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グリーンインフラとは?グレーインフラとの違いや課題の解決策を解説!

グリーンインフラとは?グレーインフラとの違いや課題の解決策を解説!

近年、環境保全と社会基盤整備を両立させる手法として、グリーンインフラが建設業界で注目を集めています。自然の持つ機能を活用することで、防災・減災効果や生態系保全が期待できる一方、導入にはさまざまな課題への対処が必要です。

本記事では、グリーンインフラの基本概念やグレーインフラとの違い、注目される背景、導入のメリットと課題について解説します。また、大手建設会社による先進的な取り組み事例も紹介していますので、持続可能なインフラ整備や環境配慮型の事業展開を検討されている建設業の方は、参照してみてください。

グリーンインフラとは

グリーンインフラ 建設

グリーンインフラは、自然環境が持つ多様な機能を社会基盤整備に活かす新しい概念として注目を集めています。グリーンインフラとは自然の機能や仕組みを活用したインフラであることや、グレーインフラとの違いについて解説します。

グリーンインフラとは自然の機能や仕組みを活用したインフラ

グリーンインフラは、自然が持つ機能や仕組みを社会基盤整備に積極的に取り入れる概念です。グリーンインフラの手法により、防災・減災効果の向上と同時に、持続可能な社会の実現が期待されています。

具体的な取り組みとしては、土砂流出を抑制する棚田の保全活動や、豪雨時の雨水管理に貢献する道路植栽の整備などが挙げられます。都市部における、オフィスワーカーの憩いの場となる緑地や水辺空間の創出もグリーンインフラの一種です。

自然環境を活用したインフラ整備は、地域の復興支援や住民の生活の質向上にもつながります。さらに、SDGsが目指す自然共生型の持続可能な社会の構築において重要な役割を担う取り組みとして、建設業界でも導入が広がっています。

グレーインフラとの違い

グレーインフラは、コンクリートや金属などの無機物を用いた人工構造物を指す概念です。グレーインフラは規格化された材料による施工が可能なため、道路や堤防、トンネルなどの社会基盤を迅速に整備できるメリットがあります。

一方で、近年は構造物の老朽化問題や、自然環境を排除したことで生じる環境破壊、都市型災害のリスク増大、住民の心理的な閉塞感などグレーインフラにおける課題が顕在化しています。課題に対応するためには、グレーインフラにグリーンインフラの考え方を組み合わせたハイブリッド型のアプローチが必要です。

両者を効果的に融合させることで、迅速な整備ができる従来の強みを保ちながら、自然が持つ多様な機能を取り入れた社会基盤の構築が可能です。グレーインフラとグリーンインフラをあわせた統合的な視点は、より安心・安全で持続可能な暮らしの実現に向けた重要な考え方となっています。

グリーンインフラが注目される背景

グリーンインフラが注目を集める背景には、国内外の環境課題への対応と自然災害からの教訓があります。日本では令和元年7月に国土交通省が「グリーンインフラ推進戦略」を公表したことで、広く認識されるようになりました。

また、東日本大震災において、海岸の松林が津波の勢いを緩和し被害軽減に貢献した事例が報道されたことも、自然環境の防災機能への関心を高める契機となっています。被害軽減の実例は、自然の持つ力を社会基盤整備に活かす重要性を示しました。

さらに令和5年9月には「グリーンインフラ推進戦略 2023」が発表され、ネイチャーポジティブや脱炭素など世界的な環境目標への対応が盛り込まれています。気候変動や生物多様性の喪失など地球規模の課題に対し、グリーンインフラの普及推進が一層加速しています。

出典:国土交通省/グリーンインフラ推進戦略

グリーンインフラのメリット

グリーンインフラ 建設

グリーンインフラの導入は、環境保全と社会基盤整備を両立させる多面的な効果をもたらします。建設業界において持続可能な開発が求められる現代、重要性は一層高まっているのが現状です。

地球温暖化への貢献や生態系の保全、自然の力を活用した取り組みがもたらす具体的なメリットについて解説します。

地球温暖化対策への貢献

グリーンインフラの導入は、地球温暖化対策として重要な役割を果たします。なぜなら、近代化の過程で進行したコンクリート中心の都市開発により自然環境が失われたことが、気候変動の一因と考えられているためです。

自然環境を取り入れたまちづくりを推進することで、植物や水、土壌が本来持つ機能が回復します。緑地による蒸散作用や水辺の冷却効果により、都市部で深刻化するヒートアイランド現象の緩和が期待できます。

自然の働きによって都市の気温上昇が抑えられれば、冷房使用量の削減につながり、結果としてCO2排出量の抑制にも貢献することがメリットです。建設業としても単なる構造物の整備ではなく、自然環境と調和した社会基盤の構築が持続可能な社会の実現に向けた有効な手段として認識されています。

生態系の保全

グリーンインフラによる生態系保全は、単純に緑地や水辺を増やすだけでなく、自然本来の機能を活かした取り組みが求められます。既存の森林や河川、沿岸部の環境を大規模に改変してしまうと、生物の生息地が失われ、生態系の崩壊を招く恐れがあるためです。

