環境経営の推進において、LCA(ライフサイクルアセスメント)とCFP(カーボンフットプリント)は欠かせない評価手法です。建設業界でも建築物や建材の環境負荷を定量化する取り組みが加速しており、両手法の違いを正しく理解することが重要です。
本記事では、LCAとCFPの基本概念や算定方法、両者の違いについて解説します。また、LCAとCFPの算出における注意点も解説していますので、脱炭素経営やグリーン調達を推進したい建設業の方は参照してみてください。
目次
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは

LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスが環境に与える影響を定量的に評価する手法です。LCAの概要を理解し、LCAの進め方を把握することで、建設プロジェクトにおける環境負荷の可視化が可能です。
LCAの基本から実践方法について解説します。
LCAの概要
LCAは、製品やサービスが環境に与える影響を包括的に評価する手法として、持続可能な経営において重要な役割を果たしています。LCAの手法では、原材料の調達段階から製造工程、流通過程、使用段階、最終的な廃棄や再生に至るまで、すべてのプロセスにおける環境負荷を定量的に測定します。
LCAの計算には、インベントリデータベースや環境負荷係数など専用のデータベースが活用され、各段階で発生するCO2排出量やエネルギー消費量などの数値化が可能です。建設業界においても、建築物のライフサイクル全体を通じた環境影響の把握にLCAが活用されています。
出典:環境省/再生可能エネルギー及び水素エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン
LCAの進め方
LCAを効果的に実施するためには、次の4つのステップに沿って進めることが重要です。
- 目的と活用方法を定義
- 算定範囲を明確化
- インベントリ分析
- 環境影響評価
まず、LCAの目的と活用方法を明確に定義し、評価対象となる製品やサービスの機能・性能を特定しなければなりません。次に、ライフサイクルフロー図を作成して算定範囲を明確化した上で、インベントリ分析を実施します。
インベントリ分析では、各プロセスにおける原材料やエネルギーなどのインプットと、大気排出物や廃棄物などのアウトプットを定量化し、環境負荷の可視化が必要です。その後、ISO14040などの国際規格や経済産業省・環境省のガイドラインに準拠した環境影響評価を行い、最終的にLCAの目的に応じた解釈を導き出します。
LCAが有効となるケース
LCAが有効となるケースとして、企業の脱炭素における実効性の検証が挙げられます。脱炭素の実現に向けて炭素税などの経済的施策が検討される中、最も重要なのは地球環境を保護することです。
LCAを活用することで、企業が掲げる脱炭素の取り組みが本当に炭素排出量の削減につながっているのか、また生物多様性が適切に保全されているのかなどの指標を客観的に評価できます。建設業界においても、建築物の環境性能を謳う際に、LCAによる定量的な裏付けがあることで説得力が増します。
CFP(カーボンフットプリント)算定と組み合わせることで、製品やサービスのライフサイクル全体における環境貢献度を明確に示すことが可能となり、事業の持続可能性を追求する上で極めて有効な手法です。
CFP(カーボンフットプリント)とは
CFP(カーボンフットプリント)は、製品やサービスのライフサイクル全体のCO2排出量を定量化し表示する仕組みです。CFPの概要を把握し、CFPの取り組みの流れを理解することで、企業の脱炭素経営を推進できます。
CFPの基本から実践的な活用方法について解説します。
CFPの概要
CFPは、製品やサービスのライフサイクル全体を通じたCO2排出量を数値化し、消費者にわかりやすく示す仕組みです。CFPを算定することで、原材料調達から製造、流通、使用、廃棄に至る各段階のうち、どのプロセスで排出量が多いのかを特定でき、効果的な削減施策の立案が可能です。
また、算定結果をパッケージや開示資料に表示することで、企業のCO2管理状況や削減への取り組み姿勢を明確に示せます。建材や建築物のCFP情報を公開することで環境配慮型の製品選択を促進し、LCAと組み合わせた総合的な環境評価の実現につなげられます。CFPは、脱炭素社会の実現に向けた重要な指標として機能する仕組みです。
CFPの取り組みの流れ
CFPに取り組む際には、次に示す段階的なプロセスを踏むことが成功のポイントです。
- 明確な目的を設定
- 算定対象となる製品を決定
- CO2排出量を定量的に算出
まず、自社を取り巻く消費者や取引先といったステークホルダーとの関係性を可視化し、2050年カーボンニュートラル達成やグリーン調達推進など明確な目的を設定します。次に、算定対象となる製品を決定し、原材料調達から工場生産、流通・販売、顧客での使用・維持管理、廃棄・リサイクルに至るまでの製品の流れを詳細に把握しなければなりません。
さらに各プロセスを細分化し、LCAを活用して工程ごとのCO2排出量を定量的に算出します。建材の製造段階から施工、運用、解体までの各フェーズにおけるCFP算定を通じて、環境負荷の大きい箇所を特定し、効果的な削減策を講じられます。
CFPが有効となるケース
CFPが有効となるケースとして、製品の環境負荷情報を客観的に開示する場面が挙げられます。例えば、ISO 14025:2006に基づくタイプⅢ環境ラベルがあります。ISO 14025は製品の環境負荷の定量的データを表示する規格であり、タイプⅢ環境ラベルと共にその商品の環境情報が明示されます。環境ラベルは製品の環境性能の優劣を判定するものではなく、CFPの数値データを透明性高く公開することを目的とした企業の自主的な取り組みです。
環境ラベルプログラムはSuMPOによって「SuMPO環境ラベルプログラム」として運営されており、統一的な基準のもとで情報開示が行われています。建材メーカーが製品のCFP情報を環境ラベルとして公開することで、設計者や施工者がLCAに基づいた環境配慮型の資材選定を行いやすくなります。
CFPは製品の環境負荷を定量的に示し、サプライチェーン全体での脱炭素を促進する有効な手段です。
LCAとCFPの違い

