態によっては、大規模な改修工事を施すことで機能を刷新し、現代のニーズに合った施設としての再生も可能です。特に海外では「アダプティブリユース」という概念が広まっており、歴史的価値のある建築物を単に保存するだけでなく、用途を変更しながら積極的に利用する取り組みが進んでいます。

例えば、古い工場をオフィスや商業施設に転用したり、倉庫を住宅やギャラリーとして再活用したりする事例が増えています。既存ストックの有効利用は、建物が持つ文化的・歴史的価値を守りながら、環境負荷を最小限に抑える持続可能な建築のあり方の一つです。

廃棄物を生み出さないようにつくる

サーキュラーエコノミーを実現するには、建築の計画段階から廃棄物を出さない仕組みを組み込むことが重要です。将来的な解体を見据えて部材を取り外しやすい構造にし、再利用可能な状態で回収できる設計を採用します。

使用する建材についても、リサイクルやリユースに適した素材を優先的に選定することで、資源の循環を促進できます。また、解体時には建材を損傷させずに取り外す技術やプロセスの開発が不可欠です。

従来の一括破壊による解体では、多くの建材が混合廃棄物となり再利用が困難でしたが、丁寧な分別解体によって素材ごとに回収できます。さらに、窓ガラスや配管材など、現場から出る全ての撤去材をリスト化して管理し、それぞれに適したリサイクル処理を検討する取り組みも広がっています。

バイオベースの資材活用

バイオベースの資材活用は、サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れた建築を実現する有効な手段です。植物由来の原料や再生可能な有機素材から製造されるバイオベースの建材は、石油や鉱物など枯渇性資源への依存度を低減できます。

従来の建築では、限りある地下資源を大量に消費してきましたが、バイオベース素材を採用することで、自然のサイクルの中で再生産可能な原料を活用した製品づくりが可能です。木質繊維を用いた断熱材や、植物油を原料とした塗料、竹やコルクなどの天然素材を加工した内装材などが実用化されています。

バイオベースの資材は成長過程でCO2を吸収するため、脱炭素の観点からも優れています。また、使用後は土壌に還元できるものもあり、廃棄物処理の負担軽減につながることもメリットの一つです。

建築に活用できるサーキュラーエコノミー実現に有効な建材

サーキュラーエコノミーを実現する建材として、さまざまな企業が革新的な製品を開発しています。主な建材は次の通りです。

提供会社 建材 詳細
株式会社エクシィズ 温かみのある色調が特徴的なリサイクルタイル
株式会社エクシィズ 陶冶 廃陶器のリサイクル率を100%まで高めた製品
文化シヤッター株式会社 テクモク 木材端材を再圧縮し、高密度な木質建材として再利用
太平洋プレコン工業株式会社 瓦ブロック 歩道や庭園の舗装材として地域景観との調和にも貢献
緑川化成工業株式会社 リアライト 再生ガラスを活用した装飾パネル
都築産業株式会社 圭-KEI- 稚内産の珪藻頁岩を原料とする壁面仕上げ材

革新的な建材は、資源循環と機能性を両立させた先進的な製品といえます。

建設業のサーキュラーエコノミーに関する事例

建設業界では、サーキュラーエコノミーの実現に向けて大手企業が先進的な取り組みを進めています。ここでは、鹿島建設株式会社、清水建設株式会社、大成建設株式会社の取り組みについて紹介します。

鹿島建設株式会社

鹿島(社長:押味至一)は、2012年度から環境省環境研究総合推進費(3J153001)による研究助成を受け、3者※1で共同開発した環境配慮型コンクリート「エコクリートR3(アールスリー)」を、神奈川県で施工中の「藤沢公民館・労働会館等複合施設建設工事」に大規模適用しました。建物躯体に約6,000m3を使用する初の本格適用です。

エコクリートR3は、これまで有効な手段がなく廃棄処分していた戻りコンクリート※2(以下、戻りコン)を原材料として再利用し、資源循環を図りながらCO2排出量を抑える画期的な環境配慮型コンクリートです。試算では、本工事で6,000m3使用したことにより、工事期間中に藤沢市で発生する戻りコンの廃棄量を約600トン縮減し、コンクリート製造時のCO2排出量は、一般的なコンクリートに比べ約480トン※3削減しました。

