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建設工事の脱炭素評価とは?加点制度の仕組みから具体的な対策まで徹底解説

建設工事の脱炭素評価とは?加点制度の仕組みから具体的な対策まで徹底解説

建設業界では、脱炭素への対応が工事成績評定や入札評価に影響を与える場面が増えており、企業の競争力を左右する重要なテーマとなっています。本記事では、建設工事における脱炭素評価の仕組みや地域別の加点ポイント、現場で実践できる具体策、経営面でのメリットについて解説します。

また、大手建設会社による先進的な業界事例も紹介していますので、脱炭素対応を本格的に進めたい建設業の方は参照してみてください。

建設工事における「脱炭素評価」の現状と重要性

脱炭素評価 建設工事

建設分野は、日本のCO2排出量の中でも大きな割合を占める産業の一つです。建設機械の燃料消費や資材製造時の排出など、工事に伴う排出量は多岐にわたります。

こうした状況を背景に、国土交通省や自治体では公共工事の評価制度の中に脱炭素評価として脱炭素の観点を取り入れる動きが進んでいます。環境配慮の取り組みを評価項目に加えることで、建設業界全体の排出削減を促す仕組みが整備されつつあります。

建設工事における脱炭素評価は、公共工事での加点制度や入札優遇などインセンティブの拡大を背景に、重要性が年々高まっています。環境配慮への取り組みは企業イメージの向上や長期的なコスト削減にもつながるため、経営戦略としても注目されているのが現状です。

ここでは、建設業界特有の排出量算定の考え方や評価の仕組み、導入メリットについて解説します。

公共工事におけるインセンティブと評価の仕組み

公共工事における脱炭素評価は、環境配慮に積極的な企業を適正に評価し、業界全体の脱炭素を推進するうえで重要な役割を果たしています。国土交通省では、建設工事で脱炭素に取り組む企業に対し、総合評価落札方式の入札や工事成績評定において優遇措置を設ける方向で議論を進めています。

2022年には有識者や建設業団体を交えた懇談会が開催され、試行工事の事例や海外の先進的な取り組みについて情報共有が行われました。議論が進められている制度のもとでは、基本的な施工管理の徹底に加え、脱炭素に関連する加点項目を的確に把握し対応することが、高い評価を得るためのポイントです。

今後、インセンティブ制度がさらに整備されることで、建設業界における環境対策の底上げが期待されています。

出典:国土交通省/発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会

企業のイメージアップと長期のコスト削減メリット

建設工事において脱炭素評価への対応を進めることは、環境面だけでなく経営面にもメリットをもたらします。CO2排出量の削減に積極的に取り組む姿勢を社内外に示すことで、環境意識の高い発注者や取引先からの信頼を獲得しやすくなり、企業ブランドの向上につながります。

さらに、脱炭素の取り組みは将来的な経費の圧縮にもつながることがメリットの一つです。現場での燃費効率を意識したGX建機の車両運用や、事務所における電力使用量の見直し、太陽光発電設備の導入などの施策は、環境負荷の低減とランニングコストの抑制を同時に実現できる手段です。

短期的にはイメージ向上による競争力の強化、長期的にはコスト構造の改善の観点から、脱炭素への投資は企業にとって合理的な経営判断といえます。

建設業界特有のGHG排出量算定ガイドライン

建設工事における脱炭素評価を正確に行うためには、業界の特性に即した排出量の算定基準が欠かせません。建設業界では、土木・インフラ分野を中心に、工事段階で発生するCO2の算定手法を体系化する動きが加速しています。

国土技術政策総合研究所が策定したインフラ建設時の排出量算定に関するマニュアル案は、現場ごとに異なる条件を踏まえた実務的な指針として注目を集めています。加えて、国土交通省が公表した土木工事の脱炭素に向けたアクションプランでは、建設現場の脱炭素達成を見据えた具体的な方向性が打ち出されました。

