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欧州電池規則とは?具体的な内容や建設業に与える影響を解説!

欧州電池規則とは?具体的な内容や建設業に与える影響を解説!

欧州電池規則は、EU市場で流通する電池製品に対して環境負荷の低減と資源循環を義務付ける規制です。2023年8月17日に発効し、2024年2月18日から、カーボンフットプリントの申告やリサイクル材の使用、デューデリジェンスの実施など、段階的に適用されています。このため、電動建設機械や現場用蓄電システムの普及が進む建設業界においても、規制への対応は避けられません。

本記事では、欧州電池規則の背景と目的、具体的な要求内容、日本企業が直面する課題について詳しく解説します。また、実務対応のための4つのステップや詳細な施行スケジュールも解説していますので、欧州市場への進出を検討している建設機械メーカーや電動化を推進する建設会社の方は参照してみてください。

欧州電池規則とは

欧州電池規則

欧州電池規則は、EU市場で流通する電池製品の環境負荷低減を目的とした規制です。2023年8月に施行された欧州電池規則は、従来の電池指令を強化し、原材料調達から製造、リサイクルまでのライフサイクル全体を管理します。

欧州電池規則の概要、規則制定の背景、従来の電池指令との違いについて解説します。

欧州電池規則の概要

欧州電池規則は、環境保護と資源循環を両立させる新しい法的枠組みとして機能しています。規則の特徴は、EU市場で電池製品を流通させる全ての事業者に対し、日本企業を含めて厳格な義務を課す点にあります。

欧州電池規則を構成する柱は具体的に次の4つです。

欧州電池規則の柱 内容
サプライチェーン・デューデリジェンス コバルトやリチウムなどの高リスク原材料について人権・環境リスクの調査と是正が求められ、第三者検証の取得も必須
カーボンフットプリント管理 CO2排出量の算定・公表に加え、将来的な上限値規制への対応が必要
デジタル登録システム QRコードを通じて製品情報と環境データをデータベースに記録し、トレーサビリティを担保
リサイクル材料の利用推進 再生材料の使用割合目標が設定

欧州電池規則を構成する要件により、電池産業全体の持続可能性が大幅に向上することが期待されています。

欧州電池規則の背景

欧州電池規則が誕生した背景には、EUの環境政策における転換があります。2019年に発表された欧州グリーン・ディールは、環境配慮と経済成長の両立を目指す政策であり、主要施策である循環型経済行動計画の考え方が欧州電池規則に色濃く反映されています。

規則制定の直接的な契機は、2006年に発効した電池指令の限界にありました。従来の指令は水銀やカドミウムなど有害物質の販売規制と使用済み電池のリサイクル率向上に重点を置いていましたが、電子機器の急速な普及と気候変動対策としての電動化推進により、電池需要は飛躍的に増加しています。

2020年12月から循環型経済行動計画の一環として規則の改正審議が本格化し、バッテリーのライフサイクル全体を持続可能なものにする明確な目的のもと、新規則が施行されました。

欧州電池規則と従来の電池指令との違い

欧州電池規則と従来の電池指令の根本的な違いは、規制の範囲と実効性の強化にあります。2006年に施行された電池指令は、適用範囲や規制内容が限定的であり、急速に拡大する電池需要に十分対応できていませんでした。

新規則への移行により、大きく変化したのは適用範囲の拡大です。従来は自動車用や産業用バッテリーが主な対象でしたが、新規則では製品組み込み型電池まで規制対象となり、電池産業全体を包括的に管理する仕組みが構築されました。

さらに、カーボンフットプリント算定義務が新たに導入され、製造段階だけでなくライフサイクル全体での環境負荷の定量化が求められています。原材料調達の透明性も強化され、デューデリジェンスの実施が義務化されたことで、責任ある調達プロセスの確立が不可欠です。

欧州電池規則で定められた内容

欧州電池規則は、電池製品の持続可能性を担保するため、多岐にわたる具体的な要求事項を定めています。各原材料における再資源化率の目標値導入、バッテリーパスポートの導入、デューデリジェンス方針など欧州電池規則で定められた内容について解説します。

