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GTL燃料とは?メーカーの保証状況や導入の流れを解説

GTL燃料とは?メーカーの保証状況や導入の流れを解説

建設業界では環境規制の強化やカーボンニュートラルへの対応が求められる中、天然ガス由来のクリーン燃料であるGTL燃料が注目を集めています。GTL燃料は既存の建設機械にそのまま使用でき、CO2削減や有害物質の低減など優れた環境性能を発揮します。

本記事では、GTL燃料の特徴や軽油との違い、主要建機メーカーの保証状況、使用メリットとデメリットを解説します。また、実際の導入手順や注意点も解説していますので、建設現場での環境負荷低減やクリーンエネルギー導入を検討している方は参照してみてください。

GTL燃料とは

GTL燃料

GTL(Gas to Liquids)燃料は、天然ガスを原料として化学合成によって製造される次世代の液体燃料です。従来のディーゼル燃料である軽油が原油から精製されるのに対し、GTL燃料は天然ガスを燃料として製造されるため、製造プロセスそのものが異なります。また、気体である天然ガスを液化することで、燃料として扱いが容易になります。

天然ガスを燃料として製造される仕組み、GTL燃料と軽油の違い、GTL燃料の特徴について解説します。

天然ガスを燃料として製造される

天然ガスを原料とするGTL燃料は、環境性能に優れた次世代の合成燃料として世界的に注目を集めています。従来の石油由来燃料とは異なり、天然ガスを化学的に液化する製造プロセスを経ることで、極めてクリーンな燃料特性を実現しているのが特徴です。

優れた環境性能が評価され、フランスやオランダ、ドイツなど欧州の環境先進国では、すでにプレミアムディーゼルやクリーンエネルギー燃料として広く認知されています。環境メリットとしては、CO2排出量の削減効果、燃焼時に煤が発生しない点、さらに万が一流出した場合でも無毒性で生分解性が高い安全性が挙げられます。

GTL燃料は環境規制が厳しい地域での使用に適しているだけでなく、持続可能な社会の実現に向けた重要な選択肢として位置づけられている燃料です。天然ガスの豊富な資源を活用しながら、環境負荷を低減できる点で、GTL燃料は従来の化石燃料に代わる有力な代替燃料といえます。

GTL燃料と軽油の違い

GTL燃料と軽油には、環境性能や燃料特性において明確な違いがあります。具体的な違いは次の通りです。

  • CO2排出量
  • 高いセタン価
  • 耐寒性
  • 保存安定性

最も注目すべき点は環境負荷の低さで、GTL燃料は従来のディーゼル燃料と比較してCO2排出量を8.5%程度削減できることが実証されています。

また、高いセタン価を持つことが特徴です。セタン価とは燃料の自己着火性を示す指標で、数値が高いほど着火しやすく、エンジンの始動性が向上します。そのため、GTL燃料は、特に冬場や低温環境下でのエンジン始動がスムーズです。

実際、マイナス30℃の環境下でも使用可能な耐寒性を備えており、寒冷地での運用において大きなアドバンテージを有しています。さらに、保存安定性にも優れており、4年間品質が変化しない長期貯蔵性もあります。

出典:日本建設業連合会/建設作業所における軽油代替燃料の使用事例集

GTL燃料の特徴

GTL燃料は、硫黄分・金属分・芳香族分を一切含まないパラフィン系燃料であり、非毒性で環境に優しい特性を持つクリーンな燃料です。特徴として、既存のインフラやエンジンをそのまま活用できる点があります。

特別な改造や設備投資を必要とせず、現在使用している建設機械などのオフロード車両にそのまま給油して使用できるため、導入のハードルが低いのが特徴です。このため、企業や事業者は大きなコスト負担なく環境対応を進められます。

さらに、燃焼性能の面でも優れており、車両やエンジンの汚れの原因となる煤がほとんど発生しません。日常的なメンテナンス負担の軽減にもつながる重要なポイントです。加えて、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、粒子状物質(PM)などの有害な排ガス成分を大幅に低減する効果が実証されています。

GTL燃料におけるメーカーの保証状況

GTL燃料を建設機械で使用する際には、各メーカーの保証対応状況を事前に確認することが重要です。建設機械の主要メーカーであるCATERPILLAR(キャタピラー)、KOMATSU(コマツ)、日立建機・コベルコ建機・住友建機の、GTL燃料の使用に関する見解や保証条件について解説します。