ガイドラインの整備が進むことで、各企業が統一された基準のもとで排出量を把握し、効果的な削減策を講じる土台が築かれつつあります。

出典:国土交通省/「インフラ分野における建設時のGHG 排出量算定マニュアル案」を作成しました

建設工事における地域別・自治体別の脱炭素評価加点ポイントと支援制度

建設工事における脱炭素評価の加点基準や支援制度は、地域や自治体によって特色が異なります。ここでは、地域別の評価ポイントと支援制度の概要について解説します。

関東・甲信越地方の工事成績評定における特徴

建設工事における脱炭素評価は、全国的に工事成績評定への影響力を増しており、自治体ごとに独自の加点基準が設けられています。関東・甲信越地方を例に見ると、傾向が顕著に表れています。

東京都では環境マネジメントシステムの国際規格やSBT認定の取得、エコ・ファースト制度への参画など第三者認証が評価の対象です。埼玉県でも、中小企業向けの脱炭素認証やエコアップ認証など、地域独自の制度を活用することで加点を得られる仕組みが整備されています。

一方、千葉県では低炭素型の建設機械導入や再生可能エネルギーの活用、新技術の採用など現場レベルでの取り組みが重視されています。同じ関東地方内でも評価の着眼点は多様であり、受注を目指す地域の基準を事前に把握しておくことが重要です。

出典:東京都/総合評価方式の一部改正について

脱炭素を促進する国の補助金・支援金制度

脱炭素評価への対応を進めるうえで、国が提供する補助金や支援金制度を把握し活用することは、企業の負担軽減に直結します。建設工事の現場で利用可能な制度としては、産業車両の脱炭素を後押しする事業や、建築物のZEB化・省CO2化を加速させるための補助制度が設けられています。

また、再生可能エネルギーの主力化とレジリエンス強化を目的とした事業や、排出量削減に資する設備導入を支援するSHIFT事業なども、幅広い業種で活用が可能です。加えて、国土交通省は技術導入に関する支援策の拡充を進めており、大手企業だけでなく中小規模の建設会社にとっても、脱炭素関連の投資に踏み出しやすい環境が整いつつあります。

地方自治体が推進する独自のゼロカーボン戦略

建設工事の脱炭素評価において、地方自治体が独自に策定するゼロカーボン戦略は、地域ごとの施工基準や評価指標に大きな影響を与えています。各自治体がさまざまな施策を設けておりますが、一部の例として次のようなものがあります。

自治体 施策
長野県 県独自の気候危機対策方針に基づき、建設現場における環境配慮型の施工手法を積極的に推奨
山梨県 CO2排出量の見える化に焦点を当てた独自の取り組みを展開し、企業の脱炭素活動を数値で可視化・評価できる仕組みを構築
新潟県 脱炭素社会の実現を目的とした条例が制定され、カーボンゼロに向けた具体的な施策が進行中

自治体ごとの戦略は、建設業界にとって工事受注時の差別化要因となるだけでなく、地域の環境目標に沿った事業展開を促す原動力にもなっています。各地域の制度を正確に理解し、対応策を講じることが今後ますます求められます。

出典:長野県/長野県ゼロカーボン戦略~第四次長野県地球温暖化防止県民計画、第一次長野県脱炭素社会づくり行動計画~

建設工事の現場で実践できる脱炭素評価を高める具体的な取り組み

脱炭素評価 建設工事

建設工事の現場では、脱炭素評価の向上に直結する実践的な取り組みが求められています。低炭素型建設機械の導入や省燃費運転の徹底に加え、環境配慮型建材の選定やリサイクルの推進、さらにDX化を活用したエネルギー管理の効率化など、多角的なアプローチが重要です。

ここでは、現場で実行可能な具体策について解説します。

低炭素型建設機械の導入と省燃費運転の徹底

建設工事の脱炭素評価を高めるうえで、施工現場における機械の運用方法を見直すことは最も即効性のある施策の一つです。国土交通省は工事の脱炭素推進に向けた試行案件の選定を進めており、低炭素型建設機械の活用は今後ますます重要な評価要素となることが見込まれます。