出典:日本貿易振興機構/EU バッテリー規則とドイツを中心としたバッテリー生産・リサイクルの動き

カーボンフットプリント(CFP)申告義務

欧州電池規則におけるカーボンフットプリント(CFP)申告義務は、電池製品の環境負荷を定量的に示す重要な要件です。CFPとは、製品のライフサイクル全体の温室効果ガス排出量をCO2に換算して表示する仕組みであり、原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄に至るまでの全段階での排出量を包括的に評価します。

CFP導入により、製品ごとのCO2排出量が明確に可視化されるため、消費者は環境配慮型製品を選択しやすくなることがメリットです。

建設現場で使用される電動工具や建設機械のバッテリーについても、CFP情報の開示が求められるため、調達担当者は環境性能を踏まえた意思決定が可能です。最終的には、脱炭素実現に向けた市場メカニズムの形成に貢献する制度として機能します。

出典:環境省/カーボンフットプリント全般

リサイクル成分の使用割合

欧州電池規則では、資源循環を促進するため、リサイクル成分の使用割合に関する明確な数値基準が設定されています。EU域内でバッテリーを使用した製品を販売する場合、コバルト、鉛、リチウム、ニッケルの4種類の主要原材料について、リサイクル由来の割合を公表する義務が課されます。

具体的な数値目標は、次に示す通り段階的に引き上げられる予定です。

数値目標
2031年から ●       コバルト:16%

●       鉛:85%

●       リチウム:6%

●       ニッケル:6%

2035年から ●       コバルト:26%

●       鉛:85%

●       リチウム:12%

●       ニッケル:15%

 

建設機械や電動建設機器に使用されるバッテリーも基準を満たす必要があり、リサイクル由来であることの立証責任が求められます。製造工場ごと、年度ごと、さらにはバッテリーモデルごとに詳細な報告が必要となるため、トレーサビリティの担保が重要な課題です。

廃棄されたバッテリーの回収率

欧州電池規則では、廃棄されたバッテリーの回収率について明確な数値目標が設定されており、製造者に対して使用後の製品管理まで責任を負うことを求めています。携帯型バッテリーについては、2027年末までに63%、2030年末までに73%と段階的な回収率目標が義務化されており、従来の規制と比較して厳格化された基準です。

規制のポイントは、バッテリー製造元の責務範囲の拡大にあります。従来は製品の製造と販売が主な責任範囲でしたが、欧州電池規則では使用後の回収についても積極的な取り組みが求められます。

回収システムの構築や消費者への情報提供、回収拠点の設置など、製品ライフサイクル全体を通じた責任が課されていることが特徴です。建設現場で使用される電動工具用バッテリーなど、業務用途の製品についても同様の回収体制整備が必要です。

各原材料における再資源化率の目標値導入

欧州電池規則では、資源循環の実効性を高めるため、原材料ごとに再資源化率の具体的な数値目標が設定されています。リチウムについては、電気自動車の急速な普及により需要増加が見込まれることから、厳格な目標値が導入されました。

当初EUは2025年までに35%、2030年までに70%の目標を掲げていましたが、目標数値が引き上げられ、最終的に2027年までに50%、2031年までに80%の高い基準が設定されています。

目標値引き上げの背景には、電動化が加速している市場動向があります。電気自動車やハイブリッド車の普及に伴い、リチウムイオン電池の需要は今後も増加し続けると予測されており、新規採掘のみでは持続可能な供給が困難になる可能性が指摘されていることが理由です。建設機械の電動化も進展しており、建設業界においてもリチウム電池の使用量は増加傾向にあります。

バッテリーパスポートの導入

バッテリーパスポートは、欧州電池規則における要件の1つであり、電池製品の完全なトレーサビリティを実現するシステムです。バッテリーパスポートは、原材料の採掘から製造、リサイクル、再資源化に至るまで、製品のライフサイクル全体の情報が電子記録として保存されます。対象となるのはEV用電池、2kWh以上の産業用電池、LMT用電池であり、2027年2月18日から適用開始です。

記録される情報は欧州電池規則に規定されており、モデル共通情報と製品固有情報の両方が含まれます。サプライチェーン全体で情報共有が可能となり、多数の事業者が関わる複雑な流通経路でも確実なトレーサビリティが担保されることもメリットです。

バッテリーパスポートによって、登録情報を活用した効率的な資源回収とリサイクルが実現し、循環型経済に貢献します。なお、企業情報保護のため、QRコードやブロックチェーン技術を活用した堅牢なセキュリティ対策が検討されています。