※1 鹿島、三和石産株式会社(神奈川県藤沢市、社長:中田泰司)、東海大学(笠井哲郎教授)
※2 受け入れ検査に使用したものなど、やむを得ない理由から使用されず工場に戻される生コンクリート
※3 樹齢40年の人工スギの森54.5haで、1年間に吸収される量に相当(林野庁HPより)

出典:環境配慮型コンクリート「エコクリート®R3」、初の大規模適用|2019.1.17|鹿島建設株式会社

清水建設株式会社

清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、サーキュラーエコノミーへの貢献を目的に、建設現場から排出された廃プラスチックをリサイクルしてカラーコーンを製作し、竣工後の建物や他の建設現場で再利用するマテリアルリサイクルの取り組みに着手しました。

この取り組みは、2022年度に実施した当社主催のアクセラレータープログラム「SHIMZ NEXT」でパートナー企業の1社に選定した(株)TBM<代表取締役 CEO 山﨑敦義>との協業プログラムとして推進するものです。初弾として、神奈川県相模原市内の物流施設の建設現場で使用した外壁保護フィルムの残材から500個のカラーコーンを製作。当該施設のほか、当社の建設現場やイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE」での再生利用を始めています。

当社は、グループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero2050」の中で、「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」の実現に貢献すべく、2050年までに自社活動による負の影響をゼロにするだけでなく、お客様や社会にプラスの環境価値を積極的に提供していくこと(Beyond Zero)を目指すべき姿として掲げました。資源循環社会の実現に向けては、建設廃棄物やオフィス廃棄物など自社事業による廃棄物の“最終処分量ゼロ”、建設資材の再生材料化など施設のライフサイクルにわたる資源循環の実現を目指しています。

出典:建設現場から排出された廃プラスチックをカラーコーンにマテリアルリサイクル|2024.11.27|清水建設株式会社

大成建設株式会社

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、建設副産物の資源循環を目的に2017年より現場導入してきた「建設副産物巡回回収システム」に、日本通運株式会社(社長:堀切智)が保有する静脈物流のノウハウを適用して、運用スキームの再構築を行いました。新たに日本通運の専用回収容器「NRボックス」と充実した物流ネットワークを活用することで、建設現場から発生する建材端材を効率的に回収し建材製造工場へ運搬することが可能となり、建設副産物から建材製品への資源循環が一層促進されることとなります。

通常、建設現場から発生した建材端材は中間処理場で分別処理されますが、これらは分別できてもリサイクルすることが困難であり、その大半が埋立処分されています。そのため、これら建材端材をリサイクルするには、メーカーの製造工場で建材の原料等に再資源化できる「広域認定制度」の利用が最も有効な方法とされています。

当社では同制度を利用するとともに、利用時の運搬効率向上のため、建材メーカー各社の端材運搬ルールを共通化し、複数現場を同一車両で巡回する「建設副産物巡回回収システム」を運用してきました。

しかし、既存システムでは、運搬効率やマテリアルリサイクルの全般的な向上が認められたものの、繁忙期と閑散期による物流調整や車両の安定的な確保など、改善すべき課題も残されていました。

そこで今般、石膏ボード端材の収集運搬サービスなど広域認定制度による建材端材回収に関して実績とノウハウを保有する日本通運と連携し、当社の既存システムに日本通運の物流サービスを組み込むことで、運用スキームを再構築し、上記の課題を解消いたしました。

出典:「建設副産物巡回回収システム」の運用スキームを再構築|2023.1.13|大成建設株式会社

まとめ

サーキュラーエコノミー 建築

本記事では、建設業におけるサーキュラーエコノミーの重要性と具体的な取り組みについて解説しました。建設業界は大量の資材を使用し、多くの廃棄物が発生する産業であり、資源循環の仕組み構築が喫緊の課題です。

サーキュラーエコノミーの導入により、建材価格の高騰や資源枯渇への対策、コスト削減、企業イメージの向上などのメリットが期待できます。既存建物の利活用や解体を前提とした設計、バイオベース資材の活用など、実践的なアプローチも広がっています。

建築に活用できるサーキュラーエコノミー実現に有効な建材も紹介していますので、環境負荷の低減と事業の持続性を両立させたい建設業の方は、参照してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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