現場で取り組みやすい対策としては、省燃費を意識した運転の徹底やアイドリングストップの励行が挙げられ、追加投資を伴わずCO2排出量の削減に貢献できる点がメリットです。さらに、次世代燃料への切り替えも有効な手段であり、バイオディーゼル燃料の活用を推進する業界団体の動きも活発化しています。

機械の選定から日常の運転管理まで、段階的に取り組みを広げていくことで、脱炭素評価の着実な向上につなげられます。

環境配慮型建材の選定とリサイクルの推進

建設工事の脱炭素評価を向上させるには、使用する建材の見直しが効果的です。低炭素コンクリートをはじめとする環境配慮型建材の採用は、施工段階でのCO2排出量を大幅に抑制できます。

神奈川県のように、認定資材の活用が工事成績評定の加点対象となる自治体もあり、受注面での優位性にもつながります。加えて、廃棄物の適正処理やリサイクル資材の積極的な利用を通じて循環型社会への貢献を示すことも、企業の環境対応力を評価する重要な要素です。

出典:神奈川県/神奈川県県土整備局建設リサイクル資材評価実施要領

建設現場のDX化によるエネルギー管理の効率化

建設工事における脱炭素評価の精度を高めるうえで、DX化によるエネルギー管理の効率化は欠かせない取り組みです。燃料データからCO2排出量を自動算定するシステムを導入すれば、現場の事務負担を抑えながら正確な数値把握が可能です。

AIを活用して工事費と排出量を同時に算出するツールも登場しており、排出量の可視化サービスを導入する企業も増加しています。デジタル技術の活用が、脱炭素戦略の立案と実行を大きく後押ししています。

建設業者が知っておくべき脱炭素評価と経営の結びつき

建設工事の脱炭素評価は、日々の施工管理だけでなく経営判断にも深く関わっています。LCC(ライフサイクルコスト)を重視した投資の考え方や、サステナブルファイナンスを活用した資金調達の選択肢を理解することが、持続的な成長につながります。

LCC(ライフサイクルコスト)重視の投資判断

建設工事の脱炭素評価を経営に活かすには、初期コストだけでなくLCCを重視した投資判断への転換が重要です。設備導入時の費用に加え、光熱費などの運用コストの将来的な変動も試算に織り込むことで、より精度の高い投資回収計画が立てられます

さらに、減価償却スケジュールとLCCの整合性を意識した財務計画を策定することで、長期的な資産価値の維持と脱炭素対応の両立が可能です。

サステナブルファイナンスと資金調達の選択肢

脱炭素評価への対応は、建設工事の受注面にとどまらず、企業の資金調達における選択肢を広げる重要な要因となっています。国土交通省が政府庁舎の建設において生涯CO2排出量の計測・評価に着手したことは注目すべき動きであり、公的機関の取り組みが民間金融機関の融資基準にも波及していく可能性は十分に考えられます。

環境への配慮は、もはやCSRとしての位置づけにとどまらず、入札時の評価や工事成績評定、さらには取引の継続判断にまで直結する実務的な条件へと変化しつつあるのが現状です。

環境経営が求められる時代において、グリーンボンドやサステナビリティ・リンク・ローンといったサステナブルファイナンスの活用は、脱炭素と経営基盤の強化を同時に実現するための有力な手段といえます。

出典:国土交通省/建築物におけるLCAの推進について

出典:環境省/グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン

建設工事における「脱炭素評価」に関する建設業界事例

建設工事における脱炭素評価の重要性が高まるなか、大手建設会社を中心に先進的な取り組みが進んでいます。鉄スクラップの水平リサイクルによるアップフロントカーボン削減や、CO2を活用した特殊コンクリートのインフラ施工への適用など、実践的な事例が生まれています。

ここでは、建設業界における具体的な脱炭素事例について紹介します。

株式会社大林組

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、建設資材における脱炭素社会・循環型経済の実現に向けた取り組みの一環として、大林組が請け負う解体工事で発生する鋼材(鉄スクラップ)を、大林組が施工する新築工事において循環利用を行うため、建材商社、金属リサイクル事業者、電炉鉄鋼メーカーと連携し、解体から鉄スクラップの発生を経て、電炉鋼材として再生し、再び建設現場で利用するまでの輸送ルートと事業者選定を最適化する水平リサイクルフローの構築に着手しました。

