グリーンコンクリートとは?グリーンコンクリートの種類や活用事例を解説!
建設業界が直面する深刻な環境問題の解決策として、グリーンコンクリートの用語をよく聞く方も多いのではないでしょうか。世界のCO2排出量の37%を占める建設業界において、従来のコンクリート製造による環境負荷を大幅に軽減する革新的な建材として期待されています。
本記事では、主要なグリーンコンクリート技術の種類と特徴、環境配慮と構造性能を両立するメリット、普及に向けた課題について詳しく解説します。また、実用化事例やJIS化の取り組みも解説していますので、持続可能な建設技術に興味のある方は参照してみてください。
目次
グリーンコンクリートとは

グリーンコンクリートは、建設業界が抱える深刻な環境問題への革新的な解決策として登場した新しい建材技術です。建設業関連のCO2排出量が世界全体の37%を占める現状において、従来の製造方法を根本から見直すことが求められています。
グリーンコンクリートの技術の核心は、コンクリート製造過程での環境負荷軽減です。CO2をコンクリート成分に直接取り込む手法により、大量の炭素を排出するセメントの必要量の削減が可能になりました。
さらに、セメント製造時に各種廃棄物を有効活用することで、資源循環型の生産システムを実現しています。
実用化の事例として、マイクロソフト社がワシントン州のデータセンター建設において、藻類から抽出した石灰石を含む環境配慮型コンクリートを採用したケースが挙げられます。
出典:UN/2021 Global Status Report for Buildings and Construction
出典:Microsoft/マイクロソフト、環境に配慮した未来の建築資材の基礎を構築
グリーンコンクリートの種類

グリーンコンクリートには、次の種類があります。
- 低炭素セメントコンクリート
- 混和材コンクリート
- 再生骨材コンクリート
それぞれの種類の特徴を解説します。
低炭素セメントコンクリート
低炭素セメントコンクリートは、脱炭素を実現する画期的な建材として、従来のポルトランドセメントが抱える環境問題を解決するグリーンコンクリートの技術の一つです。
従来のポルトランドセメント製造は、原料の化学反応や燃焼過程で膨大なCO2が発生することが課題でした。低炭素セメントコンクリートは、環境負荷を軽減するため、製造手法の革新と原材料の抜本的な見直しを通じて開発された次世代建材です。
主原料であるクリンカーの焼成工程における温度低減技術の導入、環境負荷の少ない代替燃料への転換、CO2を積極的に吸収する特殊添加物の活用など、多角的な手法が組み合わされています。
技術革新により、建設に必要な構造強度と長期耐久性を担保しながら、同時にCO2排出量削減の実現を可能としている技術です。
混和材コンクリート
混和材コンクリートの特徴は、従来廃棄されていた産業副産物を建設資材として再生利用することにあります。製鉄所から発生する高炉スラグ微粉末や、石炭火力発電所で生成されるフライアッシュといった産業廃棄物を、セメントの代替材料として積極的に活用します。
製造過程では、通常のセメント量の20パーセントから70パーセントを副産物で置き換えることにより、大幅な環境負荷の軽減を実現していることが特徴です。
性能面においても優れた特性を発揮し、従来のコンクリートと比較してひび割れや塩分による劣化に対する抵抗力が向上します。
再生骨材コンクリート
再生骨材コンクリートは、建設廃棄物の循環利用を実現し、資源の有効活用と環境負荷軽減を同時に達成する建設技術です。
解体されたコンクリート構造物から砂利、砕石、砂などの骨材成分を回収し、新しいコンクリート製造の原材料として再利用します。従来は産業廃棄物として処理されていた解体コンクリートを資源として活用することで、天然骨材の採取量削減と廃棄物処理負担の軽減を実現している点が特徴です。
品質管理の観点から、再生骨材は性能レベルに応じて次の三段階のクラス分類が設けられています。
| クラス | 特徴 |
| Hクラス | 天然骨材と同等の性能 |
| Mクラス | 性能がやや劣るものの地下構造物などの特定用途に活用できる |
| Lクラス | 品質は劣るが、製造コストとエネルギー消費が少ない |
最高品位のHクラスは天然骨材と同等の性能を持ち、あらゆる用途に適用可能です。Mクラスは性能がやや劣るものの地下構造物などの特定用途に活用され、最も製造コストとエネルギー消費が少ないLクラスは経済性を重視した用途に使用されます。
グリーンコンクリートを活用するメリット