重要なのは、自然の遷移過程や復元力を十分に考慮した整備です。グリーンインフラの視点に基づいてインフラを構築することで、環境の自己修復機能を備えた持続可能な社会基盤の形成を可能とします。

これにより、人の手による維持管理の負担を抑えながら、長期的に機能するインフラの実現につながります。生物多様性への配慮と社会基盤整備を両立させる手法として、生態系保全の視点を組み込んだグリーンインフラの重要性が高まっているのが現状です。

自然の力を活用

グリーンインフラの核心は、自然が持つ力を積極的に活用することにあります。自然環境や生態系がもたらす恵みは「生態系サービス」と呼ばれ、社会が抱えるさまざまな課題の解決手段として注目されています。

生態系サービスの要素は次の通りです。

生態系サービス 内容
供給サービス 食料や水、観賞植物やペットなども含まれる
調整サービス ヒートアイランド緩和などの大気質調整、水質浄化など
文化的サービス 自然景観の保全や科学や教育に関する知識など
基盤サービス 遺伝的多様性の維持など

生態系サービスの考え方は「自然を基盤とした解決策(NbS:Nature-based Solutions)」として世界的な潮流となっており、インフラ整備の新たな方向性を示しています。従来の人工的な構造物のみに依存する手法から転換し、自然環境が本来備えている機能を社会基盤に組み込むアプローチです。

建設業界においても、環境負荷の低減と社会課題の解決を同時に達成する手法として、自然の力を活用したインフラ整備の重要性が高まっています。

出典:環境省生物多様性センター/生物多様性と生態系サービス

グリーンインフラの課題

グリーンインフラの課題として次の内容が挙げられます。

  • 初期コスト
  • 地域住民との調整
  • 評価方法

建設業界で持続可能な社会基盤整備を進めるためには、課題を正しく理解し対応することが不可欠です。

初期コスト

グリーンインフラの導入において、初期コストの高さが課題です。規格化されたコンクリートを用いるグレーインフラでは、規模や予算に応じた施工計画を比較的容易に立てられますが、グリーンインフラは異なるアプローチが必要です。

グリーンインフラは地域固有の特性や自然素材が持つ個体差を考慮した複雑な設計が求められるため、計画段階から専門的な知見と時間を要します。特に都市部のコンクリートに囲まれた環境で自然を再現する場合、生態系の維持や植物の健全な生育を阻害しない配慮が不可欠となり、技術的な難易度も上がります。

さらに都市部では地価が高騰しているため、十分な緑地スペースを保有するだけでも多額の費用が必要です。初期投資の負担がグリーンインフラの普及を妨げる要因となっており、長期的な効果とコストバランスを見極めた判断が求められています。

地域住民との調整

グリーンインフラの導入には、地域住民との調整も課題の一つです。グリーンインフラの整備には従来のインフラ以上の追加費用が発生するケースが多く、財源を税金で賄うには住民の理解と協力が不可欠です。現状では、住民と円滑に合意形成を図るための仕組みが十分に整備されていません。

また、単年度予算主義を基本とする行政の仕組みでは、長期にわたる整備が必要なグリーンインフラへの予算配分が困難な状況です。財源にも限りがあるため、大規模な推進が進みにくい実態があります。

そのため、事業の効果や必要性を住民に分かりやすく説明し、長期的な視点でのメリットを共有することが求められています。建設業界においても、地域コミュニティとの対話を重視し、透明性の高いプロセスを通じた合意形成の手法を確立していくことが、グリーンインフラ普及のポイントです。

評価方法

グリーンインフラの普及には、適切な評価方法の確立が課題として挙げられます。新しい社会基盤として地域に導入するためには、計画・設計・施工・維持管理の各段階で、安全性や機能性、費用対効果を適切に評価する手法が必要です。

機能評価においては、自然環境を正確に評価しインフラとして求められる性能を担保する必要がありますが、専門的な知識がなければ判断が難しい項目が多く存在します。さらに、評価手法自体が確立されていない機能も残されており、統一的な基準づくりが求められていることも課題の一つです。

グリーンインフラを多くの地域で展開するには、専門家以外でも扱いやすい簡易な評価法の開発が不可欠です。同時に、実務者が取り入れやすい設計・施工方法の標準化も必要とされています。

グリーンインフラの課題解決策

グリーンインフラ 建設

グリーンインフラの課題解決には、住民参加型の取り組みと資金調達の工夫が有効です。市民団体を中心とした保全活動や啓発活動を通じて、住民が主体的に維持管理に関わる体制を構築することで、長期的な運営が可能です。

地域でグリーンインフラを推進するには、住民を含む関係者が自らのビジョンを共有し検討することが求められます。他地域の先進事例を学ぶ機会を提供することで、住民の理解が深まり、参加型の整備体制が実現します。

資金面では、補助金や助成金など支援制度の活用が課題解決のポイントです。環境省・国土交通省・農林水産省が連携してグリーンインフラに活用可能な支援制度を整理しているため、制度を積極的に利用することで、初期コストの負担軽減が期待できます。