LCAとCFPは、どちらも環境負荷を評価する手法ですが、目的と適用範囲には明確な違いがあります。CO2排出量算定時の評価対象を理解し、表示方法の違いを把握することで、それぞれの手法を適切に活用できます。
LCAとCFPの特徴を比較しながら、両者の相違点と使い分けについて解説します。
CO2排出量算定時の評価対象
LCAとCFPは評価対象となる環境影響の範囲において違いがあります。LCAでは、CO2による気候変動への影響だけでなく、オゾン層破壊、資源枯渇、酸性化など多岐にわたる地球環境問題を包括的に評価します。
一方、CFPはLCA手法をベースとして環境負荷を定量的に算定しますが、評価対象をCO2が気候変動に与える影響のみに絞り込んでいる点が特徴です。CFPでは、原材料調達から廃棄に至る各工程のCO2排出量を個別に算定し、合計することで製品全体の排出量を求めます。
建設業界においても、LCAで総合的な環境性能を評価しつつ、CFPで脱炭素の進捗を明確に示すなど使い分けが有効です。
表示方法の違い
LCAとCFPは算定結果の表示方法においても違いがあります。LCAは環境負荷全体の排出量算定を目的としているため、算出結果は排出量の総計として表示されます。一方、CFPではCO2排出量の実質的な影響を示すため、リサイクル活動やバイオ素材の使用によって削減された排出量を負の値として表示する点が特徴的です。
バイオ素材に固定されたCO2量を差し引いてゼロとし、控除量を欄外に記載するなど、削減効果を負の値、排出量を正の値として明示します。木材などのバイオ素材を活用した建築物のCFP算定において、控除表示によって効果を可視化できます。CFPはLCAと比較して削減努力や環境貢献度をより明確に示す表示方法を採用しています。
LCAとCFPの算出における注意点
LCAとCFPの算出において重要な注意点として、自社製品の算定結果と他社製品の算定結果を直接比較することは禁止されています。なぜなら、たとえ同じ製品であっても算出時の前提条件や評価範囲の設定が異なれば、結果が大幅に変化する可能性があるためです。
使用するデータベースの種類、システム境界の設定方法、配分ルールの違いなどが影響します。自社と他社の算定結果を安易に比較すると、実際には環境改善効果がないにもかかわらず効果があるように見せかけるグリーンウォッシュにつながる恐れがあります。
建設業界においても、建材のLCAやCFP情報を活用する際には、同一の基準や認証プログラムのもとで算定された数値同士を比較することが必要です。透明性と信頼性を担保するためにも、算定条件の統一が求められます。
LCAとCFPに関する建設業界事例
LCAとCFPは建設業界において、環境負荷削減と脱炭素を推進する重要なツールとして活用されています。建設業界の各企業における先進的な取り組みを通じて、LCAやCFP算定の実践例を確認できます。各社の具体的な事例について紹介します。
鹿島建設株式会社
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出典:中規模オフィスビルの新築から解体までの工事に伴うCO2排出量を35%削減|2024.10.31|鹿島建設株式会社
前田建設工業株式会社
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出典:LCA評価支援システム「CO2-Scope」を開発~BIMデータ活用により迅速な建築物LCA評価および比較検討を可能に~|2024.7.5|前田建設工業株式会社
株式会社安藤・間
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出典:ISOに準拠した建築物LCAで、EPDを取得|2025.8.5|株式会社安藤・間
まとめ

本記事では、LCA(ライフサイクルアセスメント)とCFP(カーボンフットプリント)の基本概念から実践方法、両者の違いまでを解説しました。LCAは製品やサービスのライフサイクル全体における多様な環境影響を評価する手法であり、CFPはCO2排出量に特化した指標です。
建設業界においては、建築物や建材の環境性能を定量的に示すためにLCAとCFPの活用が不可欠です。原材料調達から施工、運用、解体までの各段階における環境負荷を可視化することで、効果的な削減策の立案や環境配慮型の資材選定を可能にします。2050年カーボンニュートラル実現に向けて、脱炭素経営を推進したい建設業界の方は参照してみてください。
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この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。