グリーンコンクリートを活用することによって、次のメリットが得られます。
- 環境対策に適している
- 耐久性と品質に優れている
- ひび割れの低減
- 建設プロセスの省エネルギー化
それぞれのメリットの内容を詳しく解説しますので、活用する際に参照してみてください。
環境対策に適している
グリーンコンクリート活用の最大のメリットは、環境対策に適していることです。天然資源の枯渇が深刻化する中で、従来の生コンクリート製造に必要な原材料調達には限界が見え始めているのが現状です。
グリーンコンクリートは、材料不足の課題に対する解決策として機能します。経済産業省も推進する産業副産物の活用政策に沿って、フライアッシュや高炉スラグといった工業廃棄物を混和材として再利用することで、廃棄物処理負担の大幅な軽減を実現しています。
さらに、注目すべきは農業分野で発生する有機廃棄物や、生物由来材料の建設資材への転換技術も開発されている点です。地域の農業や林業との産業連携を通じて新たな経済価値を創出し、循環型社会の構築とCO2削減目標の達成に向けた多面的な貢献を可能にしています。
出典:経済産業省/コンクリート・セメントのカーボンニュートラルに向けた国内外の動向等について
耐久性と品質に優れている
グリーンコンクリートは、環境配慮型建材でありながら、従来製品を上回る構造性能を実現する高品質な建設材料であることもメリットの一つです。
長期にわたる技術研究と開発の成果により、グリーンコンクリート製品の多くは既存のコンクリートと同等もしくはそれ以上の耐久性と品質水準を達成しています。
特に産業副産物を活用した製品においては顕著な性能向上が確認されており、フライアッシュや高炉スラグを混和材として配合したコンクリートでは、時間経過とともに強度が継続的に発現する特性を持ち、長期使用における耐久性の大幅な向上が実証されています。
低炭素セメント系のグリーンコンクリートにおいても、製造工程の綿密な最適化と革新的な材料技術の導入により、従来製品と比較して遜色のない構造性能を発揮します。
ひび割れの低減
グリーンコンクリートのメリットとして、構造物の長寿命化に直結するひび割れ抑制効果が挙げられます。
コンクリートは本来、圧縮力には優れた抵抗性を示す一方で、引張力に対しては脆弱性を持つ材料特性です。耐久性に優れた構造物を実現するためには、密実性の担保と有害なひび割れの発生防止が不可欠です。グリーンコンクリートは、低発熱特性を持つセメントの採用と混和材の科学的な配合設計により、この課題を効果的に解決しています。
技術的なメカニズムとして、硬化過程での温度応力を低減することで、ひび割れ発生リスクを最小限に抑制します。この特性により、養生期間の短縮や型枠除去タイミングの前倒しが可能となり、施工効率の向上も実現できることが特徴です。
さらに、コンクリート打設作業時の温度上昇が抑制されることで、作業員の熱中症リスク軽減や品質管理の簡素化といった付加的な効果も得られ、安全で効率的な施工環境の構築に貢献しています。
建設プロセスの省エネルギー化
グリーンコンクリートは、製造から施工まで建設プロセス全体にわたる省エネルギー化を実現する建材技術です。製造段階における省エネルギー効果として、セメントクリンカーの焼成温度低減技術と産業副産物の戦略的活用により、従来の製造工程で必要とされていたエネルギー消費を抑制することが可能になりました。
施工現場においても、低発熱特性による養生期間の短縮化、優れた自己充填性能による締固め作業の自動化と省力化など、さまざまな工程での効率化が実現されています。
さらに一部の製品では早期強度の発現性が向上しており、従来よりも短期間での構造体完成が可能となることで、全体的な工期短縮とそれに伴うエネルギー消費削減効果も期待できます。
グリーンコンクリートが抱える課題