グリーンインフラにおける建設業の事例

グリーンインフラの普及に向けて、大手建設会社による先進的な取り組みが各地で進んでいます。鹿島建設株式会社、清水建設株式会社、大成建設株式会社における具体的な事例について紹介します。

鹿島建設株式会社

国土交通省と農林水産省が公募した「都市と緑・農が共生するまちづくりに関する調査」に、循環型まちづくりを見据えた農空間活用について狛江市とともに提案し、採択されたものです。市内の緑地・農地が持つ多様な機能を活用し、様々な都市課題を解決する取組みについて実証調査を行いました。

●       ミミズコンポストを導入することによって地域で発生する有機性廃棄物を堆肥化し、畑で野菜づくりに使うというリサイクルループを実現。

●       農業従事者や小学校と連携し、市内の飲食店から回収したコーヒー滓(かす)でヒラタケを栽培。

●       飲食店、公共施設、小学校においてホップ苗を使った緑化キットによる栽培を実施してもらい、市内各所に緑のカーテン(日除け)を作ると同時に収穫した毬花で地ビールを製造。

市内の様々な主体が関わり、付加価値のある生産物を作る過程で、ごみ削減、資源循環、緑陰形成、環境教育などを実現するCSA(Community Supported Agriculture:地域に支えられた農業)の実証調査を行い、自治体と連携して自立循環型のビジネスを含めたまちづくりを進めました。

出典:主要な実績のご紹介|鹿島建設株式会社

清水建設株式会社

グリーンインフラ官民連携プラットフォーム(国土交通省主幹)が主催する第4回グリーンインフラ大賞において、当社、国立研究開発法人国立環境研究所、富里市経済環境部環境課、認定特定非営利活動法人アースウォッチ・ジャパン、特定非営利活動法人NPO富里のホタル、おしどりの里を育む会の5団体による連名応募「八ツ堀のしみず谷津~産官学民の連携・共創による湿地の再生と活用~」が、国土交通大臣賞を受賞しました。

グリーンインフラ大賞とは、グリーンインフラへの取り組み事例を表彰し、広く情報発信することを目的に、国土交通省が創設した顕彰制度です。第4回目となる今回は、グリーンインフラに関する実施済みの事例および、グリーンインフラのビルトインに向けた企画、計画に関する事例を対象に審査が行われました。

「八ツ堀のしみず谷津~産官学民の連携・共創による湿地の再生と活用~」の取り組みは、当社が中心となり、研究機関や行政、NPO、市民団体と連携し、荒廃した谷津田を再生するものです。2021年4月以降、「八ツ堀のしみず谷津」と命名した千葉県富里市の谷津において、月1回の管理作業を通じ、水循環や多様な動植物の生息、生育の場の提供といった多様な機能を有する湿地のグリーンインフラづくりを進めています。地域固有の自然を維持するだけでなく、新たな「人と自然のかかわり方」を構築すべく「リビングラボ」のアプローチを採用したことで、都市部との共創や自然体験、越境学習の場の創出など、さまざまな機能や価値が生み出されています。

出典:「八ツ堀のしみず谷津」が第4回グリーンインフラ大賞「国土交通大臣賞」を受賞|2024.2.7|清水建設株式会社

大成建設株式会社

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、雨水浸透・貯留機能の高い植栽基盤材を用いた外構創出技術「T-GI rain garden」を開発しました。本技術により、都市部における水害を抑制し、緑地創出による多様な機能を発揮するグリーンインフラの整備が可能となります。

近年の異常気象の増加などに伴い、河川の氾濫や都市部での水害が多発するようになり、従来の河道内※2における対応だけでなく、流域全体での治水対策が求められています。その対策の一つとして、自然が有する多様な機能をインフラ整備に活用するグリーンインフラの取組みが進められており、都市部では雨水を浸透させ一時的に貯留する機能を備えた緑地としてレインガーデン※3などが整備されてきています。しかし、従来のレインガーデンでは雨水を地中に浸透させる際、多くは浸透性の高い砂利のような基盤材を用いており保水性が低いため、基盤材に植栽することが困難で緑地面積が狭くなることや、植栽可能であっても生育できる植物が限られてしまうという課題がありました。

そこで、当社は、雨水の浸透性と貯留性を併せ持つ新しい植栽基盤材を用いた外構施設創出技術「T-GI rain garden」を開発し、その有効性を実証試験により確認しました。

出典:雨水浸透・貯留機能の高い植栽基盤を用いた外構創出技術「T-GI rain garden」を開発|2022.9.7|大成建設株式会社

まとめ

グリーンインフラ 建設

本記事では、自然の機能を活用したグリーンインフラの概念や、従来のグレーインフラとの違い、注目される背景について解説しました。地球温暖化への貢献や生態系保全などのメリットがある一方で、初期コストや地域住民との調整、評価方法の確立などの課題も存在します。

建設業界においては、課題を解決しながら、住民参加型の取り組みや補助金制度の活用を通じて、持続可能なインフラ整備を推進することが必要です。大手建設会社による先進事例も増えており、環境と調和した社会基盤づくりの実現に向けた動きが加速しています。

グリーンインフラは、建設業の未来を担う重要な概念です。環境配慮型の事業展開を検討されている建設業の方は、参照してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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