この取り組みの第一弾として、東京都港区北青山三丁目の解体工事で発生する鉄スクラップ約1,000tを、水平リサイクルフローに適用し、大林組新築工事で循環利用します。

建設現場における鉄スクラップのリサイクルフローは、一般的に発生する建設現場から、金属リサイクル事業者による回収、輸送を経て、電炉鉄鋼メーカーで再生し、建材商社などを介して再び鋼材(電炉鋼材)となり、供給されることはありましたが、これまで各社の経済合理性が優先され、輸送時CO2排出量の削減を考慮したプロセスになっていませんでした。

今回、鉄スクラップの水平リサイクル実現にあたり、連携各社の協力により、発生する建設現場から、電炉鋼材として新たな建設現場に供給されるまでの輸送ルートと事業者選定を最適化するフローを確立し、輸送時CO2排出量の削減に貢献します。また、昨今リサイクル原料の来歴や品質確認の履歴など、製品や素材の環境配慮度を可視化して証明・共有することを求めるトレーサビリティやデジタル製品パスポートのニーズが高まる中、従来把握することができなかった鋼材のトレーサビリティについて、水平リサイクルフローに大林組が関与する部分の情報提供が可能になります。

出典:建設現場で発生する鉄スクラップの水平リサイクルフローを構築し、アップフロントカーボン削減を推進|2024.11.26|株式会社大林組

大成建設株式会社

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、阪神高速道路株式会社との共同研究による試験施工として、阪神高速道路14号松原線一部区間(喜連瓜破-三宅間)において、CO2排出量収支をマイナス(カーボンネガティブ)にするカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を用いた国内初の場所打ち施工を実施し、中央分離帯を構築しました。本工事では移動式コンクリート製造プラントを用い、施工現場で製造した「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を通常のコンクリートと同様に場所打ちで施工し道路構造物の構築が可能であることを実証しました。

当社が2021年に発表したカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」は、セメントの代わりに高炉スラグを用い、大気中のCO2を吸収して製造した炭酸カルシウムを混合することでCO2を内部に固定し、材料に起因するCO2排出量収支がマイナスになるカーボンネガティブを可能としました。このコンクリートは、これまで工場製作によるプレキャスト部材での活用にとどまっていましたが、通常のコンクリートと同様の手順により場所打ち施工でも使用可能となれば、脱炭素社会への更なる貢献が期待できます。

そこで当社は、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の場所打ち施工適用にあたり、外気温が30℃を超える夏季(2024年7月18日)に、配合および施工法を検討したうえで、暑中コンクリートとしての適切な施工管理のもと、阪神高速道路一部区間の中央分離帯を打設・構築し、従来と同様の手順で場所打ち施工できることを確認しました。(表1、写真1~3参照)また、施工後に実施したモニタリングおよび耐久性評価試験により、施工後の品質を確認しており、長期的なモニタリングおよび耐久性評価試験にも着手しています。

出典:「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を高速道路構造物の場所打ち施工に国内初適用|2025.5.22|大成建設株式会社

まとめ

脱炭素評価 建設工事

本記事では、建設工事における脱炭素評価の現状や重要性、地域別の加点ポイントと支援制度、現場で実践できる具体的な取り組み、そして経営との結びつきや業界の先進事例について解説しました。

脱炭素評価への対応は、建設業界において入札時の競争力強化や工事成績評定の向上に直結するだけでなく、企業イメージの向上や長期的なコスト削減、さらには資金調達の選択肢拡大にもつながります。

国や自治体の補助金制度、DXを活用したエネルギー管理の効率化など、活用できる仕組みは数多く存在します。建設業で脱炭素への取り組みを本格化させたい方は、ぜひ参照してみてください。

リバスタでは建設業界のCO2対策の支援を行っております。新しいクラウドサービス「TansoMiru」(タンソミル)は、建設業に特化したCO2排出量の算出・現場単位の可視化が可能です。ぜひこの機会にサービス内容をご確認ください。

この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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