グリーンコンクリートの普及には多面的な課題が存在し、技術革新だけでは解決できない複合的な問題への対応が求められています。
具体的な課題は次の通りです。
| 課題 | 詳細内容 |
| コスト高 | 低炭素セメントや特殊な混和材の製造に高度な技術と設備投資が必要 |
| 長期耐久性の評価不足 | グリーンコンクリートは比較的新しい技術で実環境での長期的挙動データが限られている |
| 標準化・認証制度の未整備 | グリーンコンクリートの定義や性能基準の標準化が必要 |
| 原材料の安定供給 | 脱炭素により石炭火力発電所稼働減少でフライアッシュ供給量減少の可能性 |
| 専門人材の不足 | 従来のコンクリートとは異なる材料特性や施工方法の理解が必要 |
最も深刻な課題として経済性の問題があり、低炭素セメントや特殊混和材の製造に必要な高度技術と設備投資、再生骨材の品質確保工程により製造コストが上昇しています。
技術面では新しい建材技術ゆえに長期耐久性データが不足し、特に再生骨材中の不純物による将来的な影響評価が課題です。制度的には定義や性能基準の標準化、環境性能認証システムの構築が求められています。
グリーンコンクリートの活用事例

グリーンコンクリートの活用事例として、次の3つの例を紹介します。
- CARBON POOLコンクリート
- クリーンクリート®
- CO2固定量評価法のJIS化
それぞれの事例のポイントを詳しく解説します。
CARBON POOLコンクリート
CARBON POOLコンクリートは、日本の建設業界が主導するグリーンコンクリート開発プロジェクトで、コンクリートをCO2の吸収源として活用することを目指しています。
CARBON POOLコンクリートの特徴は、従来の環境負荷軽減という受動的なアプローチではなく、コンクリート自体をカーボンプールとして機能させる能動的な脱炭素技術です。
建材のライフサイクル全体を通じて従来品と比較して20パーセント以上のCO2排出量削減を達成目標として設定し、建設業界の脱炭素に具体的な数値目標を提示しています。
さらに注目すべきは、コンクリート表面での藻類光合成における促進技術の同時開発です。生物学的アプローチにより、構造物表面での継続的な炭素固定が可能となり、都市部における深刻なヒートアイランド現象の緩和効果も期待されています。
クリーンクリート®
クリーンクリート®は、大林組が開発した日本のグリーンコンクリート技術の先駆的な製品で、CO2排出量削減と優れた環境性能の同時実現を目指した建材です。
クリーンクリート®の特徴は、環境配慮性能により、日本の建築環境総合性能評価システムであるCASBEEや、国際的な環境建築評価基準として広く認知されているアメリカのLEEDといった厳格な環境評価制度において、高い評価を獲得している点です。
実用化においても着実な成果を上げており、開発元である大林組の技術研究所新研究棟での採用を皮切りに、横浜市の大規模複合施設などの主要プロジェクトにも導入されています。
CO2固定量評価法のJIS化
CO2固定量評価法のJIS化は、日本におけるグリーンコンクリート技術の標準化と普及拡大を目的とした重要な制度整備の取り組みです。脱炭素コンクリートの品質担保と市場普及促進を実現するため、国家レベルでの規格策定が積極的に推進されています。
JIS化プロセスでは、産業界、学術研究機関、行政機関の専門家で構成される委員会が設置され、技術的な妥当性検証と実証実験による性能確認が綿密に実施されています。単独の規格として策定されるのではなく、現行のコンクリート関連JIS規格との技術的整合性担保が重視され、建設業界全体での円滑な導入が可能な制度設計が図られていることがポイントです。
国際的な視点から、ISO(国際標準化機構)規格との調和も考慮されており、日本の技術が国際市場でも通用する標準化戦略が採用されています。
出典:経済産業省/日本産業規格(JIS)を制定・改正しました(2024年3月分)
まとめ

本記事では、建設業界における環境負荷軽減の切り札として注目されるグリーンコンクリートについて詳しく解説しました。
世界のCO2排出量の37パーセントを占める建設業界において、従来のコンクリート製造が抱える環境問題への解決策として、低炭素セメントコンクリートや混和材コンクリート、再生骨材コンクリートなどの技術が開発されています。これらの技術は環境配慮と優れた構造性能を両立し、ひび割れ抑制や省エネルギー化といった付加価値も提供している点がポイントです。
CARBON POOLコンクリートやクリーンクリート®といった実用化事例やJIS化の取り組みも解説していますので、グリーンコンクリート技術の詳細について興味のある方は参照してみてください。

この記事の監修
リバスタ編集部
「つくる」の現場から未来を創造する、をコンセプトに、建設業界に関わる皆さまの役に立つ、脱炭素情報や現場で起こるCO2対策の情報、業界の取り組み事例など、様々なテーマを発信します。