デューデリジェンス方針

欧州電池規則におけるデューデリジェンスは、企業に課せられる注意義務および責務として、サプライチェーン全体での人権・環境配慮を徹底的に求める制度です。対象となる原材料は、コバルト、鉛、リチウム、ニッケルなど、電池製造に不可欠な主要物質であり、生産プロセス全体でリスク管理が義務化されています。

企業が対応すべき責務は、環境リスクと社会リスクの2つの側面に分かれます。

リスク 内容
環境リスク ●       自然環境や生物多様性への影響評価

●       騒音問題への対処

●       工場の安全性担保

社会リスク ●       人権問題への配慮

●       適切な労働環境の担保

●       採掘地域の先住民の社会生活への影響最小化

バッテリー原材料の生産段階において、環境・社会リスクを適切に特定し、必要な是正措置を講じることが企業の責務として明確に規定されています。サプライチェーンの透明性担保と第三者検証を通じた責任ある調達が実現されることが期待されています。

欧州電池規則が建設業に与える影響

欧州電池規則

欧州電池規則は、建設業界にも影響を及ぼします。まず、建設機械の電動化への影響です。欧州電池規則では電動建設機械に搭載されるバッテリーに対して厳格な環境基準やリサイクル・廃棄に関する規定が強化されており、日本の建設機械メーカーは対応するための技術開発やサプライチェーンの全面的な見直しを迫られています。

電動ショベルやクレーン、フォークリフトなどの電動化が進む中、バッテリー調達先の選定や廃棄プロセスの構築には相当なコスト増が見込まれます。一方で、環境配慮型の建設機械技術を確立することで、世界市場において日本の技術力をアピールする好機です。

次に、EU域の現場で使用される蓄電システムへの影響です。建設現場の電力供給に活用される定置型蓄電池や、電動工具用バッテリーについても、持続可能性、性能、耐久性に関する厳格な基準が適用されます。

関連記事:https://www.tansomiru.jp/media/case/mag_1117/

欧州電池規則のスケジュール

欧州電池規則は2024年2月18日の発効から段階的に要件が強化される長期的な規制スケジュールです。

時期 内容
2025年 ●       CFP申告義務が開始

●       サプライチェーン・デューデリジェンスが義務化

2027年 ●       バッテリーパスポート制度が開始

●       リチウム50%の再資源化効率達成

2028年 CFPの上限値規制が施行
2031年 最低含有率が法的に義務化

建設機械用バッテリーも基準に準拠する必要があり、業界全体での対応が急務です。2033年以降はさらなる基準強化が予定されており、継続的な技術革新が求められます。

欧州電池規則への実務対応ステップ

欧州電池規則への対応には、4つの段階的なステップが必要です。

欧州電池規則への実務対応ステップ 内容
範囲の定義 CFP算定の対象となる自社製品の範囲を「機能単位」と「宣言範囲」で明確に定義
データ収集 1次データを収集し、サプライヤーからも排出量や算定条件などの詳細情報を取得する体制を構築
LCA算定ツールの導入 ISO14040/14044に準拠し、サプライチェーン全体のCFPを一元管理できる信頼性の高いLCA算定ツールを導入
CFP算定報告書を作成 より高い信頼性を担保するため第三者検証機関による検証を実施

検証機関の選定にあたっては、適切な認証取得や業界での実績を総合的に評価することが求められます。

まとめ

欧州電池規則

本記事では、欧州電池規則の概要から具体的な要求事項、実務対応のステップまで解説しました。欧州電池規則は、EU市場で電池製品を流通させる全ての事業者に対し、カーボンフットプリントの申告、リサイクル材の使用割合、デューデリジェンスの実施、バッテリーパスポートの導入など、厳格な義務を課す包括的な環境規制です。

建設業界においても、電動建設機械や現場用蓄電システムの普及に伴い、規則への対応は避けられません。バッテリーサプライチェーン全体でのCFP算定、責任ある原材料調達、使用済み電池の回収体制構築など、多岐にわたる取り組みが必要です。

EU市場での事業展開を計画している建設機械メーカーや、電動化を推進する建設会社の方は、早期の準備開始に向けて参照してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

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