CATERPILLAR(キャタピラー)

CATERPILLAR(キャタピラー)は、GTL燃料の使用に対して明確な保証体制を確立しているメーカーです。米国の親会社および国内のキャタピラーグループ会社の両方で正式に保証されており、GTL燃料使用に関する保証文書も発行済みの万全の対応を取っています。

トラックローダをはじめとする建設機械において、GTL燃料が問題なく使用可能であることが公式に示されています。さらに、GTL燃料だけでなく、100%再生可能ディーゼル、HVO(水素化植物油)など次世代のクリーン燃料についても使用可能と認めていることが特徴です。

正式な保証文書が発行されていることで、ユーザーは安心してGTL燃料を導入できる環境が整っています。

出典:日本キャタピラー/トラックローダ

KOMATSU(コマツ)

KOMATSU(コマツ)においても、GTL燃料の使用は正式に認められており、確実な保証体制が整っています。コマツ本体に加えて、コマツとCumminsの合弁会社であるIPA(エンジン開発部門)でも承認されているため、エンジン性能面での信頼性も担保されています。

さらに、GTL燃料使用に関する保証文書が発行済みであり、ユーザーは安心して導入を進められることが特徴です。

コマツは建設機械事業における電動化を積極的に推進していますが、同時にカーボンニュートラル実現に向けた内燃機関の活用にも注力しています。HVO(水素化植物油)やGTL燃料がすでに一部の現場で実際に活用されていることが示されています。

特に電動化が困難な大型機械や長時間稼働が求められる現場では、GTL燃料のような代替燃料が重要な選択肢です。

出典:KOMATSU/建設機械事業 電動化への対応

日立建機・コベルコ建機・住友建機

日立建機、コベルコ建機、住友建機の3社においても、GTL燃料の使用は正式に保証されており、保証文書が発行済みです。各メーカーの営業所へ直接問い合わせることも可能であり、具体的な使用条件や不明点について相談できる体制が確立されている点も特徴です。

特に日立建機では、パラフィン系炭化水素燃料であるGTL燃料に加えて、HVO燃料の使用も認められています。適用製品としては、ミニショベルや油圧ショベル、ホイールローダなど建設現場で広く使用される主力機種が含まれており、幅広い用途での活用が可能です。

建設工事において中心的な役割を果たす機種のため、GTL燃料への対応が保証されていることは、現場全体の環境負荷低減に直結します。

出典:HITACHI/日立建機製品に対するGTL燃料およびHVO燃料の使用について

GTL燃料使用の基本的な流れ

GTL燃料を導入する際には、適切な手順を踏むことでトラブルを未然に防ぎ、スムーズな運用を実現できます。一般的な流れとしては、成約後に事前準備を行い、段階的に導入を進めていくプロセスです。

特に重要なのが、従来の軽油からGTL燃料へ切り替える際の準備です。まず、車両や建設機械の燃料タンク内に残っている軽油を完全に空にしなければなりません。燃料の混合を避け、GTL燃料本来の性能を最大限に発揮させるための重要なステップです。

タンクが空になったことを証明するため、必ず写真を撮影して記録として保管することが求められます。記録は、万が一のトラブル発生時や保証適用の際に有効な証拠となり得ます。

さらに、GTL燃料使用車両であることを明確にするため、給油口付近にGTL専用のステッカーを貼付します。

GTL燃料使用のメリット・デメリット

GTL燃料

GTL燃料使用のメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。GTL燃料導入の際に参照してみてください。

GTL燃料使用のメリット

GTL燃料をエンジンオイルの原料として使用することで得られるメリットは、環境性能だけでなく、燃料特性や機械性能の面でも多岐にわたります。特に注目すべきは、GTL燃料の粘度指数が高く流動点が低い物性です。

一般的な潤滑油は、温度が低いと固まりやすく、逆に高温では粘度が薄くなってしまう特性がありますが、GTL燃料を原料として製造されたGTLベースオイルは粘度指数が高いため、温度変化があっても粘度が安定しやすいメリットがあります。

また、寒冷地から高温環境まで幅広い条件下で安定した潤滑性能を発揮できます。さらに、GTLベースオイルは蒸発特性にも優れており、通常の鉱物系ベースオイルと比較して蒸発しにくい性質です。

鉱物系ベースオイルでは分子量の小さい成分から徐々に蒸発していくため、オイル消費量が増える傾向がありますが、GTLベースオイルでは消費を抑制できます。加えて、密度が低い特性により省エネ効果も期待でき、油圧作動油としての活用だけでなく、電気自動車用の電気モーターやバッテリ冷却媒体としての冷却油開発にも応用が進んでいます。

GTL燃料使用のデメリット

GTL燃料には多くのメリットがある一方で、使用にあたって注意すべきデメリットや制限事項も存在します。最も重要な注意点は、GTL燃料が公道を走る自動車の燃料としての使用が法律で禁止されていることです。

ナンバープレートを装着した公道走行可能な車両にGTL燃料を使用した場合、不正軽油とみなされ、法的な問題が発生する可能性があります。GTL燃料は建設機械などのオフロード車両専用燃料として使用しなければなりません。

また、密度の違いにより、エンジンの動作特性や燃費が悪化する可能性が指摘されています。密度が低いと単位体積あたりのエネルギー量が減少するため、同じ量を給油しても走行距離や作業時間が若干短くなる場合があるためです。

建設業のGTL燃料における事例

建設業のGTL燃料における事例として、2つの事例を紹介します。

戸田建設株式会社

戸田建設(株)(社長:今井 雅則)は、2020 年3月より自社の旧本社ビル解体工事作業所で環境負荷の少ないクリーンな天然ガス由来の軽油代替燃料であるGTL

燃料の使用を開始しました。

GTL 燃料は天然ガス由来の軽油代替燃料で、国内では伊藤忠エネクス(株)(本社:東京都千代田区、代表取締役:岡田 賢二)が輸入販売しており、国土交通省「新技術情報提供システム『NETIS』」に登録されています。

この燃料は軽油と比較してCO2排出量を約8.5%削減することができる他、煤が少ない等、様々な利点を有する次世代の環境配慮型燃料であり、オフロード車両において使用することができます。

今回の使用は、東京都内の建設作業所における初めての事例となります。また、当社では本社ビルの建て替えに際しさまざまな先端技術の活用を計画しており、その一環としてGTL 燃料の使用を開始することにしました。今回はGTL 燃料13 万L 程度の使用を予定しており、今後他の作業所においても展開を図っていきます。現在、国内でのGTL 燃料の使用は中部・関西・関東エリアに限られていますが、当社ではさらに採用実績を積み

重ねることで、対象エリアを拡大し、建設作業所から排出されるCO2排出量の削減を目指します。

出典:天然ガス由来の環境配慮型燃料でCO2 削減を目指します!|2020.5.28|戸田建設株式会社

東急建設株式会社

東急建設株式会社(社長:寺田光宏、以下当社)は、脱炭素への取り組みの一環として、ゼネコンとして初の、全国的な「GTL( Gas to Liquids の略称)燃料」を主燃料とした導入を開始致します。

この取り組みは、当社の長期経営計画で3つの提供価値の一つとして掲げている「脱炭素」の実現に向けた施策で、国内の建設現場において、軽油から「GTL燃料」に順次切り替えていく予定です。

「GTL燃料」は、天然ガスから精製された軽油代替燃料で、軽油と比較してCO2排出量を約8.5%削減することができる他、硫黄分・金属分・芳香族分を含まない非毒性のパラフィン系燃料であることから、煤が少ない等の環境負荷低減効果がある環境配慮型燃料となります。この「GTL燃料」は、パワーショベル等の建設重機にそのまま使用することができ、CO2排出量を減らすことができます。さらに、コストも軽油同等の価格となっており、協力会社も導入しやすいものです。また国土交通省が利用を推奨しているNETIS(新技術情報提供システム)にも燃料として初めて登録を受けております。

出典:環境負荷の少ない軽油代替燃料「GTL 燃料」を国内建設現場で採用|2021.9.10|東急建設株式会社

まとめ

GTL燃料

本記事では、天然ガスを原料とする次世代クリーン燃料であるGTL燃料について解説しました。GTL燃料は、硫黄分や芳香族成分を含まないパラフィン系燃料で、CO2排出量の削減や煤の発生抑制など優れた環境性能を持ちます。

軽油と比較して高いセタン価による始動性の向上、マイナス30℃でも使用可能な耐寒性、4年間の長期保存性といった特徴があり、建設機械への特別な改造なしでそのまま使用できる点が大きなメリットです。

建設業界において環境負荷低減やカーボンニュートラルへの取り組みを進めたい方は、GTL燃料の導入を検討してみてください。

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この記事の監修

リバスタ編集部

「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。

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